C-Suite Talk Live第42回 三菱化学株式会社 取締役 常務執行役員 大平 教義 さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第42回(3/4)

第42回 三菱化学株式会社 取締役 常務執行役員 コンプライアンス推進統括執行役員 広報室、内部統制推進部、総務部、人事部、人材・組織開発部分担 大平 教義さん
Calendar2011/05/12

人事は価値観の語り部たれ

古森 少し視点を変えまして、人事機能自体の育成についてお話を伺います。グループ全体の人事分野を見ておられる立場から、これからの人事機能をどのような方向に導いていかれるのでしょうか。

大平 それは非常に重要なテーマですね・・・。人事部門以外でも言えることなのですが、昔とは組織の性質が違いますので、その中でどのように人を育てていくかです。組織の性質といいますのは、端的に言えば上司や先輩と若手の間でのOJTの量や密度の違いです。

古森 以前ほどしっかりしたOJTが生まれにくい組織環境になっているということでしょうか。御社に限らず、色々な企業でその話を伺うことがあります。

大平 昔の話を何でもよしとするつもりは、ありません。しかし、昔の企業組織で良かったと思う点は、上司や先輩からの濃密なOJTでした。人事部門であれば、人事の社会的意義、当社における人事の役割、あるいは、そもそも働くとはどういうことか・・・など、色々なことが現場で有機的に語られていました。私も、そのようにして育てられました。

古森 以前に比べると、世界経済の動きなども含めて、企業経営の前提条件が高頻度で変わっていく時代です。内部統制・コンプライアンス関連の対応に割かねばならない時間も、ものすごく増えましたね。そんな中で、人員を大幅に増やすことは財務的に難しいわけで、多くの組織が有機的なOJTの余裕をなくしていると思います。

大平 企業の規模も大きくなっていきます。三菱化学でも約一万人の社員がいて、その一人ひとりが自分の仕事にどういう思いを持って向き合うか・・・。それ次第で、会社全体の業績は大きく変わると思います。組織に余裕がなくなっていくのが宿命であったとしても、やはり現場のOJTで有機的に語り継ぐ営みは守っていかなければなりません。

古森 人事が、そのためにどう自らを変えていき、どう会社全体に動きを起こしていけるか。真価が問われる時ですね。

大平 ひとつのきっかけは、会社としての価値観の浸透です。今、私たちは「KAITEKI」という概念を掲げて、全社的に企業として目指すべきものを語りかけています。おりしも2011年はキュリー夫人がノーベル賞をとって100年目にあたり、「世界化学年」とされています。その節目に、私たちも企業としての存在意義を見つめていきたいと思います。地球温暖化にしても資源問題にしても、今地球が直面している問題も、きっと化学の力で解決できるものがたくさんあるはずです。

古森それを、人事としてどのように組織全体の動きにつなげていくのでしょうか。人事がコミュニケーター、伝道師のような役割を担わねばなりませんね。

大平そうです、価値観の語り部ですね。まず今は、ホールディングスとして全社レベルで意識調査(モラール・サーベイ)を計画しているところです。「APTSIS 15」で掲げた色々な方向性に関して、きちんと状況をモニタリングしていく一環として、グループに集う人々の意識も可視化していく必要があります。まさにその調査の設計をしているところです。

古森しっかりした意識調査というのは、単なるアンケート集計とは違いますね。練りこまれた質問というのは、それ自体が、会社としてのメッセージだと思います。会社が何を聞いているかを見ることで、回答する社員の皆さんはおのずと会社の価値観を知るわけです。経営として真剣勝負の調査であり、たいへん重要な活動だと思います。そういう意味では、その設計作業自体、人事部門としての成長機会でもありますね。

大平 そのとおりです。こうした活動を地道に積み上げていって、やがて価値観が全社にカルチャーとして根付いていけば、結果として業績にも好影響が出ていくと思います。最終的には、会社に集う人間が業績を作っていくわけですから。そのための活動をしていく中で、人事機能もまた成長して行くはずです。。

古森人事機能の育成というものがどこかに分離して存在するのではなく、まさに、これからあるべき人事の役割を試行錯誤していく実務の中にこそ、真実があるのですね。