C-Suite Talk Live 第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第36回(3/4)

第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん
Calendar2010/11/24

このプロジェクト自体がリーダーシップの教科書

古森私、お話を伺っていて思うのですが、この設立準備プロジェクト自体が、既にリーダーシップの教科書のようなものだなと・・・。

小林 色々苦労しています(笑)。

古森 この設立経緯や、その背景にある思いなどをケースにして、スクールが出来たら教材の一つにすべきじゃないかと思います。リーダーシップの定義も色々ありますが、結局は、「その人のところに人が集まる」ってことじゃないですかね。権限・権力とかポリティクスとかじゃなくて、その「人」自体が引力を持つ。そういう状態が、一番自然にリーダーシップが働く状態だと思うのです。今起きていることは、まさにそれだなと。

小林 そんな大それた話ではないと思っていますが、この取り組みに共鳴して、本当に色々な人々が参画して下さっています。「こういう風になるといいな」という瞬間に、本当にそれを実現する力を持った人があらわれて、力を貸してくれるような感じです。

古森 何か引力があるんですよ、きっと。

小林 先日は、「ウェブに動画を公開したい」と話していたところ、Facebook経由で映像作家の方が名乗り出て下さって、無料で映像を製作して頂けました。「中国語訳が必要だ」と思っていたら、中国語訳をボランティアでして下さる方が現れたりして。困ったときに、天から助けが降りてくるような感覚です。

古森 それは偶然ではなくて、このプロジェクトが目指しているものに多くの人が共鳴しているからでしょうね。世の中の流れとしても、金銭授受を伴わない形で、「良いと思うことをやる」という価値観が、だんだん市民権を得てきていると思います。少し前のスタンフォード大学の卒業式スピーチで、オプラ・ウィンフリーが「お金をもうけることも大事だけど、仕事の意味も大事よね」と語っていたのが印象的でした。「意味の時代」が来ていますね。

小林 たしかに、自己実現の場を見つけようとしている人が増えているように思います。自分の持つ腕、専門性などを世の中に共有化したいという動きは、強くなっていますね。

古森 日本の経済は大変な時期を経て今に至りますが、ある意味で社会に多様性も生まれましたね。必ずしも大勢が同じようなステップで世の中に出て行くわけではなくなったし、半強制的に何かに集中的に取り組まざるを得ない場面も増えていると思います。そういう中で、結果的には多様な価値観や経験を持った人々が、社会の中に増えているのを感じます。

小林 このプロジェクトのメンバーやサポーターも、まさに多様な個性の塊ですよ。先ほどの谷家さんをはじめ、アドバイザリーボードや理事会には実にたくさんの第一線で活躍されていらっしゃる皆様がお名前を連ねてくださっています。

古森 そういう、自分の意思が明確な人々が集まっているチームなら、困難に接しても乗り越えていけるでしょうね。

小林 そうですね。用地の取得や学校の許認可申請など、これでもかというくらいに色々なチャレンジがやってきますが、皆とても明るいのです。「これもラーニングのための必要なステップだ」「きっとなんとかなる」と、非常に前向きです。

古森 やはりこのプロジェクト自体が、小林さんを核としたリーダーシップの象徴的出来事であり、また、今日的なアントレプレナーシップのお手本だと思います。なんというか、圧力のリーダーシップではなく、引力のリーダーシップとでも言いたくなるような。

小林 不可能と思ったら、本当は可能なことも出来ないですから。物事をリードする自分が、まず「出来る!」と思っていないと。

古森 21世紀のリーダーシップは、「ねあか」がキーワードですかね(笑)。

小林 「ノーテンキ」とも言います(笑)。

「学び」のコンセプト

古森 ところで、実際にスクールが設立された暁には、どのようなプログラムが展開されるのですか。まだ詳細はこれから詰めていくのでしょうが、コンセプトレベルで結構ですので、お聞かせ願えればと・・・。大変興味があります。

小林まさに今、激論を交わしているところです。狙っている「学び」にも色々な面がありますが、まずカリキュラムという点から言えば、やはり自主性を思い切り引き出すような仕掛けを考えています。

古森 小林さんが留学中に経験したものが背景にあるのでしょうね。受身ではなくて、徹底的に自己、個人の中に動因を求めていくスタイル。

小林 言い換えると、「誰かが決めた課題を解く力」よりも、「課題そのものを見つける力」を養いたいと思っています。例えば、スタンフォード大学の「d.school」ってご存知でしょうか。

古森 いえ、不勉強ですみません。

小林 色々な学部の人たちが集まってプロダクトデザインをするというところからはじまった、「デザイン思考」と呼ばれる面白いプログラムです。今度はそれを小中学校・高校レベルに広げようとしています。シリコンバレーのある学校では8年生までのラボがあって、例えば「今日はサンフランシスコ・メトロ(=地下鉄)が課題です」というと、皆で実際に現場を見に行って、観察やインタビューをすることでユーザーの立場に立ち、解決しなくてはならない課題を見つけます。その後、「何が問題だったでしょうか」「喫緊の課題は何ですか」という具合に、クラスルームで議論が行われます。そしてプロトタイプと呼ばれる試作品を多くつくり、クリエイティビティを発揮しつつ批評も受けながら改善を図ろうとします。

古森 きわめて実践的なプログラムですね。小中学校レベルでも、その方式が機能するのでしょうか。

小林 機能するのです。議論が始まると、「やはりサービスが売りだ」とか、「子供には吊革がつかまりにくいよね」などの声が出てきて、それらが新たなプロダクトデザインの着想につながっていきます。今年実験的に軽井沢でもサマーキャンプに採り入れてみたのですが、2日間の短縮バージョンでも子供達の反応はすごかったですよ。カリキュラムに取り入れていく一つとして、確信を持ちました。もちろんそのまま導入するのではなくて、私たちの学校なりにカスタマイズするつもりです。

古森 面白いですね。企業の経営者から見ても、興味深いプログラムに映るだろうと思います。先ほどおっしゃったように、可視化された課題への取り組み以上に、これからは課題を構想すること自体がビジネスの鍵ですから。10代のうちからこうしたプログラムで鍛えれば、事象に触れた際の思考回路が変わっていくのではないかと思います。

小林 そうした方法論的なものを研究しているところですが、「学び」という視点では生活環境自体にも大きな意味があると思っています。

古森 全寮制で、先生も一緒に住み込みという環境・・・のことですね。

小林様々な国・バックグラウンドから来た生徒で形成される一学年50名前後のグループ。それが、まずは高校3学年、ゆくゆくは中学校の設立も検討したいと思っているので、そうしたら6学年になって一緒に暮らすわけですから、生活環境に持ち込まれる多様性はすごいことになるだろうと思います。

古森 たしかに、すごいことになりそうですね。楽しいことばかりではなくて、まさに喜怒哀楽のすべてを濃密に経験することでしょう。

小林 いわば、生態系のようなものだと思っています。多様性を高めて、同じ空間に住んで頂き、そこから先はある程度自然に起きてくる有機的な変化も是とするわけです。もめごとも絶えないでしょうし、本当に色々なことが起きるでしょうが、それらは大事な学びの要素になっていくのです。

古森 生態系ですか。なるほど、しっくり来る表現です。

小林 そういう意味では、親御さん達にも理解して頂くことが必要です。

古森 自然の中で、多様な学生達が集まって、どんな生態系が出来るのでしょうね。今から楽しみですね。