C-Suite Talk Live第28回 東洋エンジニアリング株式会社 取締役社長 山田 豊さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第28回 東洋エンジニアリング株式会社 取締役社長 山田 豊さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第28回(2/4)

第28回 東洋エンジニアリング株式会社 取締役社長 山田 豊さん
Calendar2010/08/09

語り継ぐために

古森ところで、MVVを風化させないためには、書面だけでなく有機的に語り継いでいくことが重要だと思います。語り部のような取り組みは考えておられますか。

山田 事務局を中心に社内の若手を集めて、MVV、特にビジョンやバリューに相当する様々な事例を編纂しようとしているところです。これも最初から英語で作って、イントラネットを活用して電子ブック形式で共有していきます。全8巻を想定して、毎月1巻ずつ出していく予定です。

古森 単にMVVの定義や説明を載せるのではなく、生きた事例や場面まで共有していくというのは、非常に有機的ですね。海外の方々も含めて、コンテンツに興味を持って頂けるといいですね。海外拠点の方々も、その編纂チームに参加しているのですか。

山田 はい。我々の業界では理屈よりも経験則的な面が生きる仕事がたくさんあります。発明的な意味でのイノベーションも必要ですが、経験の積み重ねの中で出てくる知恵はさらに重要です。ですから、仕事の現場である海外の拠点を巻き込んで編纂していくことには、大きな意味があります。

古森 編纂のプロセスは、人材育成の機会にもなるでしょうね。

山田MVVに照らして好事例にあたるものを自分で書いてみることで、それまで十分意識していなかったものが「そういうことだったのか」と腹落ちするきっかけにもなります。事例編纂作業そのものが、人の成長に好影響を与えるはずです。

古森 過去に起きたことをあらためて振り返って、書き残して伝えるということは、組織知を形成するうえでの第一歩ですね。書きにくい話もあるでしょうから、経営トップがコミットして進めているという建てつけも必要ですね。

山田 ええ。もっともこれは基本的には成功物語集ですから、それほど遠慮するような内容でもありません。エンジニアリングの会社ですから、トラブルシューティング系のデータベースは元来充実しているのです。MVVの事例に関しては、皆さんポジティブに考えてくれているようです。

古森 なるほど。うまくいったこと、良いことを共有化しようというのは、カルチャーチェンジにも好影響を与えるでしょうね。

山田 こういうことをしていかないと、実体としてグローバルになっていかないのです。

古森 自分の所属している会社を誇りに思いたいのは、どこの国の人でも同じでしょう。現場を巻き込んだMVVの取り組みが広がっているというのは、これからのグローバル経営に向けて心強いことですね。

「Because Japanese」は通用しない時代

古森さて、考え方や価値観のレベルでグローバル組織の歯車が回り始めて、今後はより具体的な変化のステージに入っていかれますね。日本人や日本企業の変わりどころについては、どのように考えておられますか。何度か誌面で山田さんのコメントを拝見しておりますが、あらためてお聞かせ願えればと。

山田 これは、日常の延長で考えていてもブレークスルーしない話なので、タスクフォースを組成して検討を進めているところです。「日本発のグローバル」ではなく、「グローバルありきで日本がどうあるべきか」を考えていく活動です。

古森 御社なりのスタンスをとった議論ですね。

山田 会社の組織としては、日本は技術開発、全体の管理部門としての役割があります。一方、現場的な発想をしますと、我々にとっての外向きの仕事は中国、インド、中近東、ブラジルなど、世界各地で地べたに這いつくばってやるものです。設計も現地で行うことが顧客のニーズになってきていますので、まさに民族入り乱れて仕事をする環境が今や普通です。そうした中で、必ずしも「日本人でなくてもよい」場面も増えてきています。

古森「Because Japanese」というロジックでは、日本の本社や日本人人材の付加価値は正当化されにくくなってきていると。

山田一気に消えてなくなるということではありません。ただ、確実に状況は変わってきています。日本人人材のあり方をインド市場にたとえて表現すれば、いわゆる日本人の次に「インド系日本人」のような存在が重要になります。国籍という意味ではなくて、イメージのことですよ。

古森ええ、分かります。

山田 インドのカルチャーを理解したうえで、インターナショナルな物事も視野に入れて、現地の顧客と対話ができて、一緒に物事に取り組んでいくようなレベルのことです。その層は、徐々に厚くなってきています。

古森 その次のステージは・・・。

山田 いうなれば、「日系インド人」化でしょう。「え、あの人日本人だったの?」と言われるレベル。そうなっていくと良いなと思います。

古森 これまでの日系企業のグローバル経営の中で、なかば暗黙の了解として「Because Japanese」で成り立っていたものが、「本当にそうなのか」と問われているのが今の時代ですね。本当に日本人や日本の本社がやるべきことは何か。これまでの流れでやってきたことを問い直してみることが大事だと思います。その結果、どう変わるべきかも見えてくるのではないでしょうか。