C-Suite Talk Live 第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第40回(4/4)

第40回 株式会社サイバーエージェント 取締役 人事本部長 曽山 哲人さん
Calendar2011/02/07

価値観は刺さる表現で語る

古森(対談に使った会議室の壁に貼られている)「本社機能のミッションステートメント」の中でも、個々人として本社機能に在籍していることの意味を問うようなメッセージが目立ちますね。「ひとり新陳代謝」とか、「有能の定義」とか。「本社機能のミッションステートメント」というものが存在すること自体レアケースですし、ここまで生々しく書かれたものを私は拝見したことがありません。これは、どうやって作ったのですか。

曽山 各部門から意見を集めて、本社機能のリーダー達で議論して、最終的に経営レベルで固めました。当社には珍しく、価値観をまとめる活動をボトムアップでやりました。議論していくプロセス自体に、皆の意識を高める意味があると考えたからです。

古森 なるほど、巻き込みながら生み出していったのですね・・・。とにかく、書かれている文言の直接感、刺さり具合に独自の色を感じます。道端に落ちていたらどこの会社のものか分からないような抽象的表現ではなくて、もろに、グサッと来るような印象を受けます。

曽山 サイバーエージェントとしてのミッションステートメントも、そういうつくりになっています。あれはライブドア事件の後に作りましたので、「ライブドア事件を忘れるな」という言葉が入っていたりします。表現やデザインも含めて、刺さらないと意味がないので・・・。組織運営においても、サイバーエージェントらしさを追求しています。

古森 こうして見ると、経営の最上位概念の中に、組織・人事分野のこだわりが表現されていますね。「チーム・サイバーエージェント」、採用、就業環境・・・。そして、「若手の台頭を喜ぶ組織」というところで、私には特にグサッときます。「喜ぶ」、これは感情の表現ですね。「重視する」とか「尊重する」とかではなくて、「喜ぶ」と言う。すごいです、この表現は。

曽山 これらはすべて、「21世紀を代表する会社を創る」というサイバーエージェントのビジョンに沿ったものです。ビジョンそのものはいくつかあったのですが、会社設立後5年でひとつに絞られました。そこから、会社が大きくなっていくにしたがって、企業の遺伝子に関する表現を具体化してきた・・・という流れです。

古森 その過程で、安易に体裁の良い表現を使って、大事なものを薄めてしまわないところがいいですね。むしろ、どんどん濃く、しつこく、読み手にグッと刺さるようになっているように感じます。

皆が本音を言い、ビジョナリー・カントリーを創ろう

古森 サイバーエージェントのミッションステートメントの中で、もう一つ目に焼きついたのが、「本音の対話なくして最高のチームなし」という部分です。先ほど組織内の対話、ダイアログ・マネジメントの重要性の話が出ましたが、それが「本音」であることが大事なのですよね。

曽山 まさにその通りです。個人個人が、自己の志や思いを持って、それを自分なりの言葉や方法できちんと語ること。まずはそこからです。人の成長という角度から見ても、ビジョンや志を持つ人のほうが、持たない人よりも育つ確度が高いという事実を、過去5年間の人事経験で体感しました。もちろん、誰でも成長はできます。しかし、「私はこういうことをやるぞ」と思っている人のほうが、より早く確実に伸びていきますね。

古森 ダイバーシティの議論にも通じる面があります。ダイバーシティというのは、社会的善の側面と、企業の競争力の源泉という二つの意義がありますが、競争力の観点では、単に色々な属性の人が混じっているだけでは強さになりません。考え方の違いがあっても、それを口に出さないと組織は実質的には多様化しないのです。特に、日本人の組織はそうです。私は、「オピニオン・ダイバーシティ」と呼んでいますが、個々人が考えを口に出して初めて、組織は強くなっていきます。

曽山自分の軸のようなものが、自分の中で統合されて形になっていくスピードには、個人差があります。時間がかかる人は、かかるわけです。でも最低限、「自分の思っていることを飲み込まない」ということはできますよね。どんな小さいことでも、その都度、思ったことは飲み込まないようにする。それが大事です。意思を表明するというのは、実は「決断経験」の一種なのです。だから、それをいつも実践していくと、すごく成長する人になれます。

古森なるほど。たしかに意思表明というのは、小さなことでも「決断経験」の一種と見ることが出来ますね。えてして人間の本音というものは、汚い面があったり、かっこ悪かったりするのです。本当はやっぱり一番になりたいとか、お金持ちになりたいとか、有名になりたいとか。そういうものも含めて、自分の本音に嘘をつかずに、恐れずに表明せよということですね。

曽山 中国やインドの人に接する機会が増えていますが、彼らは、そのあたりの本音はものすごくハッキリしていますよ。世界トップになりたいとか、非常に明確に自分の思うところを表明しますね。意思を明示することで生まれてくる力というのは、普遍的だと思います。ちなみにサイバーエージェントの企業としての価値観は、例えば中国のアグレッシブなベンチャー経営者からも好意的に理解されています。企業も個人も、思い切り、恐れずに伝えていくことが必要ですね。

古森 「最近の若者は、あまり自己主張をしない」という声も多いですが、どう思いますか。

曽山 新卒という視点で言いますと、学生というのは、実は、毎年それほど変わっていないと思っています。夢があって、「こういうことしたい」という思いは、学生はとても立派なものを毎年抱いています。逆に、社会人がみなカッコよく見えているかというと疑問ですね。夢や意思の希薄な社会人が多くなっていることもあって、学生の成長機会がつぶされているのが実態だと思います。

古森 これまた、スパーン!と独自の見解が飛んできましたね(笑)。なるほど、そう感じますか・・・。

曽山 学生というか、われわれも含めて今の若い世代というのは、世の中の損得にも非常に感度が高いと思います。昨今の日本の社会で、バブル経済やリーマンショックなどの現実的損得がたくさんあることを見聞きして育っていますから。ですから、自分の夢や価値観、意思などを表明して損になる環境だと思ったら、賢いから言わないわけです。その証拠に、サイバーエージェントの組織に接すると、学生の方たちもすぐにチャレンジが認められる環境に気づいて、色々なことを口に出すようになりますよ。皆、本当は語るべきものが胸の中にあるのです。

古森 「ここは、自分の言葉を口にしても大丈夫な場所だ」ということが、分かるのでしょうね。何しろ、ミッションステートメントの中で、「本音の対話なくして最高のチームなし」と大真面目に宣言している会社ですからね。

曽山 若い世代は、自分の言葉を口に出せる産業、会社、環境に飛び込むべきでしょう。そういう動きが加速していけば、日本という国は「ビジョナリー・カンパニー」ならぬ「ビジョナリー・カントリー」になれると思います。皆、本当は心の中に思うところがあるわけですから。

古森 「ビジョナリー・カントリー」、いい言葉ですね!

ああ、もう時間がきてしまいました・・・。経営、人事の話から個人のあり方に至るまで、色々なヒントを頂いたように思います。インターネット関連で創業経営者が健在という特殊性はあるにしても、それ以上に普遍的なものを、たくさん感じることが出来ました。有難うございました。

~ 対談後記 ~
曽山さんとお会いすると、いつも爽やかで明るい気持ちになります。「この人は、自分という人間ごとまっすぐに仕事に突っ込んでおられるな・・・」という印象です。いつも感性のアンテナが立っていて、いつも考えていて、いつも動いていて、いつも何かを発信している人。日本の人事担当役員の中で、私の存じ上げる限りでは、最もアクティブな方のお一人だと思います。

曽山さん、有難うございました。