C-Suite Talk Live 第32回 株式会社ミツカングループ本社 専務取締役 野々山 幸夫さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第32回 株式会社ミツカングループ本社 専務取締役 野々山 幸夫さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第32回(1/4)

第32回 株式会社ミツカングループ本社 専務取締役 野々山 幸夫さん
Calendar2010/09/29
C-Suite Talk Live 第32回 ~対談エッセンス~
  • ワンワールド経営に向けて
  • 国内人事の横串活動と職種マップ
  • 鍵は課題分析力ではなく課題形成力
  • 非上場ゆえに・・・
  • 意識改革とメッセージの個別性

ワンワールド経営に向けて

古森 本日は、お時間を頂きましてありがとうございます。この対談、テーマをあまり限定せず、企業としての考え方やこだわり、あるいはご自身の仕事観など、広い意味で「人・組織」に関わるお話を伺って、世の中のどこかの誰かに響けば・・・という思いで続けております。よろしくお願い致します。

野々山 承知しました。私も楽しみにしておりました。

古森 色々とお伺いしたいことはありますが、まず、会社全体の方向性の中での人事分野の動きなどからお聞かせ願えればと思います。いかがでしょうか。

野々山 なるほど。そういう観点では、人事委員会のことをお話しするのが良いでしょうね。2009年から始めている、会社としての横串の連携強化の一環です。

古森 是非お聞かせ下さい。

野々山 会社全体では6つの委員会がありまして、ブランド委員会、基本技術(研究)委員会、生産技術委員会、品質・環境委員会、投資委員会、人事委員会、の6つになります。また、これらにグローバル版と日本国内版とそれぞれ2つがあります。私はその中の、人事委員会の責任者をやっています。グローバルの人事委員会と国内の人事委員会の両方の委員長を兼務している形です。

古森 グローバルの人事委員会の参加メンバーは、どのような顔ぶれですか。

野々山 現段階では、まずアメリカとイギリスから出て頂いています。アメリカは組織の規模が大きいので人事部長、イギリスはまだ組織が数十人程度ですので、現地法人社長が参加しています。この7月の人事委員会はイギリスで開催したので、その時はイギリスの人事マネージャーも参加しました。

古森 まずは組織的な蓄積がある程度存在する国から、ということですね。どれくらいの頻度で開催するのですか。

野々山 年2回です。秋に日本で、初夏に海外現地で開催しています。昨年はシカゴでやりました。アジア拠点はまだ人事面の基盤構築を進めている段階ですし、現地法人のリーダー層も日本人ですので、今はこの委員会には参加していません。

古森 グローバルの人事委員会で議論するテーマは、どんな内容でしょうか。

野々山 弊社が海外進出して既に20数年が経過しています。しかし、海外現地のことについては、事業実務や業績面でのやりとりがメインで、あまり思想的、理念的な面には深入りしてきませんでした。今後はもっと積極的に働きかけていこうということで、委員会ではまず人事の理念や方針の共有化について議論をしています。

古森 何か、そういう議論が起きてくるきっかけがあったのですか。

野々山 ええ。昨年から新しい中期経営計画がスタートしていまして、その中でグローバル化の更なる推進ということで、「ワンワールド経営」を標榜しています。経営の重要な機能で横串を通して、世界で連携してミツカンらしい経営をしようという趣旨です。そこで、6つの委員会の活動が始まったという経緯があるのです。

古森 なるほど、6つの委員会全体が、「ワンワールド経営」の推進を念頭に置いたものなのですね。

野々山 そういうことです。グローバルの人事委員会では、人事の理念や方針を共有して、米欧のメンバー自らがそうした思想的なものを各国で広める際のキーマンになって頂くことを期待しています。

古森 その人事の理念や方針というのは、どのようなものでしょうか。お話しいただける範囲で結構ですが。

野々山 日本では既に確立されているものです。ひとつは社員に対するありたい姿で「自ら考え、自ら動く」ということ。もうひとつは、人事機能全般における価値基準として「あたたかさと厳しさ」。これが基本です。それぞれに理解を促進するための詳細な注釈があります。

古森 なるほど。しかし、一般的には、日本で形成された思想を他の国々にニュアンスごと伝えるのは難しいですよね。御社の場合、どうですか。

野々山 その通りです。例えば「あたたかさと厳しさ」と言いましても、「あたたかさ」とは何か、という説明が必要です。最初は、日本における注釈を英訳して送っておくか・・・という話だったのですが、やはり単純に英訳しても正しく理解できないということが分かりました。

古森 やはり、そうですか。。

野々山 それで、ひとつひとつの言葉の持つ意味であるとか、日本でそれを大事にしてきた背景を理解してもらえるように、「こういう場面ではこういうことが大事だ」など具体的に説明してきました。そうするうちに、「ああ、だったらこの英単語は当てはまらない」など、双方向の議論が成り立つようになりました。

古森先方のカルチャーの中で、行動や感情の実感を伴って理解して頂かなければならないので、難度の高いコミュニケーションですね。

野々山 例えば、「厳しさ」という言葉。この背景には、公正に人事をする、公平に評価する、あるいは厳正に制度を運用するといった意味が込められています。しかし、当初それを「Strict」と言ってみたところ、ニュアンスが違っていたようです。「皆震え上がってしまう」「がんばっても評価しないぞ、というトーンで聞こえかねない」などの意見がありました。議論を重ねて、最終的には「Professionalismという言葉が一番近い響きだね」ということになりました。

古森 そういう、語感を伴う訳というのは本当に大事ですよね。そこがぶれてしまうと、理念体系から派生するすべての活動が狂ってしまいますから。

野々山 まさにそれを感じながらの議論でした。最終的には、「これだったら自信をもって自分の口で組織内に説明できる」という反応があり、多少時間はかかりましたが、良い議論が出来たと思っています。

古森 時間とコストをかけてでも、こういうソフト・イシューの議論は対面式でやったほうが生産性は高いですね。時空をお互いに共有してやらないと、メールのやりとりや電話会議だけでは議論が進歩しません。

野々山 今後は、さらに社員へありたい行動を示す「ミツカン行動六則」なども、グローバルの人事委員会で伝えていくことにしています。この行動指針は日本の組織にありがちなことをベースに作っていますので、そもそも欧米の組織では当てはまらないものもあったりします。いったん趣旨や背景を詳しく伝えたうえで、彼らの方で「欧米版」を考えて頂くつもりです。

古森 根本の趣旨を伝えた上で、表現形や細部は海外現地の事情にカスタマイズするわけですね。現地のリーダー層が「わがこと」として伝え、率先していけるように有機的に仕掛けているところが素晴らしいと思います。

野々山 何らかの形で就業規則の中に織り込みたいという声も出ています。イギリスでは、個人評価の評価表の項目のひとつに既に入れているので、それをまた見直して、行動指針として作り変えてみようという話になってきました。自分たちで考えたものであれば運用も良くなるということを、肌で感じ始めているところです。時間はかかりましたが。

古森 理念的なものが誤解されて様々な誤作動を生むリスクを考えたら、ここに時間をかけるのはむしろ生産性の高い投資だったのではないでしょうか。ガバナンスの根底には相互の理解や信頼が必要ですから、そういう意味でも、今後のワンワールド経営に大きなプラスになったのだと思います。

野々山 文化・風習・法律なども違う中で「日本発の価値観が伝わるだろうか」という不安もありました。しかし、膝を突き合わせて話していく中で、「表現や環境は違っても、基本的に大事にしなければいけない部分は共通するものがある」と感じるようになりました。また、日本人だけが理解できるものを使って「ワンワールド経営」は出来ませんから、現地の人々とのしっかりしたコミュニケーションが大事だなと再認識しました。

野々山幸夫さん プロフィール
野々山さんは、大学時代に培養工学を修められ、1980年にミツカンに入社されました。
配属は、中埜生化学研究所の分析グループ。地味な仕事も足で稼ぐ、異色の分析マンでいらっしゃったようです。
その後、開発部や生産部を経て、総務部で管理職に昇格されます。そこで人材開発の職務をご担当され、今日に至るまで人材マネジメント分野への造詣を深めてこられました。この間、子会社の経営職も兼務で歴任しておられます。