C-Suite Talk Live第18回 株式会社イー・ウーマン 佐々木 かをりさん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第18回 株式会社イー・ウーマン 佐々木 かをりさん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第18回(2/3)

第18回 株式会社イー・ウーマン、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをりさん
Calendar2010/04/14

IT革命と「Smart Citizen」の登場

古森 「世界の消費者の感覚」という言葉に触発されて言うのですが、IT革命で本当に世の中が変わったんだなぁと。最近、あらためてそう思うのです。あらゆる情報が瞬時に世界を駆け巡りますし、地理的に離れた人間同士のコミュニケーションのあり方も、まさに革命的に変わりましたね。人類は21世紀になって、20世紀とはまったく違う環境を生きていると思います。

佐々木ITに関しては、色々な見方があります。「インターネットの普及で本質が分からない時代になった」という意見もありますが、私は、良い時代が来たのだと思っています。

古森 その「良さ」とは、何でしょうか。

佐々木これまで組織や建前に守られて見えなかったものが、どんどん見えてしまう世の中になってきましたね。例えば、どこかの企業で頭の良い人が非の打ち所のない文章を書いて、理想を掲げるとします。でも、経営者の日常の言動がそれを実践していないと、世の中はたちどころに嘘を見破ってしまいます。隠そうとしても、ITが発達した世の中では経営者の人格が透けて見えるわけです。

古森 人格が透けて見える・・・。IT革命の進展によって、企業の中と外とで、情報の非対称性の壁が薄れてきているわけですね。企業がどう取りつくろっても、透けて見えてくる情報から判断できる時代になってきたわけですね。

佐々木私は、「Smart Citizen (賢い市民)」と言っています。消費者、市民、国民が賢明になってきたのですね。掲げた理想と行動に矛盾がないか。100点満点ではなくても、宣言した方向を向いて動いているかどうか。それを感知して、自分でしっかり考えることの出来る人が増えてきたのです。これは、良いことだと思います。

古森 最近は、ツイッターでつぶやき、消費者の声に俊敏に反応するソフトバンクの孫社長が注目されたりしていますね。佐々木さんご自身も、ツィッターのフォロワーが1万名に迫る勢いだとか。これなんかも、まさに「経営者個人が透けて見える」時代の象徴ですね。

佐々木ええ、まさに直接つながっているわけですから。従来の社長さんは、何か質問されたら秘書が時間を稼いでくれたり、参謀が検討してくれたりしたわけですね。でも、ツィッターで直接つながっている場合は、そんなことはできないのです。ITの時代は、本当にスピード感が必要で、「今その経営者自身が何を考えているか」がナマで問われるようになってきました。

古森 隠れようがないし、中身のある人なら隠れる必要もない。

佐々木 経営者に限ったことではなく、ITの時代こそ、一人ひとりが内面で変わっていかないと、尊敬される人や組織になれないと思います。

ランチタイムに脳のストレッチを

古森 ITの発達により個人の考えや行動が大きなインパクトを持ちうる今、ダイバーシティという観点で意外に難しいのは、意見表明自体の希薄さだと思います。「Thought Diversity (思考の多様性)」で留まらずに、「Opinion Diversity (発言の多様性)」までいかないと。でも、日本人はえてして発言をしないですね。

佐々木 だから私は、一貫して「I Statement」の重要性を訴えてきました。これは、イー・ウーマンの根底を流れる大事なコンセプトの一つです。「I Statement」、つまり、「私はこう思う」という意見の表明が大事だということです。「We」ではなく、「I」なんです。

古森 それに関しては、私も苦い想い出があります。マーサーの日本法人の社長になりたての頃、海外のレポート先とメールをしていて、無意識に「We… 」という表現を多用していたのですね。すると、「これからは"I"で話せ」とフィードバックを受けました。日本で生まれ育つと、無意識に意見の主語が曖昧になるのですね。

佐々木とにかく、考えを意見として表に出すことが大事ですね。あるいは、行動で示してもいいでしょう。ダイバーシティの重要な点は、意思決定のプロセスにあると思います。何かを決定する際に、自分と違う、数種類の選択肢を平等にテーブルに載せることが出来るかどうか。それが、成果に大きな差を生みます。

古森 同感です。とはいえ、それが頭で分かっていても、染み付いた「発言しない」という反応を矯正するのは容易ではありません。「日本人が発言しない」というのは、当の日本人の多くが自分で分かっていることです。

佐々木 それは、「場数」を踏んでいくしかないと思いますよ。思考パターンや行動パターンというものは、子供の頃から繰り返し経験する中でつくられるものです。大人になっても、基本は同じでしょう。日頃から、何かを選択する際に色々なものを試してみる機会を持つように心がけることが重要です。「毎日、何かを選びなおす」くらいの意識を持ったほうが良いと思います。

古森 この20年ほどの日本経済低迷の中で、本当に余裕のない環境で仕事に追われている人も多いと思います。そんな状況下で、頭では分かっていても、多様な選択肢を見てみるとか、試行錯誤してみるといった精神状態になれない人も多いのではないでしょうか。

佐々木 必ずしも、仕事だけが「場数」ではないと思いますよ。例えば、イー・ウーマンのサイトには「働く人の円卓会議」というコーナーがあります。週替わりで専門家からテーマの問いかけがあって、世界中からサイトに参加する一般の人たちが回答をしながら、1週間かけて、互いの意見や提案に耳を傾け、一緒に思考を深めていく場となっています。

古森仕事の中でいきなりカミングアウトできなくても、まず「私はこう思う」と言い、「こういう意見もあるのか」と、自分とは異質なものに触れる。共通したテーマに沿って、ダイバーシティの基礎に慣れていく場なのですね。まさに、「場数」を踏むということですか。

佐々木 円卓会議のテーマは、政治、外交、経営から健康、教育など、利害関係のある日常業務とそれほど関係がない場合も多いので、議論しやすい、つまり練習しやすいはずです。ただし発言内容にはルールがあって、必ず「私は・・・」という自分の事例に限定して書いて頂くことになっています。「最近はこうだ」「株主の多くはこう思うだろう」などという一般論、総論は、サイト掲載されません。自分個人の体験、意見、提案を述べ、耳を傾ける訓練です。

古森 もろもろの懸念はなくして、「I Statement」の部分にまずフォーカスしてみる。そういう場になっているわけですね。

佐々木毎朝11時サイト更新なので、お昼休みの時間などに、多くの方々にご活用頂いています。ランチタイムに、脳のストレッチ・・・ですね。イー・ウーマンはバナー広告も出していませんし、投票・投稿は無料です。6つの分野で、多様な「I Statement」を訓練する場に参加いただけたらと思います。

古森 佐々木さんの理想を感じる取り組みですね。組織の変革に火をつけるには、構成員の2~3割が新しい方向に進み始めることが最初のクリティカルマスだと言われています。円卓会議の参加者がもし2,000万人くらいになったら、日本におけるダイバーシティ事情は変わるかもしれませんね。

佐々木 サーバーがパンクします!でも・・・。もしそうなったら、本当に何か世の中が変わるかもしれません。