C-Suite Talk Live 第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん

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第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん
Calendar2011/02/07

内閣改造型役員交代制度

古森そうなると、一方で会社の上層部がいかに若い感覚を保つかということも、重要になりますね。どんなに若手を刺激しても、最終的に会社の経営層が若さを暗に否定するようなメッセージを出していたりすると、すべて台無しになってしまいます。

曽山まさにそうです。その点に関しても、当社では強く意識しています。その最たるものが、経営層の定期的な入れ替え制度です。

古森 定期的に役員メンバーを変えることを、仕組み化したということですか。

曽山そうなります。2年ごとに、原則としてサイバーエージェント本社の8名の取締役のうち、2名を新しい人と交代させることになっています。事業の現実面との兼ね合いもあるので、厳密に毎回2名とは限りませんが、「役員は定期的に入れ替わる」ということは経営のコミットです。

古森 ユニークですね。役員の一定数を常に入れ替えていくという仕組みは、あまり目にしたことがありません。ということは、曽山さんも、いずれまたプレイヤーに戻って現場でバリバリやる・・・という可能性もあるわけですね。

曽山当然あります。かつ、それがネガティブなことでも何でもなく、普通にそういうことが仕組みとして起こりえます。社長の藤田も社員ひとりひとりも、誰が次のCA8(注:CyberAgent 8 = 同社の経営陣)に入るのか、発表までとても盛り上がりました。何か悪いことが起きて問題解決的に入れ替えるということではなく、入れ替えていくこと自体に意味を持たせているわけです。

古森 上層部にそういうダイナミズムがあると、次世代、次々世代の人材育成にもリアリティが出てきますね。現経営陣としては、若手の育成というのは、遠い将来ではなく自分の後任になりうる人々の育成なのですね。若手は若手で、自己の将来像に現実感が持てるでしょう。この入れ替えの仕組みは、社員の皆さんが知っている話なのですか。

曽山 もちろんです。社員総会で、そういう仕組みがあることを公言しています。「CA8を狙いますから、曽山さん見ていてください!」なんて言う新卒メンバーもいます。だんだん社内で共有認識になってきたなと感じています。

古森そもそも、この仕組みを入れようとした背景は何だったのでしょうか。

曽山 最初は、どんな企業にでもあるような、「管理職の育成」というテーマがあったわけです。そのための施策の一つとして、伸び悩んでいる管理職の一定割合を入れ替えていくような、厳しい仕組みが検討の俎上にあがりました。ところが、社長の藤田は、「入れ替えという考えは良いけど、下に厳しくするようなスタイルだと白けてしまうのでは。これは、役員からやったほうが良いね」という反応でした。その瞬間こそ役員会の雰囲気もピリっとなりましたが、その数ヵ月後の役員合宿においてこの制度を議論し、上層部から変わっていこう・・・ということで、この仕組みに辿りついたのです。「内閣改造型役員交代制度」と説明しています。

古森なるほど、組織の上層部が身軽で、透明性があって、現場感覚を持って何かを実行するという姿そのものが、サイバーエージェントの強さのひとつなのでしょうね。

曽山 経営陣が自ら変化すると決めたのは、メッセージとして分かりやすかったと思います。シンプルに、2年に1回変わるんだと。「経営陣である僕らが変わるんだから、みんなも変わるよね。」ということです。まず、上が変革をサボらないことが大事です。

古森組織の風景として、すがすがしいですね。

新事業立ち上げと若手育成との好循環

古森 ちょっと話を戻しますが、先ほど出てきた子会社を使った「決断経験」の仕組みについてです。社内ベンチャー的なものは、ほとんどの大企業が過去にトライしていますが、そんなにうまく機能しなかったケースが多いと思います。差し支えない範囲で結構ですので、サイバーエージェントさんで子会社が生まれて行くメカニズムをお伺いできますか。

曽山 そうですね、新しいビジネスモデルを作っていくメカニズムには、大きく二つあります。一つは、社員本人が「新規事業プランコンテスト(ジギョつく)」にアイディアを出すという形ですね。もう一つは、新規事業案を役員間で対戦し、実施する事業を決めるという形です。正式には、「あした会議」と言います。

古森 現場発と、経営陣発の2ルートですね。

曽山他にも、役員会もしくは役員合宿の場で個別に議論をするもの、あるいは、内外からの直談判的なものも多少はあります。

古森 実際のところ、それらのルート別に事業立ち上げ後の傾向のようなものはあるのでしょうか。

曽山 そうですね。事業は生ものですから確たることは言えませんが、結果を見ると、一番功を奏しているのは役員対戦方式の「あした会議」です。2006年からその原型がスタートして、その後年に1回くらいのペースで開催しています。当時格闘技「K-1」が話題になっていたこともあり、「トーナメントのデスマッチというのも面白いかもしれない」ということになりまして。役員ごとに経営幹部数名とチームを組んで、コンテストの結果順位を公表します。1位から7位(注:藤田社長は審査員になるため、バトルに参加する役員は7名)の順位が出るので、良い刺激になります。

古森 ここでも、上層部の活動が見えやすいという特徴が出ていますね。

曽山 役員はもちろんみな1位を目指しますが、「7位にはなりたくない」という人間の心理も働いているはずなのでとにかく真剣勝負です。一人の役員が3~4人、チームに入れる幹部層のドラフト会議をやって、その人選もそれはもう一生懸命です。ネットに詳しい人は誰だ、ビジネスモデルを作るのがうまい人は・・・という感じで、チーム作りからバトルは始まっています。

古森 結局、そういう場面で、次世代の人材にも自然に脚光があたっていくのでしょうね

曽山そういうことになります。そもそも、勝敗を賭けたバトルに参画する仲間を募るにしても、優秀な人材がどこにいるのか、常日頃から見ていないと出来ないわけです。結果を公開して、役員も本気でやる中で、人材への目線も本気度が増していきます。

古森その後の実際の事業立ち上げは、どうなるのですか。

曽山 当社は速いですよ、その点は。前回の事業アイディアコンテストは昨年9月に開催したのですが、結果として19個のサービスもしくは事業・会社を作るアイディアが決議されました。それが9月で、年末の段階で3つの会社が既に立ち上がっています。法人設立の登記も行い、銀行口座も作って、フル稼働できる会社がこのスピードで立ち上がります。しかも、すでに成果が出ているものもあります。

古森 それは速いですね。そういうのを見せていくと、新規事業のアイディア出しの議論そのものに対して、社員の皆さんが現実味を感じるようになるでしょうね。

曽山 そう思います。ちなみに、色々なルートがある中で、役員対戦から出てきた事業は、立ち上げ後の業績も良好な場合が多いです。厳しい目線で見て期待できそうなものを迅速に立ち上げて、そこに若手人材を投入して、どんどん経験を積んでもらうという営みを続けています。

古森そういう場面で若手人材は、どのようにして選ばれるのですか。

曽山そこは、「ジギョつく」の活動が生きています。「ジギョつく」の取り組みがあることで、若手がどんどん事業を考える、手を上げる、という風土が出来ています。実際に「ジギョつく」で勝って子会社や事業部を立ち上げて自分で経営に入る若手もいますし、事業化そのものが見送られた場合でも、その人材は他の新規事業案件で子会社経営に抜擢されたりします。

古森 組織全体に、「新しいことに本当に挑戦するんだ」という遺伝子があるようですね。

曽山 そう思います。半年間で250件以上の新しいアイディアが出てくる会社になっています。また、それらを決して強制された雰囲気の中でやるのではなくて、ものすごい盛り上がりの中でやっています。

古森 実のなりそうな事業を経営層が本気で考え出し、「ジギョつく」で鍛えた若手がそのアイディアの実行に飛び込んでいく。それが若手に豊富な「決断経験」を与え、また人が育つ・・・。好循環が動いていますね。

曽山 「ジギョつく」で不十分とされたアイディアでも、役員は覚えていますから、「あした会議」の中でそれらのアイディアが再度レベルをあげて活用されるという場合もあります。事業と人がともに昇華していくようなイメージですね。特にこの1年くらいで、本当に良くつながってきたという印象です。

古森 素晴らしいアセットですね。そういう組織内の人と知恵との生きた流れというのは、無形資産の最たるものだと思います。

曽山 一つの参考として、「Great Place to Work(GPTW)®」のサーベイ結果で見ると、当社は働きがいのある会社という位置づけになっています。特に、「一体感」の指標が良いですね。経営に対する尊敬や信用に関わるスコアもあがってきています。トータルの数字も、前年度と比較して大きく伸びました。

古森 ちゃんとそういうところにも、結果が出ているのですね。