C-Suite Talk Live 第31回 ブリストル・マイヤーズ株式会社 執行役員 人事総務部門長 田島 房好さん

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第31回 ブリストル・マイヤーズ株式会社 執行役員 人事総務部門長 田島 房好さん
Calendar2010/09/21

「DAIモデル」と「カルチャー・アンバサダー」

田島こうした戦略的方向性に沿って、「カルチャー・チェンジ」の取り組みも進んでいます。弊社は、伝統的に見れば決して意思決定が素早い会社ではなかったという自己認識もあって、意思決定を加速するための意識改革の取り組みが進行中です。そのベースになるものを「DAIモデル」といいます。

古森 「DAIモデル」?

田島 「Decision Maker」、「Advice Giver」、「Informed Stakeholder」の3つの、それぞれの頭文字をとったものです。会議の効率をあげていくために皆で意識すべきことを記したツールを作って、会議室などに常設しています。何か議論するときには必ず、誰がDで、Aはきちんと情報を提供できているか、などということを確認しながらやっていくのです。

古森 (実際にツールを拝見して)ははぁ、「カルチャーを変革するために」という目的も、ここに明示的に書いてあるのですね。これがどの会議室にもおいてあると。

田島 はい、このツールを立てて置ける形状にしていることから、社内では「テント」と呼んでいます。

古森 あ、確かに。テントですね。ちょっとおしゃれな感じもありますね。

田島 コンセプトを示した「テント」の他に、DAIが書かれたサイコロも用意していて、それを目の前に置いて「あなたはDですね」など、非常に具体的に会議内での役割を明示するようにしています。皆がAgile(注:迅速・機敏な)でEntrepreneur(注:起業家)になろうという、目指すべき方向性を示して、それを意思決定の場面に生かしていこうという活動です。

古森 非常に基本的なことを大真面目に、かつ、物理的に人の行動に影響を与えうる形で徹底していこうという取り組みですね。また、それが暗い、面倒なイメージというのではなくて、明るい感じでやれそうな印象です。「テント」、これはなかなか良いですね。こういうものは、グローバルのどこかで専管している組織があるのですか。

田島 あります。が、各拠点にも「カルチャー・アンバサダー」(企業風土変革の特別大使という意味)という役割を配置して、各国を草の根で巻き込む形で展開しています。

古森カルチャー・アンバサダー?

田島 「カルチャー・アンバサダーは、人事以外の人間が就任すべし」ということも決められています。プログラム全体のイニチアチブは人事がとるのですが、ビジネス側にチャンピオン(注:唱道者)を置いて展開している点が鍵ですね。日本では、東京の他、愛知の工場にもいます。アンバサダーたちがグローバルの会議に参加して学んできた施策を、国内で伝え、展開する役割を担っているのです。

古森 なるほど。これも実態を持たせようという営みの一つですね。アンバサダーの方々が、先ほどの「テント」の趣旨や使い方なども、現場で広げていくのですね。ちなみに、アンバサダーの歴史はどれくらいになりますか。

田島 今年でちょうど2年くらいですね。

古森 実際、現場の意識改革という面での効果はいかがですか。ここまでのところ、何か感じられる変化はありますか。

田島 変化は、着実に起きていると感じていますよ。ただ、一足飛びにカルチャーを変えられるなどとは思っていません。変化を呼びかけていく上では日本人特有の照れのようなものもありますし、部門ごとに変化の濃淡もあります。地道に取り組み続けていくことが大事です。

厳しさも戦略に沿って

古森 戦略として「規模を追わない」ことの一つの帰結として、人員数や人件費のマネジメントも一般的にはタイトになっていくことが考えられます。このあたりは、いかがですか。

田島 結果的にはそうなる面もあります。ヘッドカウント(注:人員数)で言えば、グローバル全体でも日本でも、数は減る方向で推移してきています。ただ、やみくもに数を削るといった考え方ではなく、会社の中に維持すべき仕事と外部を活用して効率を上げるべき仕事とをしっかりと検討して、人員数以前にまず組織自体のあり方を吟味した上での帰結です。

古森 そこも戦略→組織→人事という、あるべきロジックに沿った話なのですね。

田島 規模を追うことをやめて、新しい戦略に舵を切ったわけですから、経営としてはリスクも大きいのです。例えば、もし株価を健全に維持できなくなれば、買収される可能性だって常にあるのがこの業界です。

古森 上場企業である以上は、資本サイドのステイクホルダーを裏切らないために、難しいこともやらねばならない局面はありますね。

田島 例えば、今春は昇給面で非常に控えめな対応をすることがグローバル全体の方針でした。ただ、単に人件費だけ抑えたという趣旨ではないのです。あくまでも、規模を追うのをやめて、新しい分野に方針転換して、そのリスクの中で資本市場にも配慮しつつ、現実的に先手を打ってきているということです。

古森 今後の環境は、さらに厳しいですからね。各国の財政問題はそのまま薬価政策に影響を及ぼしうるわけですし、主力品の特許切れの問題などもありますしね。

田島 人件費のコントロールを行うというのは、どこの国でも決して心地よいプロセスではありません。しかし、経営として冷静に環境認識をして、先に、先に、ということで手を打つことは重要です。また、グローバル全体でそういう「先手が本当に打てる会社だ」という印象を私は持っています。

古森 人々が嫌がることであっても、必要に応じて決めるからこそ経営なのだと思います。皆が喜ぶことを決めるのは、ある意味、誰にでも出来ることですからね。