C-Suite Talk Live第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 落合 亨さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 落合 亨さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第38回(2/4)

第38回 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 人事・総務担当 バイス プレジデント 落合 亨さん
Calendar2011/01/11

スティッチの成功が示唆するもの

古森 そういう「マネジメントとしての現場感」が発揮されたストーリーがあったら、可能な範囲でお聞かせ願えないでしょうか。

落合 そうですね・・・。古森さん、「スティッチ」ってご存知ですか。

古森 ええ、もちろん知っています。うちにも子供がいますし、そうでなくても色んなところで目にします。

落合あのスティッチがブレイクしたのは、日本が最初だったのですよ。今では日本発のキャラクターとして全世界に広がりつつあるのですが、ここで最初に火がついたんです。スティッチは、もともとはハリウッドの手書きのアニメ映画なのですが、キャラクターへの反響が大きかったので、「これは!」と思ったのが発端です。

古森現場の創造的な感性が、まずキャッチしたのですね。

落合 はい。それで、現場の直感を信頼して市場調査をしてみて、仮説が検証されるデータが出てきたのです。それで日本向けに本腰を入れて展開しようということになったのですが、大きな壁もありました。日本向けにするには、ハリウッドの原作から仕様を変えないといけないのですね。スティッチの場合、少し顔が変わっているのに加えて、ストーリー自体も沖縄のある島を舞台に変えています。これは、IPを重視する会社であればこそ、逆に難しいチャレンジだったのです。そこを超えるためには、ウォルト・ディズニー日本法人としての、マネジメントの踏み込みが必要でした。

古森 もちろん、市場調査でサイエンスもしっかりおさえたことでしょうが、根底には市場に対するマネジメントとしての皮膚感覚があったわけですね。

落合それで、結果的には日本で火がついて、全世界に広がっていきました。知的財産の逆輸出になっているケースだと思います。

古森 「これはいける」ということがあれば、日本発のクリエイティブな動きを起こしていく。「これをこう日本風に変えたらいけるかも」という感覚の働きが、まさに創造的、クリエイティブなのですよね。調査で証明する前に、まずそこにひらめくことに大きな価値がありますね。

落合 いわゆるグローバル企業の世界では、「ブランドのコンセプトを変えるなんてありえない」という場合が多いでしょう。弊社の場合は、フレームワークとしてのブランド使用のルールがあって、ローカルの権限の中で可能なこともあります。一定のローカライゼーションが許容されるのですね。それで、ローカルで成功事例が出てくると、USの本社もさらに乗ってくるという感じです。

古森 私思うのですが、このモデルを維持しようと思ったら、組織の上に行くほどリスクテイカーでアントレプレナーじゃないと、だめですね。

落合 その通りです。枠組みの中で創造性を形にしていく際には、誰かがリスクをとって賭けていく必要があります。それが弊社のマネジメントの重要な仕事の一つです。

古森上のほうがリスクを回避すると、現場のほうに説明責任が過大に積みあがってしまい、肝心の創造性を発揮するのとは対極の仕事が増えますね。御社は、経営が創造性というテーマに対して逃げずに動いているという印象を受けます。

クリエイティブ人材を集めていくには

古森 マネジメントの話が出ましたが、一方で、現場にいらっしゃる方々の創造性の担保も重要ですよね。広義のエンタテインメント業界としてみると、他の企業でもいわゆるクリエイターやプロデューサーの獲得・育成には苦労しているように思います。御社はいかがですか。

落合 幸い、弊社の場合はそのセグメントの方々がたくさんいます。企業としても有難いことに成長モードですので、クリエイティビティを持った人の採用も続けています。「創造性の火種を絶やさない」というのは、人事としても非常に大事なポイントだと思います。

古森 クリエイターやプロデューサー人材の採用というのは、どのようにされているのですか。属性的な側面を見ても、人の創造性はそう簡単には分からないと思いますが。

落合 ヒントは、「本人が何をやりたいか」という部分にあります。残念ながら、ヘッドハンター経由でアプローチしても、なかなか巡り合えない人々です。やはり、創造的な人々の持つネットワークの中に入っていかないと、ダメだと思いますね。マスの人材マーケットではなく、完全にピンポイントの世界です。創造性豊富な人が「あの人なら」と推薦する人材は、やはり確度が高いですね。感性の世界ですから、分かる人にしか分からないものがあります。

古森蛇の道は蛇、ということですね。蛇という例えが良いかどうかは別ですが。しかし、そのネットワークの源泉が社内で多数確保できているというのは、大きな強みですね。一朝一夕には、真似できないアセットだと思います。

落合 クリエイターやプロデューサーの才能は、本人の「思いのたけ」と環境と時代で変わるものです。陳腐化もしますし、非常に動的な世界です。本当に良い人材は、そういう変化を感性がちゃんととらえていて、自分自身も変わっていける才能を持っていますね。そうでないと、一時期良かったけれども今は昔の人・・・となるわけです。

古森 非常にダイナミックな世界ですね。マネジメントも現場も、創造性というテーマを「本当に追いかけている」というのが、御社の強さの鍵なのですね。組織に嘘があると、創造性にあふれた人に対する求心力は得られませんからね。