C-Suite Talk Live 第19回 マニュライフ生命保険株式会社 常務執行役員 森田 均さん (2/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第19回 マニュライフ生命保険株式会社 戦略企画、人事、コミュニケーションズ担当 常務執行役員 兼 ヴァイス・プレジデント 森田 均さん (2/4) - モチベーション3.0

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第19回 マニュライフ生命保険株式会社 戦略企画、人事、コミュニケーションズ担当 常務執行役員 兼 ヴァイス・プレジデント 森田 均さん
Calendar2010/05/12

「モチベーション3.0」

古森ところで、この逆境下での好業績ということですが、どんなことがそのドライバーになっていると思われますか。

森田 色々とありますが、一番大きいのは、弊社の経営のあり方自体だと思います。私どもは、戦略を作ることよりも、実行=Executionに重きを置いた経営を大事にしているのです。また、戦略を策定する際は、コストベネフィットを深く検討して、熟慮を重ねます。

古森 慎重に戦略を練りこむ。しかし一旦決めたら、その実行に思い切り力を入れていく。そういうポリシーなのですね。単純にしてパワフル、かつ、「言うは易し、行うは難し」のポリシーですね。

森田 少なくともこういったスタンスが、何が起こるかわからない不確実性の高い時代で、業績が伸びる、事業が上手く行っている理由のひとつになっているのではないかと思います。それから、本社も日本も、経営陣が自信に満ちています。それも、非常に重要な要素だと思っています。

古森 そこに、社員の方々のモチベーションが重なったとき、大きな力になりますね。

森田 その通りです。先ほどの「わくわく」も、まさにその一環で取り組んでいることです。ちなみに、モチベーションということで言いますと、最近私はダニエル・ピンクの『ドライブ』(Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us (Daniel H. Pink))という本を読んでいます。非常に面白い本です。

古森 あ、私は読んでいません・・・。不勉強で恐縮なのですが、どのような点に面白さがあるのでしょうか。是非今度読んでみたいと思いますが。

マニュライフ生命保険 森田 均様
森田 少し前に、ウェブの進化を「2.0」だとか「3.0」だとか、そういう言い方で表現するのが流行りましたね。そういうコンセプトを意識しながらだと思いますが、この本ではモチベーションに3つの進化段階を導入しているのです。

古森 なるほど。

森田 「モチベーション1.0」は、食べるために働くというステージです。日本の戦後なども、そういう段階でしたね。

古森 ははぁ、マズローの5段階欲求論のような感じで、欠くべからざるものからだんだん高度なものへとあがっていくような雰囲気ですね。

森田ええ。その「1.0」の次に来るものは、「モチベーション2.0」です。ここでは、信賞必罰が徹底されます。成果主義の流れなども、多分にそういう解釈が可能です。もちろん、単純にそういうロジックだけで出ていたものではないにせよ、です。

古森 「食べるため」から、「褒められるため、叱られないため」へと一歩進むわけですね。ことさら成果主義と呼ぶかどうかは別にして、人事制度における評価ごとの根底には、そういう側面があると思います。

森田それで、今は「モチベーション3.0」の時代だと説きます。要は、やる気、ワクワク感が働く上での最大のモチベーションになるという話です。今の世代は、生活にも満足している。あとお金を1億円積まれても、仕事のクオリティという意味ではあまり改善の余地がない。では、ここからもっと良くするためにはどうするかというと、「モチベーション3.0」でやる気を共有する。これをやることが、会社の成功に貢献するのだと。

古森 最近良く叫ばれる、「エンゲージメント」にも通じる話ですね。

森田 例えば私の場合、大変でもよいから難しいことをやると、乗り越えるために一生懸命になります。すると、躍動感が出てきます。お金も大事ですが、これからの時代は、「やっていることが楽しめる」環境を増やしていくべきだと思います。インセンティブ・プランに過度に依存したモデルだけでは不十分で、これに「わくわく」の要素を融合できるとよいな・・・と、以前から考えていました。そんな課題意識に、刺激を与える一冊ですね。

古森 「わくわく」に通じる話が、ここにもあったわけですね。

森田ただ、ダニエル・ピンク氏の考え方と私の見解とでは、相違点もあります。

古森 それは尚さら興味深い話ですね。お聞かせ下さい。

森田 ホンダ、SONY、トヨタが伸びた時代を考えてみましょう。カンバン方式の発明などに代表される日本の製造業の改善活動は、要は仕事が終わった後に自主的に残業して生み出された面が多いわけですね。いわゆるQC活動が盛んだった頃というのは、この本の定義でいうと既に「モチベーション3.0」 だったわけです。

古森 なるほど、以前から日本の一流企業はその段階にあったと。

森田 そうだと思うのです。それが、ある程度達成感が出てきてしまって、90年代から停滞期に入ったのではないでしょうか。おりしも、欧米型のインセンティブ制度や実力主義が入ってきて、それらを整理・咀嚼せずに受け入れてしまった・・・。それが、ここ20年ほどの混沌とした状況につながったのではないかと思います。

古森 日本では、この本でいうところの「1.0」と「3.0」が戦後短い期間に同居するような形でパワーにつながり、その後「2.0」になっていく中で勢いを失った・・・というイメージですか。欧米のものを「整理・咀嚼せずに受け入れた」という点にも、大きな課題があるかもしれませんね。

森田 どんな企業でも、長い時間をかけて出来上がった人事の制度や仕組みには、素朴に見れば「なぜこんな制度が残っているのか」というものがあったりします。過去のトレンドの中で導入して、時代が変わってもそのまま運用しているというものが、人事の世界にも意外にたくさんあるような気がします。

古森 逆に欧米のステレオタイプでは、「モチベーション3.0」は、ある意味「未知の領域」なわけですよね。お金に直結しなくても、何か言い知れぬものに燃えて頑張るという世界。それが数十年前とはいえ、近い過去の日本にはあったのだとすれば、興味深いアドバンテージとも言えますね。

森田 そうなのです。日本企業が昔もっていたような「わくわく」感を再現できれば、この会社もそうですが、日本はもっと強くなれるのではないかと思います。今だって皆無ではなくて、例えば、徹夜でプログラムを作っているゲーム会社の社員がいます。労働時間なんて関係なくて、好きだから出来ていること。無理のし過ぎを会社が助長してはいけませんが、そういう話とは別次元で、仕事と個人の「わくわく」のベクトルがあえば、強いんだなと思います。