C-Suite Talk Live 第26回 タイコ エレクトロニクス ジャパン合同会社 代表取締役会長 岡本 実さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第26回 タイコ エレクトロニクス ジャパン合同会社 代表取締役会長 岡本 実さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第26回(2/4)

第26回 タイコ エレクトロニクス ジャパン合同会社 代表取締役会長 岡本 実さん
Calendar2010/07/26

再び北米大陸へ

古森 それで、垂直から水平への成長軸の変化は、実際はどのような形になりましたか。

岡本 会社を辞めて、修行に出ました。

古森やはり、どんどん自分で道を見つけていかれるのですね。

岡本 具体的には、1986~1988年までの間を、Northern Telecomで過ごしました。縁あって行ったのですが、移籍理由の一つは米国とカナダで1年半、エグゼクティブ・トレーニングのプログラムに行かせてくれるというオファーがあったことです。ちょうどキャリアの変わり目で、1年半のトレーニングはいいなと思いまして。

古森窓が開いたときに、迷わず飛び込んだのですね。それで、プログラムは期待通りだったのですか。

岡本 充実していましたよ。プロダクト・トレーニングからマネジメント・トレーニングまで、幅広くやって頂きました。月に2週間トレーニングがあったのです。当時はサンタクララのオフィスにいましたが、所属での仕事とトレーニングが半々といったところでした。

古森それは本当に良い条件でしたね。

岡本ええ、それが頂いたオファーのパッケージでした。Northern Telecomとしても、初めてのプログラムということでしたので、実験的な意味合いもあったでしょう。

古森そういった、いつも開いているわけではない機会を見つけて、すっと飛び込んで行かれるのが、岡本さんの根底にある強さなのでしょうね。

岡本 そうですね。私のためにトレーニングを作ってくれたような面もあったので、今思えば希少なチャンスだったのは確かですね。

古森チャンスを活かせる人と、そうでない人がいます。

岡本 進まないと、やっぱりね。

マネジメントとしての内なる変化

古森その後、また今の会社にお戻りになったのですね。戻られてから、何かご自身の中に変化は感じられましたか。

岡本 ありましたね。同じような状況におかれた時の自分の対応が自然に変わっていることに気づきました。成長した、少しやれるようになったかなと実感しましたね。

古森特に、どのような場面でそうお感じになりましたか。

岡本 端的には、「人を動かせた」と感じた時ですね。それまでは何事も自分で引っ張っていくスタイルでしたが、帰って来てからは人を押してあげることで成果が出るようになっていきました。

古森 プレイヤーからマネジメントへと、内なる変化が起きていたのですね。

岡本 戻ってから2年後に、台湾に総経理(社長)で赴任することになりました。歴史的経緯もあって、日本人の総経理(社長)がうまくいくかどうか疑問視する向きもありました。自分一人の事情を超えた要素が多々ある中で、力量が試されることになりました。

古森 また新たなる挑戦の扉が開いたのですね。

岡本当時の台湾事業は、売上もそう大きくなく、利益は低下基調にありました。従業員の多くが警戒モード、しかも日本人がトップに来た・・・。そんな中で、極力、私が日本人かどうかではなく「グローバル・ビジネスパーソン」という立場で接するように心がけました。

古森 なるほど、経営トップという役割に徹したわけですね。

岡本 台湾の人たちは、いわゆる「先生」を尊敬します。自分たちを良い方向に導いてくれる人、成功させてくれる人を尊敬するわけです。私も、そのような関係を築くように努めました。そういう対応は、昔の自分には出来なかったなと思います。

古森 先ほど言われた、「人を押してあげる」ということですね。

岡本 言い方を変えると、コミュニケーションです。お互いに目標があって、穴がたくさんあいている。こちらが与える部分と向こうが捜し求めて得るものとをうまくつないで、「その人の答え」にもっていく。主役を向こうに渡す感覚ですね。「上司をうまく使った」という形にしてあげることが大事です。

古森 以前囃された「エンパワーメント」という言葉も、その本質は今おっしゃったような「主役づくり」にあると感じていました。それを岡本さんは実践しておられたのですね。

岡本マネジメントの常識では、ResponsibilityやAccountabilityなどと言って、上から下ろしていく要素が強いですね。本来、下ろしたものの帰結は上の責任になるわけですが、実際には下が失敗の責任を負うことが多々あります。上に来るマネージャーが事業に精通していない場合などは特に、「お前に任すから、戦略作って自分でやれ」と言いがちです。そうなると、受ける側の人間としては萎縮してしまいます。

古森 世界中の組織で起きている悲哀ですね。もっとも、そういう境遇を前向きにとらえて打破していく人が、結局はマネジメントになっていくという面もあるでしょうけど。

岡本 「お前、やれ」と言われたとき、それを「自由度が高い」と前向きに受け止めるのは少数派です。そうではない普通の人々を、どう動き易くしてあげるか。上司としては、部下と一緒に作り上げる形をとりながら、ひとつでも成功体験を持たせてあげることが重要だと思います。

古森 ハシゴを外される不安を軽減して、動き易くするということですね。それで、何かうまくいけば主体性も芽生えてくるのでしょう。そういった変化を、一人ひとりに起こしていくのですね。

岡本 そのあたりは、海外でも日本でも本質は同じ部分があると思っています。