C-Suite Talk Live第41回 オーウェンス コーニング ジャパン 株式会社 石井 秀樹さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第41回 オーウェンス コーニング ジャパン 株式会社 石井 秀樹さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第41回(2/4)

第41回 オーウェンス コーニング ジャパン 株式会社 人事総務部 部長 石井 秀樹さん
Calendar2011/03/01

「ものを言う」ことをリスペクトする文化

古森 仕事とともに、パーソナルライフのほうで、何かお気づきになることはありましたか。

石井 ありましたね。うちには小学校と幼稚園の子供が2人いましたので、現地校に通わせました。その学校で私もボランティアをやったり、土曜日は補習学校で理事をやったりしました。当時、現地にエドウィン・ライシャワーの奥様の松方ハルさんがおられて、地元の高校に日本の書籍を寄贈したりしていたのも印象深かったですね。アジアではなく、日本について、色んな情報発信をしておられました。

古森 そういうボランティア的な形での教育機関への献身ですとか、海外文化の自主的紹介活動などは、米国では本当に盛んですね。「自分はこういうことをやろう」と思ったら、皆さん自分でどんどん動いていきますね。私は東海岸の居住経験しかないですが、東でも同じような景色をよく見ました。

石井 驚いたこともありました。当時小学校1年だった息子が、ある日、私の使っていたアップルのPCを突然「使いたい」と言ってきたのです。小学校のレポートを、PCを使って書きたいと。聞けば、友達はほとんどがそうやっているという話でした。1990年代前半の当時、まだ日本ではPCもEメールも本格的には普及していなかったその時期に、ほとんどの家庭に家族の人数分のPCがあったのです。これには、本当に驚きました。

古森 さすがテレコムバレーですね。

石井 たまたま住んでいたところが、米国でも特別な場所だったという事情もあったでしょう。しかし、それにしても彼我の違いは明白でした・・・。教育制度にも、大きな違いを感じました。

古森 教育制度の違いは、今でもよく指摘されますね。

石井 日本では、先生が「今日はここまでやりましょう」と決め事をしてやりますね。米国では違いました。あるとき、現地の高校から「1時間授業をやって欲しい」ということで頼まれまして、「インターナショナルビジネス」という題目でお話しする機会がありました。60分くらいのセッションなので、90分くらい話せる資料を作って臨みました。しかし、始まって3分くらいでもう質問が出てきたのです。

古森 質問出ますよね・・・。

石井 それで、そこからは終始Q&Aで最後まで進みました。準備した90分相当のプレゼンテーションを完了することなど出来ませんでしたが、むしろ議論を活発にすることで充実したセッションになりました。San Diego State UniversityにJapan Study Instituteという研究室がありまして、私はそこのボードにも入っていたので、3時間くらいの講演を頼まれたことがありました。それで、5時間分くらいの資料を準備して行ったのですが、始まって5分くらいでやはり質疑応答・・・。

古森 推して知るべし、ですね(笑)。

石井 結局、そこからはほぼ3時間、質問攻めで冷や汗をかくような思いをしました。でも、とても新鮮な印象を持ちましたね。ショッキングでもありましたが。「米国では、ものを言い、議論をすることがすべてのベースなのだな」ということが、皮膚感覚で分かりました。米国の人材は、ものを言うこと、議論することがリスペクトされる文化の中で育てられるのです。

古森 良し悪しの話ではないですが、その点に関して日本との違いは大きいですね。

石井 典型的にそれを感じたのは、子供が日本に帰ったときの学校の先生の反応です。先生からは、「おたくのお子さんは落ち着きがない」と言われました。「おたくの息子さんはすぐに質問をするから、授業で予定されたものの進行が妨げられて困る」ということでした。

古森 ああ、やはりそうなりましたか。私自身も似たような経験があります。生まれて初めて転職活動をしていた頃、ある証券会社の人との面接の場で、良かれと思ってどんどん積極的に質問したのです。そうしたら怒ってしまわれて、「あなたは面接の常識を勉強してない!帰ってくれ!」と言われました。人生の記憶に残る、「採用面接からの途中蹴り出し」という事件でした(笑)。

石井 苦労されましたね(笑)。

入社式の是非~オピニオン・ダイバーシティの視点

古森 この「個を出す、出さない」の話は、この対談シリーズでも過去に何度も浮上してきたテーマです。多くの日本企業がグローバル経営に舵を切っていく中で、どうしても避けて通れないテーマの一つです。企業という場では、どういうところが変わりどころでしょうかね。

石井 私がひとつ思い当たるのは、特に大企業の場合ですが、「同期意識」というものの功罪ですね。日本の企業の多くが、新卒から育てて各年次の「同期」を形成することで組織を作ってきたという歴史があります。その「同期」というものの存在が、これまで組織の力になってきた面があったと思うのですが、グローバル経営を考えた場合、今はマイナス面も出てきていると思います。

古森 「同期」、たしかにありますね。私も最初の8年半は日系企業にいましたので、よく分かります。また、いまだに同期という言葉にノスタルジーを感じますし、実際に当時の同期の仲間とは交流が続いています。しかし、その「同期」があだになる場合もあると?

石井 個人がはっきりと意見を言って、場合によっては対立も辞さずに物事を議論していく際には、「同期意識」が邪魔になることもありませんか。

古森 なるほど・・・。たしかに、「あ・うん」の呼吸で、自然に何かを遠慮するような場面はありますね。「ここで対立すると、あの暖かい同期ネットワークの中に住みにくくなる」といったような、共同体の和を重視する思考回路が作動しそうです。

石井 日本に閉じた組織であれば、それはそれで良いのかもしれません。しかし、仕事の中に普通に海外が絡んできて、国内にいても今後はグローバルという言葉を強く意識せざるを得ない時代です。そういう時代に、大半が日本人だけで構成された「同期」なるものの意識が、果たしてプラスに働くものかどうか。私は、今日的視点では、むしろマイナスのほうが大きいと感じています。

古森 異なる意見が出にくい風土を醸成している、一つの要素かもしれませんね。

石井マーサーさんが以前から言っておられるように、ビジネスの場面では「オピニオン・ダイバーシティ」、つまり、発言内容の多様性が大事ですよね。人の属性や思考がいかに多様であっても、それが実際に仕事の場で発言されないと意味がない。

古森 まさに、そう思います。

石井 もし、「同期意識」がそれを阻む要素になっているのであれば、あえて変革のために捨て去るという経営判断も必要です。もちろん、企業ごとに課題も変革のあり方も違いますので、個々の経営者が判断すべきことですが。

古森 例えば、「同期意識」のマイナス面を変えていくために、どんなことが考えられますかね。

石井 私は、入社式をやめてはどうかと思います。

古森 入社式ですか、なるほど・・・。

石井 入社式というセレモニー、もちろん良い面はあるのですが、あれが「同期意識」を植え付ける最初の一歩であることは間違いないと思います。

古森 それは、企業側も意識してやっている面があると思います。

石井 同じ日に入社した「同期」としてまとまって進んで行くマインドセット自体が、日本の組織で個性が出にくくなる最初の一歩になっているのではないでしょうか。

古森 私の視点で入社式が良くないのは、むしろその後に出てくるギャップです。入社式では、社長や役員が「出る杭になれ」とか「自分の軸を持て」とか言う一方で、その後配属先に赴任してみたら、そこでは思いっきり個性をつぶされる場合が多いのですね。多くの新入社員が、そういうことを経験して「オトナ」になり、10年も働けば「角のとれた立派な社会人」になるという仕組みです。

石井 そういうことを繰り返していては、これからのグローバル競争には勝てないと思います。入社式というのも一つの切り口に過ぎず、要は、個性をいかに生かした組織マネジメントをするかを真剣に考えるべきだ、ということです。