C-Suite Talk Live第23回ヤマト運輸株式会社 経営戦略部長 岡村 正さん

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第23回 ヤマト運輸株式会社 経営戦略部長 岡村 正さん
Calendar2010/07/01

創業遺伝子の伝承と「感じる教育」

古森 さて、そういった経営レベルで俯瞰したお話もさることながら、実際に理念を継承していく中で個々の社員にどのように働きかけておられるのか、具体像もお伺いしたいところです。風の噂では、最近はITやビジュアルも取り入れた独自の活動を展開してらっしゃるとか。

岡村 「満足創造研修」のことでしょう。もともと、弊社の在籍者向けに色々な研修は行ってきたのですが、2008年からの「満足創造運動」の一環として、社内の研修も変えていこうということになりました。

古森 その満足創造研修、どのような点にこだわりがあるのでしょうか。

岡村 2008年に実施した在籍者のアンケートが、大きなきっかけになりました。お客様との接点で感動したことなどを、皆に綴ってもらったのです。その内容を人事部と一緒に読んでいて、ひらめくものがありました。「これはすごい、なんとかして社内に共有化できないか」とね。

古森 それが、やがて研修の題材へと進歩を遂げていくわけですね。

岡村 ええ。ただ、先ほどビジュアルとおっしゃいましたが、技術的にそれほど凝ったものではありません。むしろ、シンプルなテキスト・メッセージに多少の写真を織り込んで、BGMをセットしただけのものです。つくりとしては。

古森シンプルだから、余計に中身がぐっと伝わってくる、自分で想像して投影しやすい・・・という場合もあります。

岡村最初に作成したのはセールスドライバー(SD)編です。SDの仕事というのは、業務プロセスとしては「やるべきことを確実にやる」というルーティンの側面が強いので、ともすれば「感動」とは縁の薄い世界のように感じてしまいがちです。

古森 なるほど。

岡村 ところが、満足創造研修の場でこの映像を共有化してみたところ、たいへん大きな反響がありました。これを見た多くの在籍者が感動を覚え、改めて自分たちの仕事の素晴らしさを認識し始めています。ちょっとご覧になりますか?

古森見せて頂けるのですか。是非お願いします。

~10分ほどDVDを視聴~

<岡村 ・・・という感じなのですが、いかがでしたか。

古森 いやぁ、これはやられました・・・。何箇所か涙腺が危ない場面がありましたが、特にあの母の日にまつわるエピソードは、私、だめですね。もうそこまで涙が出てきていました。

岡村 でしょう。私は、雪の日におばあさんが三つ指ついて迎えてくれたエピソードなんかも、ジーンときます。全部で10編のエピソードが入っているので、人それぞれで、どこか深く共鳴するものがあるようなのです。

古森 しかし、これが全部実話だというのも素晴らしいですね。荷物をお届けする現場、お客様との接点で、こんなにも色々な感動があるということ。それを認識することができたら、自分が何のために働いているか、自分の仕事に何の意義があるか、ということが実感できると思います。

岡村 その後、SD編に続いて事務編というのも作成しました。こちらも、SDとは仕事の内容は違うものの、やはりお客様との直接・間接の接点での感動や社内の仲間同士で起きた感動の場面が綴られています。

古森 SDにせよ事務にせよ、仕事と理念の間をつなぐ何かが、ここに綴られているわけですね。それから、もう一つ私が衝撃を受けたのは、この10篇の最後にBGMが消えて、ただ静かに社訓が画面をスクロール・アップしていくところです。感情を揺さぶられた後だけに、あのシンプルさが脳裏に突き刺さりますね。いわく、
  • 一、ヤマトは我なり
  • 一、運送行為は委託者の意思の延長と知るべし
  • 一、思想を堅実に礼節を重んずべし

岡村 「理念はこうだ」という論理的な伝え方ではなく、それがまさに実現している瞬間のイメージを共有化することで、結果的に「こういうことだったのか」という感覚がわいてくるのだと思います。

古森 これまで様々な同種の映像を見てきましたが、間違いなく、第一級の作品のひとつだと思います。