C-Suite Talk Live第23回ヤマト運輸株式会社 経営戦略部長 岡村 正さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第23回ヤマト運輸株式会社 経営戦略部長 岡村 正さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第23回(2/4)

第23回 ヤマト運輸株式会社 経営戦略部長 岡村 正さん
Calendar2010/07/01

理念と経済合理性は矛盾しない

古森 そういう強い思いに支えられてここまで成長してきた御社の事業ですが、創業時からの理念的なものは世代が変わっても変わらず維持されていますか。

岡村そう思います。ただ、何の紆余曲折もなく維持されてきたとは思っていません。規制との戦い、市場や競合環境の変化の中で、時には理念よりも足元の現実への対応に舵を切らねばならない時代もありました。

古森 そういった幾多の逆風の中でも、大きな流れとしては、冒頭におっしゃったような考え方を脈々と受け継いで来られたわけですね。

岡村ええ。その時々の中期経営計画のテーマとなっていたものを振り返っても、その様子がよく分かります。

古森 逆風の中で、これまで創業の理念を維持してくることができたのは何故だと思われますか。既に御社の経営者は創業者から次世代へと変わっており、世間一般では創業の遺伝子を引き継ぐのは難題の一つと言われていますが・・・。

岡村それは、現場の取り組みも含めて色々とあります。が、あえて経営戦略部長という立場で私が認識していることを言いますと、「理念と経済合理性は矛盾しない」ということですね。

古森 興味深いステートメントです。是非、その心をお聞かせ下さい。

岡村5代目の有冨社長の時代に、「仕事の品質を追求していくとコストも下がる」ということが、実感を持ってこの会社の中で認識されるようになりました。

古森 仕事の品質・・・というのは、理念に沿う仕事の質をどんどん高めていくという意味なのですね。

岡村 そうです。例えば、今でもまだ改善の余地がある課題なのですが、宅急便にはお届け先の「不在」という出来事が常につきまといます。これは、送り主さんからしてもお届け先の方からしても、良いことではありません。理念で言うようにお客様のことを本当に考えたら、不在という場面を出来るだけ減らしていく必要があるわけです。

古森宅急便の一ユーザーとして、その話は良く分かります。

岡村 それで、なんとかして「お届け先不在」という場面を減らそうと、必死に工夫してきたわけです。ITへの投資もしました。そういう工夫の過程では、「これでいくら儲かるか」なんということは、眼中にはありませんでした。経営者も現場も、お客様のために不在の問題を軽減しようという一心、それだけです。

古森でもそれが、結局は会社としての利益にもなっていくと。

岡村そうなります。というのは、不在の再配達というのは、運送業者側にも大変な負荷になる業務なのです。まずもって一つの荷物をお届けするために要する時間が長くなりますし、物流全体の流れも複雑化します。保管場所も必要ですし、保管する時間が長くなればなるほど、荷物自体のダメージや紛失のリスクも高まります。不在の問題は、大変大きなコスト要因になるわけです。

古森 結局、お客様のお困りになることを解決するために必死で工夫することが、ひいては物流事業者としての御社のコストダウンにもつながるということですね。そう言われると当たり前のことのように思えますが、その順序には大きな意味があると思います。というのは、「コストを下げよう」というテーマから工夫を始めていくと、必ずしも「お客様のためになる」施策が出てくるとは限らないからです。

岡村 まさにそうです。理念というのは、私どもの仕事における発想の原点です。そういう、本当に大事にすべきもの、この会社の存在意義のような部分に立ち戻って行動することが、結局は会社の財務面でも良い結果につながるということを、いくつもの場面でこの会社は経験してきたのです。

古森 その皮膚感覚があるから、逆風の中でも本末転倒に陥らずに理念を継承していくことが出来たわけですね。

岡村 今の中期計画は、「満足創造3ヵ年計画」という名前がついています。この満足という言葉の対象はお客様、社会、社員の三方にかかるものですが、いずれも弊社の理念で大事にすべきとされているものです。理念でうたっているものを、経営計画のタイトルにもつけて、真正面から取り組んでいるところです。