C-Suite Talk Live第18回 株式会社イー・ウーマン佐々木 かをりさん

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第18回 株式会社イー・ウーマン、株式会社ユニカルインターナショナル 代表取締役社長 佐々木 かをりさん
Calendar2010/04/14

情報過多による考えすぎには要注意

古森 さて、「働く人の円卓会議」ということでしたが、少し目を転じますと、「働く」ということ自体にも悩みの多い世の中になっています。自分探しという言葉は既に市民権を得た感がありますし、キャリア形成に悩む人も多いですね。このあたり、佐々木さんは何か思うところがおありですか。

佐々木 そうですね・・・。先ほど話題にのぼった「情報」の良い面とは逆に、「情報過多」という問題もあるのかなと思います。あるいは、「情報と体験のバランスが悪い」と言ったほうが適切かもしれません。

古森 なるほど、情報と体験のバランスですか。

佐々木昔の話をするのがいいかどうか分かりませんが、私が学生時代には、ある一定の時期に就職活動することになっていることさえ、知らなかったんです(笑)。巡り合ったものに飛び込んで行ったし、一旦飛び込んだらまずはその仕事に打ち込んできました。一方、最近の学生さん達は、「どこの企業の給料はどうだ」とか、そういう情報を豊富に持っていますよね。「より良い条件の職場はどこだろう」と考えている人が多いように思います。

古森 行動以前に「考えすぎ」ということでしょうか。情報が行動に生きるのではなく、情報が行動を縛っている場合もあると。

佐々木 多様な情報に触れすぎているので、自分の経験や実力と関係なく情報の比較をしてしまいます。最初から何かを目指して計画的にキャリアを積み重ねる人もいるでしょうけど、そうでなくてもいい。常に、自分に与えられた仕事に全力を尽くし、成果を残すことから開ける道が沢山あるのです。

古森 「開いていくキャリア」もあると。ちなみに私自身は、圧倒的にそちらのほうです。

佐々木 与えられた仕事に対する働きぶりが良ければ、道は開けていきます。私は高校生の時にアルバイトで音楽業界の仕事をさせてもらいました。コンサートのチラシを配ったり、チケットのもぎりをしたり。そういった仕事での働きぶりが評価されると、次第に楽屋を手伝わせてくれたり、お金を扱うようになったり、更に大切な会社の業務を手伝わせてくれるようになったり、・・・という風に変わっていきました。

古森 その場その場でベストを尽くすことで、まさに道が開けていったわけですね。

佐々木 その頃の仕事は、今の仕事とは直接関係はありません。ですが、その頃出会った人々との交流は、今でも続いています。結果的に、そうした人々からお仕事を紹介して頂けることもあります。でも、最初から計画してそうしてきたわけではないのです。

古森キャリアを計画する人もいれば、出会いの中でキャリアが開いていく人もいる。これもダイバーシティですね。少なくとも、キャリアに関する計画性を強迫観念のように感じる必要はないということでしょう。

佐々木 私は、「チャンスは人が運んでくるもの」だと思います。その場その場の働きを、必ず見ている人がいます。自分の考えうる最高の仕事をし続ける。それが大切なことだと思います。時々耳にする、「好きなことを仕事にする」という言葉にあえてアンチテーゼを言えば、「仕事を好きになる」が大切だということですね。今の仕事を好きになる。出来事に向き合って、いかに自分が全力で最高の成果を出すか。それに尽きると思います。

キャリアの考え方とダイバーシティ

古森「キャリア観にも色々あっていいのだ」という考え方自体、もっと世に広がっていくべきだと思っています。しかし、これも根深いものがあって、今の日本のデフォルトは、「キャリアは計画するもの」に傾いていると思います。

佐々木 そうなんですか。幼少時の接し方からして、留意が必要だと思いますよ。例えば、保育園や幼稚園の段階で、幼児に「将来何になりたいか」と聞く人がいます。私は、そんなことは聞かないほうが良いと思っています。将来、予想もしていなかったような新たな仕事を作り出す人かもしれない、今は存在しない技術や仕事が生まれるかもしれないのに、そのとき存在する範疇で幼少期に将来を想像させるのは、いかがなものでしょうか。

古森私は、自分の子供たちに「大人になったら何になるの?」と聞くことがありますが、文脈にもよるのではないでしょうか。5歳になる次男は牧場が好きで、「おとなになったらぼくじょうのひとになる」と言っています。それ自体は、他愛のない会話です。良くないのは、幼い時から無理に将来を考えさせて追い込むことではないかと思います。「お受験」的なトーンで考えさせるなどは、私は嫌ですね。

佐々木 皆が「将来はどうするの」聞くと、「将来像が決まらない」子供は、そのことに劣等感を抱くかもしれません。将来に希望を持たせるべき時期に、それでは本末転倒なわけです。大人は、今に熱中することが大切だということ、仕事を通じて発見したこと、貢献したこと、やってみて楽しかったこと、人に喜んでもらえたときの嬉しさなど、自分の体験を通して伝える方が先だと思います。

古森 同じようなことが、企業におけるキャリア面接にも言えます。面接をする管理職には、それぞれ自分のキャリア観のようなものがあります。計画性を大事にする人もいますし、そうでない人もいます。面接を受ける側も同じで、色々な価値観があるわけです。でも、得てして管理職側は自分の価値観で一律に接してしまいがちです。いわく、「5年先は?10年先は?なぜ計画がないの?」と。

佐々木 大人になって5年先、10年先の夢を語るのは良いでしょうけど、別にそうならなくても良いというスタンスもまた大事です。変化の時代に必要な人材は、経験のないことも工夫をして行くことができる力や、変化に対応して成果を上げる力なのですから、計画性に偏重したキャリア論は可能性を狭めるのではないでしょうか。ダイバーシティの観点からも、多様な人を採用する必要がありますし。

古森 上司・部下のような関係では、特に上司側にダイバーシティの意識がないと致命的ですね。キャリア面接の仕組みを管理する人事部門も、責任重大だと思います。

佐々木 私は色々な企業とお仕事をさせて頂いていますが、「ここだけの話だが」という相談の中に、「最もダイバーシティの本質を理解する必要のある部門は、実は人事部だ」とおっしゃる経営者が、意外に多いですね。人事制度だって、ゴルフでいうところの石川 遼君のような飛びぬけた人材を許容できるものには、なっていないことが多いでしょう。

古森 人事部門も含めて、ダイバーシティを推進する立場にある人々が、どこまでダイバーシティの本質を理解して臨むか。男女比率や外国人登用率など、分かりやすい目標に目が奪われがちですが、本質はもっと深いところにありますね。また、旗降り役が理解するだけでも駄目で、結局は社会を構成する個々人がそれぞれ、ダイバーシティへのリテラシーを高めて行くしかないと思います。

佐々木 そのためには、やはり「場数」ですね。仕事の経験以外でも、いいのです。食べたことのないものを食べてみる、行ったことがない所に行ってみる。そういうことも含めて、これまでとは何か違った体験を自分自身で積もうとすること。そういうものが、すべて「場数」になっていくと思います。

古森私自身、この対談シリーズを重ねることが「場数」になっているという実感があります。今日の佐々木さんとの対談で、また何か一つ、内面に新しいものが生まれてきたような気がしています。

そろそろ時間になりました。今日は、本当に有難うございました。

~ 対談後記 ~
円卓会議、サイトを見てみたら、今週(3月15~)のテーマは以下の6つでした。

  • 子ども手当、学校教育にまわしませんか?
  • バンクーバー・パラリンピック、観てますか?
  • 映画やテレビ、3Dで見たいですか?
  • 表情筋トレーニング、関心ありますか?
  • 仕事で「未知の領域」に踏み出していますか?
  • あの企業統合の破談の理由、よく理解できましたか?
なるほど。これなら確かに、どんな立場の人でも、いずれかのテーマには意見が言えそうです。私も早速、ひとつ選んで投稿してみました。「今日の会議にI Statement で投稿する」というボタンを押すとき、何か独特の感覚が走ります。

先週の円卓会議の結果を見ると、それぞれのテーマに投稿された代表的意見が掲載されており、それらを受けた総括として専門家のコメントも掲載されていました。たしかに、こういう感じの「場」というのは、あまりないな・・・と思います。単なる無責任な放談のスレッドは多々ありますが、円卓会議には匿名ながら真剣な意見が多数寄せられています。これが、まさに佐々木さんのいう「場」なのですね。多くの人が、こうして日々「場数」を重ねているのだなと、改めて感銘を受けました。

佐々木さん、本当に有難うございました。