C-Suite Talk Live第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 落合 亨さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 落合 亨さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第38回(1/4)

第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 バイス プレジデント 落合 亨さん
Calendar2011/01/11
C-Suite Talk Live 第38回 ~対談エッセンス~
  • 人事のミッションは創造性を高めること
  • スティッチの成功が示唆するもの
  • クリエイティブ人材を集めていくには
  • グローバルに通用するとはどういうことか
  • やはり、実績で語るしかない

人事のミッションは創造性を高めること

古森 今日は、お忙しい中をありがとうございます。この対談シリーズは、2009年の夏頃から始めまして、企業経営、アカデミア、公的機関など、色々な立場でご活躍の皆様に話を伺って参りました。広い意味で「人」に関わる視点で、何かヒントになるものを発信して行きたいと思って続けております。宜しくお願い致します。

落合 こちらこそ、楽しみにしておりました。

古森 色々伺いたいことはあるのですが、まずは、御社における人事のミッション、立ち位置のようなものが何なのか、お聞かせ頂けますか。多くの人が注目するエクセレントカンパニーの一つですので、その人事のプリンシプルの部分に大きな示唆があるのではないかと思っています。

落合 そうですね。弊社の場合は、ビジネスの特徴を凝縮して表現すれば「IPビジネス」ということになります。IP、すなわちIntellectual Property(知的財産)ですね。基本的には何にもないところから価値を創出してマーケットに問う、ということで成り立っている会社です。

古森 映像やテーマパークなど色々な形で表現されていても、きわめて本質的な部分はそれですね。

落合 創造力こそが、ウォルト・ディズニーという企業の価値の源泉です。人事のミッションというのは、それを会社の中で伝道して、創造力を作る素地を組織内に生み出していくことにあります。また、そういう会社にモチベーションを感じる人の組織にしていくことです。

古森 なるほど、明快ですね。しかし、「創造性」という言葉に反対する人は少なくても、それを現実の動きの中に落とし込もうとすると難しくなるのが通例です。実際のところ、御社では何が現実面でのポイントになっていますか。

落合 それは、人事に限らないのですが、「細かいルールやストラクチャを作り過ぎない」ということです。外資系というと、そういう運営がイメージされがちですが、弊社はカジュアルにフリーにしたいという方針です。人間としての本能を活用しながら、創造力を引き出していくスタイルですね。

古森人間の本能への「信頼」が基盤にあるわけですね。人間の本能への疑い、不信にもとづく様々な規制が増えていく世界で、信頼のほうに軸足を置いたということですか。人を縛って動かしていくのではなく、人を信じて引き出していく戦略。

落合 放任ということではないですよ。大きな枠組みは維持したうえで、現場の自由裁量度を高めるということです。弊社には、テーマパーク、スタジオビジネス、コンシューマー、メディアという四つの事業がありますが、それぞれ、組織のカルチャーは大きく違います。創造性を発揮してもらおうと思ったら、いたずらに細かい枠をはめるのは逆効果です。

古森 相当、事業ごとに性質の差があるでしょうね。。

落合 そうですね。例えば、コンシューマーという分野は、ディズニーストアのような小売りビジネスや、キャラクターのライセンスビジネスが主な領域です。マーケティングの考え方なども、いわゆるFMCG(First-moving consumer goods)的なものになります。人材のマインドも、そういう世界にフィットしたものになっています。一方、メディア事業になると、いわゆる「ギョウカイジン」的な世界になりますね。例えば恵比寿、代官山などの流行スポットで面白いことを探すようなマインドが、実際に必要なのです。

古森 相当違いますね、それは(笑)。マインドが違えば、日常の動きも大きく違うことでしょう。

落合 それが一つの会社になっているわけです。単一の軸では物事は進められません。人事面でも、ルールを決め過ぎたらかえって適切な処遇ができないのです。良い意味で、「さじ加減」が必要になります。フレームワークを決めて、自由裁量をどこまで認めるかが要諦であり難しさです。

古森 アートの要素が入りますね。

落合 年間のインセンティブ・ボーナスの支払い方にも特徴がよく出ていますよ。一般的にはフォーミュラがあって、分配のファクターがあって、重み付けをして・・・いうことで運営しますね。弊社の場合は、分配のファクターはありますが、そこから先はかなり柔軟に運営されています。「ディスクリーショナリー(任意)」という表現をしていまして、「出す・出さない」は、マネジメントの任意なのです。ですから、「マネジメント・インセンティブボーナス」と呼んでいます。

古森 小さな企業体でなら有機的に成り立つことですが、大企業の現場ではなかなかチャレンジングな仕組みですね。

落合 そうです。マネジメントとしては相当の難しさを背負うことになります。しかし、創造性を大事にしようと思ったら、評価の面でもフォーミュラ化できない要素に向き合っていく必要があるのです。数値化できない定性的なものに、大きな意味がありますから。

古森 ジャッジはできるけど、数値化はできないという要素ですね。

落合 最終的には、P / L (注:損益計算書)に責任を持っている各国のカントリーヘッドが、マネジメント層とともにディスカッションしながら決めます。だから、「ディスクリーショナリー」という表現を使います。

古森 鍵は、「評価する側が、創造性を評価する眼を持っているか」という点になりますね。

落合 まさにそこです。それが、弊社でマネジメント職につく人間が背負う難しさですね。コンテンツへの顧客の反応なども含めて、マネジメント層がフィールドに行き、顧客の反応を実際に良くみていないと、創造性に関する適切な判断はできません。