C-Suite Talk Live第44回 G&S Global Advisors Inc. 橘・フクシマ・咲江さん

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第44回 G&S Global Advisors Inc. 橘・フクシマ・咲江さん
Calendar2011/10/25

ダイバーシティ問題の根源はリスク回避マインド

フクシマ まさにそうです。グローバル化の課題は、多様性をどう管理するかです。

古森 フクシマさんは、日本人の女性として、外資系企業のグローバル経営陣として活躍された数少ない人物のお一人だと思います。ご自身がまさにグローバル企業のグローバル経営に関わる中で、多様性、つまりダイバーシティについて何を思われますか。

フクシマ私の場合は、仕事の種類も会社も実績さえ挙げれば、性別や国籍は関係なく評価される環境だったことは大変幸運だと思います。ただ、世の中を見渡して思うことは、日本企業は、やはり女性の活用がまだ全然足りないということです。女性を活用できない企業に未来はありません。これまで、ヘッドハンティングの仕事を通じて数多くの人にお会いしました。その実体験から確実に言えることは、「仕事に関して言えば、男女という視点での区別は意味がない」ということです。

古森本当に多くの人と向き合って来られたでしょうから、言葉に重みを感じます。

フクシマ男性で優秀な人もいれば、優秀でない人もいます。女性でもそうです。国籍だってそうですよ。日本人でも、アメリカ人でも、中国人でも、仕事が出来る人もいれば、出来ない人もいます。そういう「属性」で人間をグループ化して見ること自体が、ほとんど意味をなさないのです。個人個人を見て、それぞれのポジションに最適な人にそれを担ってもらう。それにつきます。

古森 同感です。

フクシマ もちろん、グループとしての国民性はあります。そうした「属性」から出てくる要件もその個人の一部ですから、特徴として出てきます。例えば私は日本人で女性ですから、それぞれの「属性」が持っている傾向だとか、そういうものを内包しています。しかし、それは個人の一部の属性に過ぎません。そうしたステレオタイプの部分も、私自身固有のその他の部分も、全部包含したものが「私」という個性なのです。そういう目で他国の人と向き合ってみると、すっと気が楽になります。

古森 なるほど・・・。

フクシマ以前、コーン・フェリーのボードに入っていたときに、ドイツ人で自動車会社出身のメンバーがいました。やっぱり、とてもロジカルでカチカチした感じで(笑)。でも、それも「その人の個性の一部だ」と感じるようになったら、自分の心の中に変な壁がなくなったのです。だから、「AさんはAさんとしてお付き合いしよう」と。「その人の個性の中に色々な側面があって、でもAさんはAさんだよね」というのが自分の中で腹落ちしてから、あんまり「この人は何人だから」と考えなくなりました。

古森 ステレオタイプの部分も、その人の個性の内側の一部。たしかにそうですね。私自身を振り返っても、そうだと思います。すごくステレオタイプの日本人的なところがあるし、一方で、42年間生きてきた固有の経験・体験が作っている部分も多々あります。結局、それを全部内包しているのが「個」なんだと。

フクシマこのことに気づくというのが、人間の内なるグローバル化のプロセスの一つだと思うのです。これが体感できたら、グローバル化した世界での多様性に満ちた場所で普通に活躍できるのではないでしょうか。

古森 その話を伺って思うのは、「今とは違う世界」というのは、そこに住んでみないと分からないということです。例えば、多くの日本企業は現時点では男性マジョリティですね。多くの人が、その世界に住んでしまっています。そうすると、それとは違う世界の暮らしを想像することは非常に難しい。また、男性マジョリティが原因で何か良くないことが起きていたとしても、それに気づかないですね。気づきようがない。

フクシマ 大変居心地がいい。

古森 頭では「ダイバーシティが大事だ」と理解を示しつつも、体がそのようには動きにくい。未知の世界ですから、「もし女性が大幅に増えたら、何か悪いことがおきるかもしれない」という、変化に対する恐れのようなものが奥底にあると思います。「顧客が好まないのではないか」「職場の男性の負荷が高まるのではないか」「社員の退職率が上がるのではないか」など、色々な恐怖が・・・。

フクシマ 今は男性も考え方が変わってきていて、それこそ「育メン」も出てきている時代です。男性も人によって個性があります。「補助的な仕事をしたい」という男性もいるわけですから、「男性だからこれしなきゃ」というのではなくて、本人が本当に力を発揮できると思う仕事を選択する環境を作っていくべきです。

古森 現時点で男性マジョリティの組織に、どうやって変化のきっかけを生むかですね・・・。

フクシマ 私は、「思い切って実行すれば良い」と思うんです。なぜかというと、ひとつの参考として、ノルウェーの実例があります。ノルウェーという国は、2020年までに「ボードに女性を最低1名入れなければ、その企業は廃業になります」という制度・規則を作って、女性のための一定枠を設けたのです。

古森そうですね。国として思い切った舵取りをしましたね。

フクシマ 私、実際にノルウェーの企業の方と話したのですが、最初は「とんでもない」という反発があったそうです。でも、「とにかく1人は入れないと廃業になる」というので、仕方なく女性をボードに入れていった。その結果、ポジティブな変化があったというのです。女性をボードに入れたことで、これまで男性ばかりでは見えなかった視点が見えてきて、色々な指摘が出てきて、業績も大いに伸びたという話。

古森 実際に業績向上につながっている・・・。

フクシマ 今は確か、ボード全体の4割は女性で、ノルウェーではトップ200社以上の100%の会社に女性の取締役がいます。もう一つ大事な点は、取締役にプロモートする女性候補者を18ヶ月のプログラムで育成したということ。歴史的に男性マジョリティで推移してくれば、当然、経営経験を通じてセンスを磨いた女性人財も少ないわけです。ですから18ヶ月間、集中的にトレーニングして、その候補者層を増やしたのですね。

古森 まさにポジティブ・アクションですね。本人の責任ではなく、過去の歴史的経緯によって生じたスキル・ギャップを埋めて行く手段を講じたわけですね。

フクシマ こういう例を見ても思うのですが、やはり、どこかのタイミングで「思い切ってやってしまう」ということが大事だと思います。それで、どういう結果が出るかをしっかりと見る。「失敗したらどうする?」と思われるでしょうが、そうです、失敗も当然あるでしょう。だけど、人間は失敗から学ぶのであって、その中で是正していけばいいのだと思います。日本の中で議論がスタートすると、どうしてもリスクテイキングを避けるという思考回路にはまってしまって、「やってしまう」というのが難しいですね。それをどこかで打破しなければ駄目です。少なくとも過去20年間、日本企業の多くは、その罠に陥っているのですから。

古森 リスクテイキングをしないという性質自体、"mono"(単一性の)組織の影響だと思うんですね。一回何かの属性に偏りすぎると、そこからぶれること自体を皆が本能的に嫌がるようになります。そういうサイクルに入ってしまうと、誰かが暴力的な変化を起こさない限り、その体系自体が環境不適応で滅びるまで続く傾向があります。だから、どこかで無理してでも変化の一撃を入れるというのは、ひとつの手段だと思います。ただし、それをやれるのはスタッフではなくて、多くの場合経営者です。

フクシマ そうですね。「こんなもの」と思って無理やり始めてみたら、「意外といいじゃない」というケースがたくさんありますよ。イメージとしては、そういうプラスの結末が8割で、本当に「なんだこれは」という結末は2割くらいではないですかね。

古森 男女の話をしましたが、外国人の本社経営メンバーへの登用なども、似たような課題構造ですね。思い切ってやり始めないと変化の歯車が回りません。そうこうするうちに、ほんのわずかな企業で起きた数例の失敗談を、「ほれみたことか」と敷衍して考えてしまいます。そうするともう、動けなくなっていく。

フクシマ やはり、「リスクを取るか取らないか」という点で、男女のダイバーシティと同じ問題です。「Global Entrepreneur Index」というスコアをご存知ですか。あの中で日本が特に目立ったのが、リスクに対する恐れ、「Fear for failure」ですよ。その部分が、日本は他国と比較してダントツに高いのです。平均の倍くらい高くて、やはり失敗するということへの恐れが非常に強いカルチャーなのだと思いました。

古森 その重たい空気の中から、「グローバル」を目指す「個人」が抜け出していく必要がありますよね。日本人が形成する集団の呪縛が解けるのを待っていたら、間に合いません。そのためにどうするか。