C-Suite Talk Live 第35回 農林水産省 大臣官房 政策課 企画官 木村 俊昭さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第35回 農林水産省 大臣官房 政策課 企画官 木村 俊昭さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第35回(2/4)

第35回 農林水産省 大臣官房 政策課 企画官 木村 俊昭さん
Calendar2010/11/08

地域活性化「5つのポイント」

古森 そういう原点にも照らしつつ、これまでのご経験をふまえて、地域活性化の勘所というのはどのようなものになりますか。

木村私は、集約すれば5つのポイントがあると考えています。

古森 5つのポイント。是非お聞かせ下さい。

木村まず1番目に、「所得の話」です。地域活性化というと、つい取り組みの内容に目が入ってしまいますが、現実的には所得の向上につながらないと広がりが出てきません。400~500万円くらいの所得水準を実現できうる地域をつくらないと、継続・進化しないと考えています。

古森 日本の平均的な所得水準くらいはイメージできる話でないと、地域の人々の本音がついてこないということですね。そうした、取り組む人々にとっての具体的な経済視点をまず忘れてはいけないと。

木村 地元企業、主産業の振興を大切にし、地域全体の最適化を踏まえ、所得の向上を考えることが重要です。

古森 腑に落ちます。

木村2つ目は、地域の人財育成・定着ですね。いかに行政や各種団体が旗を振っても、地域内にそれを推進していくリーダー人財がいなければ、デザイン設計しても実現できないといえます。先ほどお話した「つなぐ」機能を担う人財もこれに入りますが、そもそも、地域のことを良く知っている人の蓄積とネットワークを構築することが最初の一歩です。

古森「地域のこと」というのは、ここではどのようなイメージですか。

木村例えば、産官学の連携を地元で仕掛ける人が、その地域の大学で取り組んでいる研究テーマを知らなかったとしたら、より効果的な橋渡し役が出来るでしょうか。あるいは、中高生の親御さんが地域にある企業や大学のことを詳しく知らなかったら、お子さんたちに地元を含めた進路を示すことができるでしょうか。

古森なるほど、そういう意味ですね。人財育成を導く人々、つまり大学や親御さん、あるいは地元の企業などが具体的な情報を持って連携しあう必要があるということですね。ただつながるだけではなくて、お互いを知って、意味を持ってつながることが重要だと。

木村 3つ目は、地域活性化に汗を流している人々への認知ですね。地域のためにコミットしてきた人がしっかりと評価を受けて、例えば、その活動をまとめたDVDを図書館に収めていくことが重要です。その地域の歴史に名を刻む仕組み作りをしていくことが重要ですね。それを見て育った子供たちの中から、「自分も・・・」と思う人が生まれてくると考えます。

古森 必ずしも金銭的なものではなく、まさに「認知」行為そのものが重要ということですね。人間、他者からの認知で自我が存在しうるとさえ言います。認知というのは、これは企業の経営でも同じですが、ある意味で最高の報酬なのですよね。地域の中で、いかに「汗かき人」に対して光を当てることができるか。それが見えていれば、地域のために働く次世代人財を育てる素地にもなるのでしょう。

木村 4つ目のポイントは、女性や若手、あるいは退職後にも働きたいシニア層などが活躍できる場を作るということです。また、それを進める上で、支援システムを確立することが同時に必要といえます。

古森 そういう人々が地域の活動に参画していくというのも、活性化そのものですね。

木村 まさにそうです。例えば、「地域で女性部を作って農家の皆さんと一緒に商品開発をしよう」という動きが出てきたとします。地域が活気づきます。ところが、女性の皆さんがいざ子供を預けようとしたら、預ける施設が十分にない・・・。そういう状況では、せっかく動き出そうとしても動けなくなります。

古森 このあたりは、企業経営におけるいわゆるダイバーシティの問題と同じですね。ただ、地域の視点でとらえる場合、一企業としての施策を考えるよりもさらに問題構造は深いのでしょうね。規制や自治体の財政の問題などもあるでしょうし、自治体だけで動けないものもあるだろうと思います。

木村 確かに、色々なチャレンジが求められる課題です。しかし、実際に地域活性化を進めていく上では、一体感と客体から主体へなど避けて通れない要素だと思っています。

古森そして最後の5番目は・・・。

木村 「新しい産業興し」です。ただし、新しいことに手を出せば良いというニュアンスではなくて、地域全体の強みや特色などを良く考えた上での、戦略的な取り組みのことです。

古森 企業経営でも、過去と現状を冷徹に見つめたり、そこから学んだり考えたりすることなしに新しい事をぶちあげると、うまくいかないケースが多いですね。地域の経営にも同じことが言えるのですね。

木村 例えば、これまで年間100万人来ていた観光客が300万人になったとか、30万人のところから100万人になりましたと言っても、それが地域の活性化にそのままつながるかどうか。結局は、その観光に関わる人が地域の中にどれくらいいて、どれくらいの売上になり、どの程度の所得に貢献するのか。そこまで考えた新しい産業興しでなければならないと考えます。

古森 その手の観光客の数字などは良く目にしますね。表面的なものではなく、地域内での実際の経済効果や広がりを意識した取り組みが必要ということですね。5つのポイントを伺っていると、あらためてこれは「経営そのもの」だなと感じます。