C-Suite Talk Live第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第40回(3/4)

第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん
Calendar2011/02/07

「白け」への感度を鋭敏に ~ 月に100人と会う

古森会社の持つ遺伝子を大事にしていくために、人事として特に意識していることは何でしょうか。

曽山 まず、社長の藤田が常にアンテナを立てているのは、メンバーの感情です。「白け」への感覚ですね。何かを考える際に、単にロジックではなく、「これを人々はどう感じるだろうか」「現場が白けないか」という視点を非常に大事にしています。人事も同じことを意識しています。

古森 なるほど・・・。ロジックばかりでなく、感情面にも経営の感覚を研ぎ澄ませているわけですね。

曽山 「白け」に対するアンテナが高くない人事は、ほとんど機能しないですね。組織が大きくなると、経営者だけではカバーしきれない面も出てきます。人事が経営者と同じ感覚を持って、現場をしっかり見ていかなければなりません。

古森 しかし、組織内の「白け」を鋭敏に感じるというのは、ある種の特技ですよね。何かを検討している際に、「あ、これは現場が白けるな」という直感がスッと降りてくるかどうか。私は、「組織との架空対話能力」という言い方をしていますが、かなり有機的に組織を知らないと出来ない技だと思います。曽山さんの場合、どのようにして感覚を研ぎ澄ましているのですか。

曽山 とにかく、現場の人々と食事や飲み会によく行きますね。行ったら必ず、「何か困っていることある?」という質問をします。非常にシンプルですが、これを愚直に続けていくと、空気のようなものが分かるようになります。「本音はもっと他にあるのだな」とか、「本当はこう感じているのだな」といった感じで、自然に本音のありかが分かってきます。食事や飲み会以外の場面も含めて、出来るだけ直接社員の皆さんと会って話すようにしています。

古森常時、どれくらいの人数と会っておられますか。

曽山 そうですね、直接対話の形で、月に100人は会っていると思います。

古森100人!

曽山 面談もありますし、毎週ランチや飲み会をセットしていますので、1週間に20~30名からコンスタントに話を聞いています。人事を任せている大型の子会社を除けばサイバーエージェントの単体と子会社で1,200名くらいの社員がいますから、年間に全社員に相当する数の方々から話を聞くことが出来るわけです。その中で、「何か困っていることある?」をずっと繰り返す中で、「あ、これが白けなのか・・・」とか「こんなことに困っているのか」というのが分かるようになります。

古森 理屈ではなくて感覚的に人々がつまらないなと思うこと。白けるという生々しい現象。それに自分で直接触れ続けることで、感覚を磨いておられるのですね。足で稼ぐ人事ですね。

曽山 結果的には、この感覚を持ったほうが経営・人事の意思決定精度もあがるわけですから、人々と向き合うことに時間をつぎ込んだほうが良いのです。

古森 対話というのは、サイバーエージェント内でカルチャーの一種になっているのでしょうか。

曽山 そうですね、「ダイアログ」を重視していることは確かです。子会社はどんどん出来ていきますが、いわゆるピラミッドという感覚ではありません。社員数5名から10名、多くても400名程度という組織の集合体です。400名規模でも、その中で20人ごとに部署単位で分けてPL(注:損益計算書)を分けて運営しています。そういう意味では、当社は小集団組織の集まりです。それぞれの単位の中で、ダイアログを重視しています。

古森 ダイアログが生まれやすいようにすべてを設計したわけではないかもしれませんが、サイバーエージェントの組織は、「白け」も含めて、人々の感覚が通じあえるような構造になっているのですね。

曽山 そうしようとしています。改善の余地も多々ありますが。

古森集団内のダイアログ・マネジメントというのは、21世紀の経営・人事分野における大きなテーマだと思います。ミッション、ビジョン、価値観、戦略があって、組織・職務の設計があって、そこに人が配置されるというロジカルな人事戦略の流れは普遍的ですが、一方で、生身の人間が感情も含めて自然に機能できる単位は何か?というのも大きな課題です。ロジックと感情の両面から見ていくことが、本当に大事だと思います。

曽山 心理的なものを踏まえたアプローチは、すごく意識しています。その流れに沿って、最近は社員の顔写真を見ることを重視し始めました。

古森 顔写真?

曽山 気持ちとしては、「とにかく全員知りたい」と思っているわけです。人事システム内に「顔なび」というシステムを作って、グレードと年次とか、部署と年次などで検索条件を入れると、社員の顔が出てくるようにしました。それで、「あ、この部署のこの人は、まだ会ってないな」と気づくと、出来るだけ早くその人に会いに行くようにします。これを、文字情報だけでやらずに、顔写真も見ながらやるというところに、意味があるのです。

古森 顔写真を見ることで人事としてもイメージが湧きやすいでしょうし、声をかけられる側も、人事で顔と名前が一致しているということが、アテンション感覚を生むでしょうね。そういうデータベースはわりと簡単に作れてしまいますが、それを実際に人事のトップが真剣に見て、行動につなげているというところが素晴らしいですね。さすが「アメーバピグ」* の会社ですね(笑)。

* サイバーエージェントが運営するブログ、「Ameba」内で作成可能な個人ごとのアバター

人事は「こねくり回し」に注意

曽山 もう一つ、人事の担当役員として非常にこだわっているのは、「こねくり回しの罠にはまるな」ということです。今年の年頭に開催した人事本部メンバーとのミーティングでも、改めてこの点はメッセージを出しました。

古森 「こねくり回しの罠」、ですか。

曽山 例えば、「マネジメントの基礎を伝えよう」という仕事があるとします。まずは常識的に分かっていることをまとめて渡せば良いのに、調査して分析して長い時間をかけて、その挙句に伝えられるようなものにならない・・・という状況は、コミュニケーションが不足している会社にありがちな姿でしょう。丁寧さと馬鹿丁寧さとは、意味が違うのです。

古森 よく分かります。

曽山 それから、馬鹿丁寧になって物事が進まない場合というのは、えてして上司の責任です。ですから、「こねくり回しはするな」ということを、新年の初めに改めて伝えたのです。人事制度にしても、「作りこみすぎない」ということを非常に重視しています。基本的なことを決めたら、あとはやるのみです。。

古森 実践重視、ですね。

曽山 これとセットになっているもうひとつのポイントは、「短期間でやる」ということです。実行までのプランニングを短期間でやるのと、実行スパン自体も短期間にします。例えば、先ほど出てきた「ジギョつく」も、250件の企画の審査を2週間くらいの間と決めて一気にやります。2ヶ月かけると、やれることが増えて、仕事を無駄に増やしてしまいます。要するに良いアイディアを選べばいいわけですから、それ以上に無駄に詳細化しないことが重要です。

古森 実践重視ということで一貫していますね。本質をおさえたら、細部を割り切るのも力ですね。

曽山 際限なく分解していくのではなく、本質を「simplify」する力が大事です。その力が高ければ高いほど、ビジネスフィールドで活躍できると思っています。人事も、そうありたいと思います。あとは、「オリジナルを出す」という事にもこだわりがあります。

古森人事にも、事業としての強さを求めている・・・という印象ですね。

曽山「当社の強みは、オリジナルなものを出すことだ」というのは、常に意識しています。ところが、管理部門というのは、えてして「正解」を出したがるものです。ですから、人事に限らず管理部門全体で、「オリジナルなものを作ろう」ということをテーマにしています。サイバーエージェントの事業全体と管理機能のベクトルをあわせたいよね、ということで、そう決めたのです。