C-Suite Talk Live 第33回 味の素株式会社 取締役 常務執行役員 岩本 保さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第33回 味の素株式会社 取締役 常務執行役員 岩本 保さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第33回(1/4)

第33回 味の素株式会社 取締役 常務執行役員 岩本 保さん
Calendar2010/10/12
C-Suite Talk Live 第33回 ~対談エッセンス~
  • アジアへ、そしてさらに西へ
  • 新興市場開拓と日本の人材
  • 本社機能もグローバル化
  • グローバル経営をつなぐもの
  • 「任せる経営」の最初の歯車を回すには

アジアへ、そしてさらに西へ

古森 本日は、どうもありがとうございます。この対談、何か良いこと、ヒントになることを発信しようということで続けております。私自身も修行のつもりです。

岩本 こちらこそよろしくお願いします。

古森 昨今の日本では、「グローバル」にまつわるテーマが色々と議論されておりますが、味の素さんもグローバル化に関しては一家言がおありでしょう。そのあたりのお話も含めて、人・組織に関わる課題意識や思いなどをお伺いできればと思います。

岩本 そうですね・・・。日本の食品産業は、市場として見れば80兆くらいの大型産業です。しかし、実際は細かい企業がひしめいている環境であり、大きな流れも縮小基調にあります。いかにそれを緩やかにするかというのが日本国内での重要テーマです。一方、次の大きな成長を目指すとすれば海外で、特にアジア市場をどう開拓するかが重要になってきます。

古森 アジア市場においては、御社はかなり古くから手を打って来られたとの印象があります。

岩本 アジア進出には、50年以上前から取り組んで参りました。一方で、欧州の食品企業、ユニリーバやネスレなどが逆に東に向かって進出してきています。ちょうど当社が日本から始まって西に行こうとする中で、東南アジアで激しくぶつかっているような状況ですね。

古森 欧州勢の積極攻勢も、よく耳にしますね。

岩本 中国とインドでは、弊社はユニリーバやネスレを追う立場にあります。一方、東南アジアでは、会社の規模も考えれば健闘しているといえるでしょう。さらに西の方に目をやると、インド、バングラデシュやドバイにも進出していますし、アフリカのナイジェリアにも20年前から工場を持っています。

古森 いわゆる「BOP戦略」、新興国への橋頭堡づくりは着々と進んでいるようですね。

岩本 中央アジアの「スタン」がつく国々、そしてエチオピアやケニアなどにも展開していこうとしています。

古森 そのアジア、そして西方への進出を支える人材という観点では、どのようになっていますか。現地化の度合いですとか。

岩本 まずグローバル全体で見ると、役員、部門長、工場長、営業支店長などの主要なポストが全部で225ポジションあります。そのうち現地のナショナルスタッフ(NS)がついているのは30% くらいですね。アジアでみると、20%がNS、日本人が80%という構成比です。ちなみに米国の支社や工場では40%がNS、欧州では半分がNSという状況です。

古森 欧米よりも新興国の方が人材の現地化が難しいというのは、日系企業によく見られる状況だと思います。任せようにも、コンプライアンスの問題などもあって理想通りにはいかない面も多いでしょう。ただし、あえて欧米企業との比較で言えば、彼らの方が現地人材登用の進行度は早いように思います。現地人材の活用競争でどう勝っていくか、今後の大テーマですね。

岩本そのとおりです。今、行っているのは、新興国から日本に2~3年のタームで来て、実際に働いて頂くというプログラムです。先般はタイの財務部長を呼んできて、日本で内部統制の仕事をしてもらいました。そしてまた現地に戻って頂きます。インドネシアの人事部長も2年半こちらに来てもらって、つい先日帰国したところです。中国、ロシアなどからも定期的に来ていますよ。ほとんどの場合、家族帯同で赴任してもらっています。今後も、こうした交流を増やしていく予定です。

古森 研修旅行のようなものではなく、しっかりと2~3年仕事で来てもらって、かつ出来れば家族ぐるみで来て頂くことで、仕事も生活も深く「日本」に馴染んで頂こうというプログラムですね。ここは御社なりの「NS育成」への取り組みを感じるところですね。

岩本 世界中どこでもそうかもしれませんが、特に東南アジアでは「信頼できるNS」をいかに作るかが鍵です。そのためには、実際に日本に来てもらって、「味の素が何を大事にしている会社なのか」を肌で知って頂くことが何よりです。深く吸収して現地に帰って頂ければ、日本人がいなくとも彼らに任せていくことができます。

古森「本社が見ていないところで裏切らない人」を何人持てるかというのは、これからのグローバル経営では本当にクリティカルですよね。

岩本 そういう流れの中で、2009年ごろからグローバルに人材を評価する仕組みの構築も進めています。日本の制度もいずれその中に統合して、人事が一つのプラットフォーム上で動けるようにしたいと思っています。資格要件、教育、プロモーションなどの仕組みを標準化して、最終的には報酬面にも何らかの形でつなげていくことになるでしょう。

古森 仕組み、インフラ面も着々と進めておられるのですね。そろえることで、場合によってはグローバルの総人件費があがったりもしますから、標準化の程度は決め所ですね。色々と工夫が凝らされていくことと思います。

岩本保さん プロフィール
岩本さんは、1974年に味の素に入社されました。
グローバル化を推し進める全社戦略の流れの中で、タイ、ベトナム、ブラジルなど、新興国市場での現地拠点経営に豊富なご経験をお持ちです。
2005年に執行役員人事部長、2009年に取締役常務執行役員に就任され、「人・組織」への洞察を味の素のグローバル経営に生かしておられます。