C-Suite Talk Live 第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第36回(4/4)

第36回 軽井沢インターナショナルスクール 設立準備財団 代表理事 小林 りんさん
Calendar2010/11/24

サマーキャンプの手ごたえ

古森先ほどサマーキャンプのことをちらっと触れられましたが、どんな感じでしたか。今年初めて実施したサマーキャンプが、軽井沢インターナショナルスクールの今後を占う試金石的な位置づけになったのではないですか。

小林 そうですね。サマーキャンプは、まさに将来のプログラムのミニチュア版でした。参加者も、我々運営サイドも、色々なことを学ぶことができました。例えば、教育の多様性を提唱していますが、実際にミャンマーなどから参加者があって、その子供たちが参加者全体に与える影響が実体験できたのは大きな収穫でした。参加者の親からも、「この子がこんなに変わったので驚いた」といったコメントがたくさん寄せられています。

古森 参加者の親御さんが綴ったレターが、いくつかウェブサイトに出ていましたね。私も拝読しました。フィリピンから寄せられたレターが特に印象に残りましたが、その親御さんが使う英語の洗練度なども含めて、何かこう、今までにないものが集まり始めているな・・・という雰囲気を感じました。新しい風が吹き始めているようです。

小林 ちなみに、色々な国から多様な人々を集めるために、サマーキャンプにも奨学金の仕組みを導入しています。

古森 日本人だけのためのスクールではないと知りつつあえて聞きますが、日本人の参加者の変化みたいなものは、どんな感じでしたか。

小林 劇的に変わります。先ほどお話した「d.school」の短縮版で子供達が見せた変化には驚くべきものがありましたし、何よりも一緒に過ごす中で自然に発生する刺激のようなものがすごいのです。例えば、ミャンマーから来ていた子は、アウンサン・スーチーさんの活動を生で見て育った世代です。「ビルマの民主化のために一生をささげます」なんて真顔で言うのです。名前に「Aung」という文字が入っていて、聞いてみると、スーチーさんの活動に感銘を受けて、10歳の頃に親に頼んで改名してもらったのだとか。

古森 10歳でその意識ですか。

小林 日本だって色々ありますけど、やはり日本では考えられない環境の中で、まったく違った個性が育っているのです。その子が育った環境や考え方に触れて、日本の子供達も大いに刺激を受けました。フィリピンからも3名来ていましたが、サマーキャンプで10日ほど一緒に過ごしたら、「タガログ語を勉強したい」という日本人の子供も現れてきたりして、せっかくの生徒達の自主的な反応なので、急遽タガログ語の授業を用意しました。

古森 その「タガログ語を勉強したい」というような反応は、要はある種のリスペクトだと思うんですね。10代の多感な時期に色々な個性と触れて、自然な形で異文化にあこがれたり、リスペクトしたりするようになる。これまでのステレオタイプの日本人とは違う、異文化に対する高い受容性を持った人が育っていくかもしれませんね。多様性を集めて、新たな生態系が動き始める・・・。

小林 日本人にも海外からの生徒にも、そういう変化が起きることを期待しています。

古森短いプログラムとはいえ、サマーキャンプという形でまがりなりにも「本番」が試行されたことの意義も大きいですね。やはり、概念が実際に形になり始めるというのは、運営サイドにとっても世の中から見ても、大きな意味がありますね。

小林 それは、本当にそう思います。色々判断に迷うこともありましたが、サマーキャンプという形で動いてみて良かったと思います。何よりも、得られた反響に手ごたえを感じることができて、プロジェクトチームとしても確信を得ることが出来ました。

古森 まず行動。アントレプレナーシップですね。

小林 講師陣にも一流の人々を招聘したのですが、最初は半信半疑の方もおられました。何しろ伝統も何もない、「ぽっと出」の学校ですから。でも、サマーキャンプを実際に進めていく中で、このプロジェクトに強いコミットメントを持って下さるようになりました。

古森 サマーキャンプという試みが、また一つ、人々が集まる流れを作ったようですね。最後に、2013年の開校に向けて、何か企業セクターに期待することはありますか。現在でも既に、理念に賛同して様々な企業や経営者の方々が応援団に加わっていると伺っていますが。

小林 ありがたいことです。フルタイムでやっているのは私一人で、あとは全部ボランティアという状況で、このプロジェクトが何とかここまで進んできたのは、そういうサポートがあってこそだと思っています。

古森協賛のような形で資金面の支援ももちろん意味があるでしょうが、他にも企業セクターがやれることはありそうですね。教育のコンテンツ面でも、ビジネスの現場で起きていることのエッセンスを、10代の子供達に伝えられたら有意義なのではないかと思います。日系企業の話もいいですし、日本で苦労している外資系企業の話などもスクールの趣旨にあうかもしれません。「d.school」的な仕組みとの組み合わせも考えられますね・・・。

小林 もしかしたら、様々な国から集まった生徒達に何かを伝えることで、企業の人々にも気づきがあるかもしれませんね。

古森 2013年はすぐにやってくるでしょうが、まだ色々と試す時間もあるわけですよね。昨今、企業としても10代までの人材育成のあり方に強い関心を持っていますから、何かクリエイティブな取り組みが考えられるかもしれませんね。企業セクターとのコラボレーションの可能性、是非またブレーンストーミング致しましょう。
そろそろ、時間になりました。あっという間の90分でしたが、小林さん、今日は本当に有難うございました。今後の展開に期待しております。

~ 対談後記 ~
小林さんがスタンフォードで書かれた修士論文があります。「International Educational Administration and Policy Analysis – Beyond the numbers: An Analysis of the Effectiveness of the Filipino Education Project」と題するその論文は、当時の小林さんの課題意識がじかに伝わってくる力作です。
フィリピンでの世界銀行・JBIC共同の教育プロジェクトを題材にとり、途上国支援へのインプットが実際にどうアウトプットにつながるのか、定量・定性の両面から考察を加えた内容です。意欲的で価値ある論文だと思います。
しかし、小林さんとの対談を終えた今、良い意味でこの論文が霞んで見えるような気も致します。それは、小林さんが証明すべき対象物が学術的な世界を超えて、今や教育事業そのものになっているからだと思います。その時その時の自分のパッションに忠実に生きているからこそ、残してきた足跡にも光るものがあるのでしょう。

小林さん、有難うございました。