C-Suite Talk Live第21回 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 人事部長 森本 雄司さん (2/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第21回 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 人事部長 森本 雄司さん (2/4)

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第21回(2/4)

第21回 東日本旅客鉄道株式会社 取締役 人事部長 森本 雄司さん
Calendar2010/06/10

国鉄からJRへ~組織に残された歪み

古森さて、そうした10年スパンでの経営計画に取り組んでいかれる中で、人事・組織面でのおもな課題はどのようなものでしょうか?

森本 最も象徴的な課題の一つは、いびつな人員構成ですね。

古森 ピラミッドに、何か課題があると・・・。

森本 実は、社員の年齢構成に大きな断層があるのです。国鉄時代の末期とJR初期に、新規採用を抑制した時期が10年弱ありました。その結果、30代後半~45歳あたりまでの人材が、組織内にほとんど存在しないのです。

古森 それはまた、偏っているとか手薄だとか、そういうレベルとは違いますね。約一世代、スッポリ抜けているわけですね。

森本 そうなのです。したがって、40歳未満が組織の45%程度で、残りは45歳以上の層という形で、ピラミッドに大きな段差ができています。そうした中で、年間およそ3,000人が定年退職していく時期を迎えているわけですね。ここ数年は採用数を増やしてきてはいるものの、それでも年間1,700人程度です。

古森 色々な面で、伝承が心配ですね。

森本 そうなのです。大量のベテランが辞めていく中で、若手人材の育成をどうしていくか。30代の中堅層と20代の若手層を確実に育てていき、早くベテラン層の領域にまで高めて行く必要があります。これまでは「先輩がいる」という安心感がありましたが、もうそんな余裕はありません。人事としても、OJT、集合研修、自己啓発を3本柱として、徹底的にやっていくことが至上命題です。

古森 採用抑制の影響で一部の年次が抜けているというのは、よくあることです。しかし、ここまで断層があると、確かにベテラン退職に伴う技術伝承等が経営リスクですよね。人事の責任も重大ですね。

実物に触れる機会を

古森 そんな中で、実際どのような人材育成の取り組みをしておられるのでしょうか。

森本 一般的に必要となることは、もちろん様々な層に対して機会を設けて研修を進めています。乗務員、営業、契約社員など、それぞれの分野で、実践に即した訓練の場が用意されています。加えて、最近では「実物に触れる機会」を提供することを、非常に重視しています。

古森 実物に触れる機会、ですか。

森本 弊社の仕事は、多岐にわたる技術の集積で動いています。一方、最近では実物を触る機会が減ってきている業務分野も多いのです。例えば、施工と監督で業務を分けるようになりましたが、施工はパートナー会社が担当しているため、実際に施工のプロセスで弊社社員が実物に触れる機会は減っています。

古森 なるほど。

森本 IT分野だって、かなり自動化や仕組み化が進んでいます。最近では、検査業務さえも機械がやる部分が増えてきました。それ自体は喜ぶべき進歩なのですが、同時に、社員が実際の機器に触れる機会は減る一方です。しかし、一方的にそうなってしまうと、これは問題でもあります。

古森 ITや機械にやらせていることへの、皮膚感覚がなくなってしまうということですね。いざというときに、そういう皮膚感覚がないのはリスクでもありますね。

森本そうです。リスクでもありますし、新たな創意工夫の妨げにもなりえます。ですから、今まさに業務の洗い出しをして、各系統で実際に機器を使って行うOJTも実施し始めているところです。

古森 しかし、ITや機械による合理化には大きな理があるわけですから、いたずらにOJTのために後戻りさせることも出来ないでしょう?

森本ええ、それで定年後のエルダー社員を活用することにしました。60歳で定年になった人は、普通はグループ会社に出向しています。しかし、一部の社員に人材育成の役割を担ってもらうことにして、社内を回って技術・技能を伝承していく仕組みを導入しました。これを拡げていき、職場に近いところで実際の訓練を無理なく提供できるようにしていくつもりです。

古森現実的な対応ですね。

森本 とにかくあらゆる手を尽くして、若手を育てる必要があります。かといって、促成栽培で一人前になれるほど、鉄道の現場は甘くありません。施設・電気の職場では、「7年で一人前にする」ということを人材育成の目標に据えて、「個々の人材が今どのレベルか」ということを認識しつつ、現場中心で取り組んでいるところです。

古森人が育つために必要な絶対時間の蓄積にも、長めのスパンでの中期計画であればこそ、腰をすえて取り組めるわけですね。

森本 そうは言いましても、設備面やOJTの時間の設定など必ずしも体制が整っているわけではありませんが、順次整備し始めています。また、7年で一人前といっても、その間のすべての人事異動を個人別の育成ニーズだけで組めるわけでもありません。更に、経験の蓄積というのも、本当に甘くない世界です。例えば、輸送混乱時の対応はまさに修羅場でして、経験に加えて冷静な判断も必要です。ベテランでも、何度も失敗しながら育ってきたわけですから、そう簡単に伝承できるものでもありません。

古森 短期的には難しいことと知りつつも、その方向に何年もかけて取り組み続けることが大事なのだと思います。