C-Suite Talk Live第17回 コマツ (株式会社小松製作所) 常務執行役員日置政克さん

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第17回 コマツ (株式会社小松製作所) 常務執行役員 コンプライアンス、法務、人事・教育、安全・健康管理管掌 日置政克さん
Calendar2010/03/25

骨太で「腕」のある人材を、時間をかけて育てる

古森人の育成の話になったところで、もう少し伺ってもよろしいですか。コマツさんは、「抜擢はやらない」という方針であると、経営トップがメディアで語っておられました。真意はどのようなところにあるのでしょうか。

日置 たしかに、いわゆる抜擢人事はやらないですね。ただ、誤解のないようにしたいのですが、「良い人を登用しない」ということとは全く別の話です。これには、コマツとしての育成思想もありますし、建機産業の特性も多少あります。

古森是非お聞かせ下さい。

日置先に建機産業の特性から言いますと、「長い時間をかけて地道にやる」ことに大きな意味がある業界です。例えば、ブルドーザーですね。ITを含め、搭載機能には色々な革新が起きてはいます。でも、基本的な機能というものは、戦後アメリカ軍が置いていったものと大きく変わっていないのですよ。そういう、大きくは変わらない機能を土台にして、細部を地道に磨きこんでいくのがこの業界の競争なのです。モデルチェンジのサイクルも、5~7年と長めです。

古森 なるほど。いきなりパラダイム転換できるような機能ではないし、頻繁に訴求ポイントを変えることに意味がある市場でもないわけですね。コツコツと、長い年月をかけて積み重ねていくことに、ビジネスとしての理があるわけですね。

日置 コマツの育成思想も、そうした産業特性とある程度リンクしている面があると思います。それに加えて、「技術」というものへのコマツの考え方がありますね。これもまた、実際に体を動かして、時間をかけて、積み重ねていく以外にないという思想です。塗装でも溶接でも、技術というのは何でもそうだと思います。

古森機械を使って仕事をするにしても、やはり人間自体が技術を持ち、あるいは技術への勘を持つというのは大事ですね。理屈で理解するのではなく、小脳経由で腹に落とすには、一定の試行錯誤や時間がかかる。それを大事にしているというわけですね。技術の現場ではなくて、コーポレート部門などでも同じですか?。

日置同じ考えでやっています。私も、4年間は工場にいたわけです。それで、現場で実際に技術が使われる様子をつぶさに見る機会がありました。やはり優れた技術というのはそれ自体に力があるもので、シロウトが見ても「すごい!」と分かります。その直感が、現場や技術というものに対するリスペクトになるのです。部門に関わらず、そういう育ち方というのを大事にしています。

古森 だから、飛び級的な抜擢人事はあえて避け、その時その時の持ち場でじっくりと経験を積ませるわけですね。

日置 それから、誰か一人がその技術に優れているのではなく、組織として技術力がある状態を理想としています。一定の年数をかけてしっかりと打ち込み、腕をあげて、その人が今度は後進を現場で育てていく。そういう技術伝承の営みを組織として保持していけば、結果的にも飛び級というのはないのです。

古森 個人だけではなく、組織能力としての技術保持をも重視しているわけですね。

日置 ですから、「抜擢しない」という現象面よりも、「腕のある人材をしっかり骨太に育てる」という趣旨になると思います。もっとも、経験という意味では色々な機会を提供しますよ。それはかなり積極的にやっています。海外経験を積んで頂くことも含めて。つい先日も、私と一緒にグローバル人事をやっていた人間を中国の工場に送り出したところです。私も海外経験で成長しましたし、両経営トップも海外で多くの経験を積んでいます。

古森 縦方向には飛ばないが、横方向には柔軟性や可能性がある組織、ということですかね。しかし何事につけ、「うちはこうする」と言い切れる会社は強いと思います。