C-Suite Talk Live第44回 G&S Global Advisors Inc. 橘・フクシマ・咲江さん

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第44回 G&S Global Advisors Inc. 橘・フクシマ・咲江さん
Calendar2011/10/25
C-Suite Talk Live 第44回 ~対談エッセンス~
  • ようやく始動しつつある「本社のグローバル化」
  • Globalization ≠ Westernization
  • ダイバーシティ問題の根源はリスク回避マインド
  • グローバル人財は「外柔内剛」を目指そう

ようやく始動しつつある「本社のグローバル化」

古森 こんにちは。以前から、是非この対談にフクシマさんに出て頂きたいと思っていたのですが、ついに叶う日が来ました。お忙しい中で、本当にありがとうございます。フクシマさんと言えば、やはり「グローバル化」ですが、本日はその中でも「グローバル人財」に関わる視点に軸を置いてお話を伺いたいと思っております。すでに色々なところでお話しになっておられますが、今日はよろしくお願い致します。

フクシマ すみません、グローバル人財としつこくって(笑)。

古森 いえいえ、もっとどんどん発信して頂きたいですね。マーサーの仕事も、日本企業のグローバル化における組織・人事、人財マネジメントの仕組みや仕掛けづくりに関わるものが非常に多くなっています。その中で感じますのは、日本の本社にいる人々のマインド変革が鍵であり、ボトルネックでもあるなということです。

フクシマ その通りですね。

古森 これは本来、組織論の方でも手を打たねばならない問題なのですが、「日本にあるグローバル本社」と、「日本市場を担当する日本支社的な組織の機能」とが、混在した状態の企業が多いのです。経営トップ層はその問題を理解していますが、組織全体としての動きはまだスローです。フクシマさんの見ている景色の中では、どうですか。

フクシマ そうですね・・・。私の場合は、コーン・フェリーで約20年間のエグゼクティブ・サーチ、いわゆるヘッドハンティングの角度から企業と向き合ってきましたので、センシティブな話もたくさんあります。ですが、おっしゃるように、日本企業の本社人財(私は、10年前から市場価値のある資産としての人という意味で人財という字をつかっています)の意識変革というのは、あるべき姿に照らせば10年単位で遅れてしまったという印象を持っています。

古森経済同友会での活動などもふまえて、お話し頂ける範囲で結構ですので、フクシマさんのリアルな視点を伺えればと思います。

フクシマ サーチの仕事を始めた90年代から見れば、人財市場も大きく変化してきています。最初の15年くらいというのは、ほぼ外資系企業が日本法人の経営者を探すお手伝いでした。多くの場合、他の外資あるいは海外に強い日本の企業から外資へトップを引き抜く仕事でした。でも、なかなか外資が望むような要件をもった日本の人財が見つかりませんでした。

古森 でしょうね・・・。

フクシマ もともと日本のシニア層は転職に対する強い抵抗感があったのですが、それに加えて、やはりグローバル企業の組織の中で成果を出せるような人財が少ないという事情がありました。これは、日本のシニア層の人財が「悪い」という意味ではなくて、求められるものとのフィットの問題なのです。例えば、「日本法人の経営を成功させて、次にアジア地域の社長になれる人を」というリクエストにフィットする人は、本当に少なかったわけです。

古森 今も多くはないでしょう。

フクシマ はい、多くはないです。ただ、ここ数年の間に、だいぶ状況は変わってきました。2年半前から、日本企業の社長や会長、グローバル人財の要件についての調査をしています。今までに62名の方々にインタビューして、二つの質問をしました。一つは、「今現在の状況の中でご自分の後任をアポイントされるとしたら、どういう要件の優先順位づけをしますか」ということ。もうひとつは、「将来、本社の5割以上が外国人になったと仮定した場合、その要件が変わりますか」ということです。

古森 なるほど、簡潔にして的を射た質問ですね。

フクシマすると、最初の質問には皆さん比較的スラスラとお答えになるのですが、二番目の質問になると「ん?」と首を傾げられることが多かったのです。「では、本社の外国人社員数は、現在は何人ですか」と一歩下がって現況をお伺いしてみても、やはり「いや。。。」という感じで・・・。そういう場面がかなりありました。

古森 2年半前の段階では、まだ社長や会長のレベルでも、そういう状況があったのですね。62名のインタビューが日本の全体像をそのまま語るわけではないでしょうけど、超大手企業のトップ62名ですから無視できない示唆がありますね。それが、最近では状況が変わってきたと・・・。

フクシマ そうなのです。特にここ1、2年で、本当に急速に変わってきています。以前調査にご協力くださった方々のご意見も変化しています。経営トップのイニシアティブで海外との人財交流を進めたり、新卒採用直後の人財を海外にどんどん送っていたりと、活発化してきましたね。このスピード感というのは、10年以上ずっと動かなかったものが、急激に動き出しているという印象です。

古森 やはり経営トップともなれば、「人財のグローバル化、待ったなし」という必然性に迫られているのでしょうね。

フクシマ そうだと思います。

古森 その少し下の職位層では、どうでしょうか。私はよく、経営トップがグローバル化の旗を振っていても、実務層が上手に形骸化させていく現場を目撃します。悪気なく、ある種の反射的な反応として、そういう風になっていきます。それは、冒頭に申し上げた言葉を使えば、「日本市場を担当する日本支社的な組織の機能」の抵抗ですね。一方、経営トップは「日本にあるグローバル本社」を作ろうとしている。その相克です。

フクシマ 同友会でお付き合いさせて頂いている方々の中でも、ご自分がグローバルな経験をもつ経営者の方がふえています。例えば、現代表幹事の長谷川さんもそうですね。前代表幹事の桜井さんもロンドンのご経験があったりして、危機感をお持ちです。経営トップ層の認識というのは、かなりグローバル化に適応していると思います。一方、執行役員から先の現業のリーダー層というのは、どうでしょうか。おっしゃるとおり、まだ経営トップと同じ目線にはなれていないことが多いかもしれません。

古森 現業を持っている人々は、その立場なりに反応している面もあります。頭では、将来のグローバル化のことや、それに照らして今やらねばならないことが理解できていると思います。ただ、実際に日々の仕事がある中で、「今日から動きを変えるぞ」とはなりにくい。中には、「グローバル化なんていう前に、日本のことをもっと大事にしろ」という声もあります。これも、「日本市場を担当する日本支社的な組織の機能」の話と、「日本にあるグローバル本社」の話がうまく整理されない中で起きていることです。

フクシマ たぶんその辺が一番重たい課題になるでしょうね・・・。ただ、日本企業も変化の速度は上がってきていると思いますよ。2005年あたりからでしたか、日本企業でも、執行役レベルでの外部人財の登用を始めています。当時はちょうど、ベンチャーキャピタルや投資ファンドなどが投資先でドラスティックな人事を数多く実行した時期でもあり、それもあって、前例にとらわれない動きの素地が生まれたのだと思っています。

古森 その素地の上で、ここ1~2年のグローバル組織作りや人財マネジメントの変化も起きている・・・というご認識ですね。世界の変化は日本の事情とは関係なく進んでいきますので、このせっかく生まれつつある機運を本当に加速させたいですね。

フクシマ 最終的には、グローバル化に関するマインドセットをどう変えるかだと思います。2年半前にそういう話をした方と再度お話をしてみると、その頃と今とではかなりお考えが違います。この2年間、とくに3.11震災が起こった後の緊急対応の中で生まれたスピード感というものは、結果的には日本企業の変化に火をつけましたね。

古森 「危機感」ではなく「本当の危機」になって、ついに大きく動き出した・・・。

フクシマ その感じはありますね。外はどんどん動いているのに、日本はそれまでの延長線上に安住していたという印象があります。それが、この危機に直面して「やらざるを得ない」と言う切迫感があると思います。