C-Suite Talk Live 第20回 関西大学 政策創造学部 教授 白石 真澄 さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第20回 関西大学 政策創造学部 教授 白石 真澄 さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第20回 (1/4)

第20回 関西大学 政策創造学部 教授 白石 真澄 さん
Calendar2010/05/31
C-Suite Talk Live 第20回 ~対談エッセンス~
  • 大学の現場で感じること
  • 学び方、育ち方にもダイバーシティを
  • クリティカルマスの強さをどこに作るか
  • 教育は人格形成にまで踏み込めるか
  • 「エコ」は実体を伴いうるか
  • 出来ることからやっていこう

大学の現場で感じること

古森こんにちは、今日はよろしくお願い致します。この対談、「何か良いこと、ヒントになること」を聞いて歩く旅のようなものでして、特に答えはない旅です。色々な景色があって、それを紹介していく中で読者がどこかにヒントを得られるものであれば良いな・・・という思いで続けています。

白石 こちらこそ宜しくお願いします。

古森 白石さんの場合は、やはりまずお伺いしたいのは大学の話ですね。大学教育の現場で、「人」という観点で今何を感じておられますか。

白石 大学での仕事は、今年で8年目になります。私はいわゆるアカデミアの出身者ではありませんが、企業や公職を通じた経験を学生たちに伝えてきたつもりです。今、若者を見て私が感じるのは、「内向き」「安全性」「踏み外したくない」といったキーワードですね。

古森 かなり安全志向が強く出ていると。

白石 守りに入っている人が多いと思います。「最近の若い人は~」というのは、大昔から言われていることではありますが。でも、やはり教育の現場にいると、「はみ出した人が少ない」という印象を禁じえません。失敗したくないので、学習する機会も乏しくなってしまうような・・・。

古森それは関西大学ということではなく、日本全体を覆う基調のようなものでしょう。

白石 そうかもしれません。例えば、最近の世論調査で「社会に貢献したい、国際貢献したい」という人が減っているという結果があります。親御さんの影響もあるでしょうが、かなりの若者が安全志向です。「殻を打ち破ろう」と思う人をいかに育てていくかが、教育現場でも大きな課題です。

古森 日本国の戦略課題と、教育における人材育成の方向性が連動しきれていないのですね。日本の人材は今後一層世界に出て行かなければならないし、より多様な人々と切磋琢磨しなければなりません。若い人達に罪はなく、世の中の投影だと思いますが、マクロ環境を選べないのは過去の人間も同じです。本人にもサバイバルの責任はあります。もちろん、親や教育機関も変化していかねばなりませんね。

白石 大学としても、自らの競争環境を見直す必要があるでしょう。アカデミアの世界には、ある程度の安定した環境は必要です。一方、入ったらずっとそのままというのも行き過ぎですね。大学の組織も、時代に応じて変わる必要があります。時代に即したテーマ、例えば社会の安全安心とか、科目構成なども見直していくべきです。ただ、大学も人を抱えているわけで、迅速には変われないというのが現実です。

古森 米国が正解というつもりはないですが、ニッセイ時代に米国のウォートン・スクールに留学させて頂きました。そこで見たものは、明らかに日本の大学とは異なるダイナミズムでしたね。98年に卒業したのですが、当時はまさにIT革命の山場です。その後1~2年経ってカリキュラムを見てみたら、アントレプレナーシップやEコマースの分野が急速に充実していて、その変化の速さに驚きました。

白石 少なくとも、国全体が戦略的に動いていく方向性と、高等教育機関の方向性にリンクがあるわけですね。

古森アメリカの場合、それを自国の学生だけではなく、クラスの3割くらいは海外からの学生にも門戸を開いてやっているわけです。それ自体、戦略的だと思います。日本でも、教育現場には色々な課題意識があるのだと思います。でも、巨大な仕組み全体の変化が緩慢なために、21世紀のスピード感の中では事実上連動していないのと同じことになるのでしょう。

白石 日本国の戦略テーマの一つは、言うまでもなく国際化です。国際化にも、文字通りの外向きの動きと、内なる国際化というものとの両面があります。そういうことはもう何十年も言われてきているのですけど、これまでにバイリンガル、トリリンガルをどれだけ作れたかというと、成果は出ていません。週何時間の英語教育を入れるかどうかで、まだもめているわけです。

古森 日本語の基礎が大事ということと英語を強化するということは、二律背反ではないと思います。日本語をおろそかにして英語をやるのは本末転倒ですが、日本の将来を考えると最終的には両方必要なんですね。中国の人は、必要とならば半年で日本語を話すようになります。教育にも、戦略が必要ですね。

白石 真澄 さん プロフィール
関西大学大学院工学研究科建築計画学専攻修士課程を修了され、西武百貨店からキャリアをスタートされました。その後、ニッセイ基礎研究所で主任研究員、東洋大学経済学部で助教授・教授を経て現職。
専門分野は、「バリアフリー」、「少子・高齢化と地域システム」など、これからの日本社会全体が避けて通れない重要分野ですね。
そうした調査・研究、教育分野でのキャリアを重ねていかれるとともに、白石さんは政府の委員会、テレビ(コメンテーター)、出版など、多彩な分野で活躍しておられます。2009年3月には千葉県知事選挙に立候補され、結果的には落選されましたが、国や社会に対する強い課題意識は今も健在です。