C-Suite Talk Live 第37回 国際基督教大学 教養学部 教授 八代 尚宏さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第37回 国際基督教大学 教養学部 教授 八代 尚宏さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第37回(1/4)

第37回 国際基督教大学 教養学部 教授 八代 尚宏さん
Calendar2010/12/14
C-Suite Talk Live 第37回 ~対談エッセンス~
  • 日本中が相撲の水入りのような状態
  • 国民性ではなく現実と枠組の乖離の問題
  • 多様性を前提にした社会システムを
  • 社会変革は「小宇宙アプローチ」で
  • 企業人事、今後の変わりどころは?

日本中が相撲の水入りのような状態

古森 今日はお時間を頂きまして有難うございます。この対談シリーズ、昨年の夏ごろから続けておりまして、企業経営者だけでなく様々な分野の方々にお話を伺っております。八代さんにも是非一度と思っておりました。どうぞよろしくお願い致します。

八代 こちらこそ、どうぞよろしく。

古森 やはり八代さんの場合、ご専門分野のこともありますので、今のこの日本の人事、労働、あるいはその背景にある社会全体の視点で最近のお考えを伺いたいと思います。私自身、子を持つ一人の親として将来に不安を抱いていますし、日常のコンサルティングの仕事の中では、個々の企業の枠組みを超えた課題の大きさにぶちあたることもよくあります。八代さんはどう見ておられますか。

八代 課題をあげればきりがない感じが致します。色々なものが複雑に絡み合っていて、こう着状態に陥っているわけです。なかなか変化が起こせない・・・。

古森 日本中が色々なところで相撲の水入りになっているようなイメージですね。

八代 なるほど(笑)。そういう感じでしょう。

古森 八代さんが特に想起されるのは、例えばどのような問題ですか。

八代 そうですね。要約して言えば、「個人としては分かっているのに、集団になると正しく動けない」ということになるでしょうか。そういう性質で起きているこう着状態が、たくさんあると思います。

古森 個人の意思と集団の動きの違いに起因する課題というのは、個々の企業の経営でもよく目にしますね。

八代 例えば、経済団体の動きですね。私も仕事柄多くの企業経営者の方々と親交を持たせて頂いていますが、個人として考えておられることには大変深い洞察がおありです。一方で、経済団体の実際の活動などを見ていると、そうした個々人の思いと必ずしも重なるものではないように思えます。

古森 企業経営者が団体で動くからこそ力になる場合もあれば、団体で動くことでかえって力が中和されてしまう場合もあるのでしょうね・・・。

八代 あるいは、私は労働法分野の改正議論などにも関わりましたが、ここでも似たようなことが起きていました。世間は「官僚は頭がかたい」などと言いますが、個々に議論をしていると非常に前向きで柔軟な思考の持ち主も数多くいます。でも、色々な審議を経ていく中で、法改正の当初の構想にあったものが薄れていったり、場合によっては本末転倒になったりすることが起きるのです。

古森 何か大きな問題が一つか二つあって事態がこう着しているのではなく、無数にある既得権や感情的抵抗、場合によっては悪意のないたくまざる反応なども含め、色々なものがにらめっこをして物事が形骸化していくわけですね。

八代 メディアも、そのこう着状態を打開する方向には動いていません。すべてのメディアを一概に論じるつもりはありませんが、あまり前向きな動きが起きていないことは事実だと思います。場面によってはメディア業界自体が既得権の保持者になっていることもありますし。

古森 メディアの仕事も人間のする仕事ですから、いつも良い方向に動くとは言えないのでしょうね。あと、この対談で何度か語ってきた私の持論は、「政治とメディアは大衆の鏡みたいなものだ」ということでして、結局は大衆の性質がメディアの動きを方向付けていると思っています。

八代 そこは、どうでしょうか・・・。私は、日本の大衆は、欧米と比較して決して劣っていないのではないかと思っています。実際は、「大衆を装った既得権者」というのが問題の根底にあるのではないでしょうか。

古森なるほど・・・。いずれにしても、こうして話し始めると確かに際限なく難しい話が出てきてしまいますね。この水入り状態は、放っておくとさらに次の10年、20年と続くのではないかと思えてきます。

八代尚宏さん プロフィール
八代さんは、国際基督教大学教養学部および東京大学経済学部をご卒業され、経済企画庁でキャリアをスタートされました。
同庁在籍中の1981年に米国メリーランド大学大学院にて経済学博士号を取得され、以後、OECD主任エコノミスト、日本経済研究センター主任研究員、上智大学国際関係研究所教授、日本経済研究センター理事長などを歴任して現職に就かれました。
雇用・労働関連分野での執筆、提言活動、政府の委員会など、経済学者の立場から日本全体の課題と方向性を考えておられる、日本のオピニオンリーダーのお一人です。