C-Suite Talk Live第29回 新社会人養成塾BOOSTER 代表理事 田尻 邦夫さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第29回 新社会人養成塾BOOSTER 代表理事 田尻 邦夫さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第29回(3/4)

第29回 新社会人養成塾BOOSTER 代表理事 田尻 邦夫さん
Calendar2010/08/23

回り道をしなさい

田尻 それから、「回り道をしなさい」と言っています。1~2年の回り道はなんてことないわけです。結局、親御さんがだめということが多いですね。

古森 就職と受験を同じ範疇で考えているのは、学生さんもそうですが、親もそうなのでしょうね。時代環境への適応反応かもしれませんけど。

田尻 それでも、私の話を聞いて、カンボジアにボランティアで1年行った学生もいます。スーダンの川原医師のところに行った学生もいます。刺激を与えれば、自ら開いていく人はたくさんいると思います。実際、これからはアフリカやアジアなど、いわゆるエマージング・マーケットのことを良く知っていることは重要ですよ。

古森 日本人の活動領域が、そうした地域へと本格的に広がっていく中で・・・。

田尻 いうなれば、これからの経営には「目線の低さ」も必要ということです。日本よりも低いところもしっかりと見ることの出来る人材が必要です。

古森 「目線の低さも必要」とは、言いえて妙ですね。

田尻 しかしながら、危険なので、行きたくても現実問題として難しい場合もあります。アフリカなどは、現時点では何か起きたときのコストや犠牲が大きすぎますね。

古森 少なくとも、「行っておいでよ」とはお奨めできない場合もあるのですね。

田尻 ところが、ある学生がすごいことをやりました。英国の旅行エージェントが世界の学生を募集してアフリカに2ヶ月間旅行するというプログラムがあって、そこに手を上げてアフリカに渡りました。英国領事館の支援がついているので、ある程度安全を担保できますし、英国流のリスク管理を学ぶ機会にもなるでしょう。こういうのを見つけ出して行動すること自体が、今後必要な優秀さの一つなのです。

古森 それは行動力がありますね。情報収集力も素晴らしいですね。外交とは何か、あるいは外交の重要性などについても、体験的に知る機会になるでしょうね。

田尻 そんなことを色々と議論したり支援したりして3年目ですが、BOOSTERの会員はどんどん増えてきています。現在、500~600名の登録があります。一方、一回の集まりは40名程度に限定していますので、それがBOOSTERという場の希少性を高めていることも事実です。

古森 そうした、何かを欲するという主体性の中で聞く話、培われるネットワークというものは、大きな意味がありますね。

BOOSTERの将来展望

古森 さて、そのようにして確実に存在意義を高めつつあるBOOSTERですが、将来の展望はどのように持っておられますか

田尻 まずは今進めている取り組みを深めて行くことが大事だと思いますが、 NPOの定款の一つには、就職や採用のあり方への提言活動も明記されています。

古森 なるほど、そもそも社会の仕組みから改善して行こうということですね。NPOというニュートラルな立ち位置も生かせますね

田尻 就職・採用をめぐる昨今の状態というのは、企業にとっても学生にとっても、ロスが大きいと思うのです。つまり、社会全体で見てロスが大きいプロセスになっています。「そろそろ考える時期だ」という企業経営者の声も出ていますが、私に言わせると考える時期はとっくに過ぎています。もう、何か始めないとだめでしょう。

古森 田尻さんがおっしゃるロスというのは、例えばどんなことでしょうか。

田尻 例えば、採用決定に至るプロセスですね。私は英国駐在が長かったので、その頃の経験とも照らし合わせて今の日本の現状を見ています。英国では、通常は大学生がインターンシップを経験した後、その組織のトップが「この人とこの人」という形で、固有名詞レベルで判断して決めていきます。

古森 英国に限らず、欧米ではそういう傾向が強いですね。それに、インターンというのは、企業が学生を見極めるプロセスであるとともに、学生側が企業を評価する機会でもあります。いうなれば、現実をお互いに見せ合う中で、両思いを作っていくプロセスですね。

田尻 一方、日本の現実はどうでしょうか。最近では、インターンシップを活用する企業も増えてきましたが、全体の趨勢は非常に定型化された、マスのプロセスになっています。インターネット経由でエントリーシートを出すのが常識になってきましたが、結局企業側に膨大な応募が来ることになるので、実際は内容をしっかり吟味することは出来ていないはずです。

古森出来るだけ多くの企業にエントリーして、間口を広げておきたいというのは、厳しい環境の中では自然な行動でしょう。しかし、結局はその集積が、かえって個々のエントリーが「読まれない」という皮肉な結果になっているわけですね。

田尻 それで、実質性を高めるために、あえて紙に3~4枚書いて出すことを要求する企業や、エントリーシートの設定テーマを難しくしている企業も出てきました。あと、結果だけ見れば、やはり大学名でのスクリーニングというのは、建前上は存在しなくても、実態としてはある程度存在するかもしれないと思っています。

古森 あるのかもしれませんね。結局、企業としても現実的に何かの軸を決めないと、膨大なエントリーシートから次のステップに進める人を選ぶことさえ出来ないということでしょう。それを大学名で見るのかどうかは別として、何か外形的な見えやすいものに依存せざるをえないという現実もあるのでしょうね。

田尻 そういう現実を理解しつつも、企業にとって採用というものが持つ本来の意味に立ち返れば、やはり妥協をすべきものではないと思うのです。本当に大事なことですよ。会社の将来がかかっているわけですから。今起きている採用のプロセスを、社会全体の視点で改善していく必要がありますね。本音と建前を、どこかで整理しないといけないでしょう。それが、中長期的には皆にとってプラスになります。

古森 今の就職・採用のプロセスは、社会的に見て「エコ」ではないわけですね。

田尻 そういうことです。採用・就職だけでなく、会社に入ってからの育成だって、さらにレベルをあげていく必要があります。少し時間はかかると思いますが、BOOSTERの活動を通して「おかしいな」と感じることにきちんと向き合って、世の中に提言していきます。