C-Suite Talk Live第46回 NPO法人 クロスフィールズ小沼 大地さん、 松島 由佳さん

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第46回 NPO法人 クロスフィールズ 代表理事 小沼 大地さん、理事 松島 由佳さん
Calendar2012/01/19

プログラムの特徴とカンボジアの事例

古森 そうやってスタートして、まだ数ヶ月ということですが、いくつか「留職」の初期的事例というのは出てきているのでしょうか。

小沼 徐々に出てきていますよ。実際に一人派遣する試みが完結しましたし、今いくつかの企業と今後の展開について議論をさせて頂いているところです。

古森 会社名などは結構ですが、その「留職」事例の概要をお聞かせ願えませんか。

小沼 あるプロフェッショナル・ファームのIさん(女性)という方が、カンボジアの「かものはしプロジェクト」に1ヶ月間「留職」されました。もうプログラムを終えて帰って来ておられます。「かものはしプロジェクト」というのは、カンボジアの農村部で、手工芸品の生産、井草の生産を通じて職業訓練をすることと、それを売ることによって収入を提供するという形で支援をしている団体なのです。

古森 松島さんが大学時代に立ち上げに関わった団体ですね。

小沼 そうです。その団体が、カンボジアのおみやげ物の市場に直販店を出すということで今年の春から取り組んでいまして、どのようにして売上げを伸ばしていこうかと悩んでいました。そこにIさんが参画して、「売上げを2倍にしてください」という目標を設定して。

古森 なんだか、採用面接のケースディスカッションみたいな・・・(笑)。

小沼 それを実際にやって!みたいな(笑)。

松島 カンボジア人と現場で一緒に働きながら(笑)。

古森 そのIさんは、一ヶ月の経験をどのように受け止められていましたか。

小沼 一言でいえば、非常に有意義な経験にして頂けたようです。一ヶ月の期間であっても、とにかく不案内な現地に飛び込んで、独力で物事を切り開いていく経験に大きな意味があったということです。私どもとしましても、プログラムの意義に自信を持つことが出来ました。

古森 まさに「留学」ではなく、「留職」のインパクトがあったのですね。自力で実務を切り開くというのは、本当に得がたい体験だと思います。ところで、そうした現地の人材ニーズ情報というのは、「かものはしプロジェクト」からインプットがあったのですか。

小沼 そうです。この直販店を出したのは、「かものはしプロジェクト」です。クロスフィールズは現在、ベトナム、カンボジア、インドネシアなどで15程度の団体と連携させて頂いて、具体的なニーズの把握を行っています。加えて、米国のNGOとも連携していますので、派遣候補案件は今後さらに増えていきます。

古森 それだけの団体と情報交換をしていたら、いろいろなところで人材ニーズが出てくるでしょうね。企業からの参加者は、どのようにして募っているのですか。

小沼 企業さんを訪問して、このプログラムのことをご説明して、企業さん側の人材育成ニーズとのすり合わせをして・・・という、地道なプロセスです。やはり人を派遣する話ですので、しっかりとした議論を経なければならないと思っています。

古森 企業の人材育成ニーズを聴きながら、現地サイドの人材受け入れニーズを見て、マッチングしていくわけですね。

松島そうですね、その両方を見ながらすり合わせていくイメージですね。日ごろから現地のニーズを知っておき、一方で、企業さんのほうで少しお話が進んだときに、またパッと現地サイドを振り返って見て、「あ、ここだったらマッチするな」と。

古森 これは「企業からの派遣」というところに特徴があるのですよね。個人のNGO・NPO就職支援ということではなくて。企業に在席している人が、育成プログラムとして、あるいはCSR(Corporate Social Responsibility)の一環として、あくまでも在職のまま現地に入るというコンセプト・・・。

小沼 そうです。クロスフィールズの対象は、「組織の中で働く個人」です。あくまでも人材育成を通じて「企業が変化する」ということが大事だと思っています。個人が変化することは大事ですが、それだけでは、なかなか世の中は変わりません。やはり、企業という組織が変わらなければ、日本と社会は変わらないと思っています。組織を変えるのは、その中にいる個人です。その個人が育つお手伝いをしたいというのが、クロスフィールズの願いです。

古森 なるほど。これまで数ヶ月の間、企業さんと対話をして来られた感触としては、どうですか。

小沼 おかげさまで、非常にポジティブな反響を頂いております。グローバル人材の育成という目的意識や新興国市場のニーズ理解という観点で「是非取り組みたい」という企業さんの声もあり、いくつか具体的な議論を進めているところです。

古森 今後の日本企業のおもな展開先は、多くの場合新興国ですからね・・・。このプログラムの行き先というのは、まさにピッタリと符合するのではないかと思います。

小沼 最近は、「人材育成のために現地法人に日本人を配置する」というのが難しくなっているようですね。新興国の状況はどんどん変化していきますし、場所によって事情も大きく異なります。いわゆる「お勉強」だと居場所がない、現地の負担が大きすぎる・・・というのが実情だと聞きました。

古森そこの話は、私もいろいろな場面で耳にします。

小沼 本社から「こういう人材を配置したい」と言うと、「やめてください、お荷物です」と言われて、現地法人から断られてしまう場面が増えているのだそうです。しかしながら、本社サイドではグローバル化に対応できる日本の人材も育てていかなければなりませんから、「まさにこのプログラムがフィットする」という声を数多くお寄せ頂いています。

古森 新興国における、生の実務体験ですからね・・・。消費者の姿、生活観、商売の実際の仕組みなど、肌で感じて帰ってくることが可能でしょうね。

小沼 リアルに、どっぷりと浸かるというのが良いと思っています。例えばある団体では、100人のカンボジア女性を雇っている工房があります。そこでニーズがあるのが、工房の取り仕切りをしてくださる生産管理の人材、そして人材育成や評価制度を構築・実行できる人材です。要するに、組織運営の実務です。異文化の中で、自分の持っている常識が通用しない場面も多々ある中で、なんとかして結果を出しに行く経験が出来ます。

古森 NGOやNPOだからといって、「適当で良い」とはならないですよね。いったん現場に入ったら、どういう経緯で来たかなど関係なくて、結果的に意味のあることをしなければ現地の人々も振り向かないはずです。営利目的であろうと、非営利目的であろうと、いったん飛び込んだら同じ本気度が必要だと思います。これは、鍛えられますね。

小沼 実際、カンボジアではNGOやNPOが一番良い就職先の一つになっていまして、非常に優秀な方もいらっしゃいます。現地の優秀人材にまみれて仕事をするのも、得がたい経験になるはずです。

松島 日本で普通に仕事をしていると、「●●社の誰々です」という形で、企業の信用を前提にして信頼関係が築けている部分がありますね。ところが、個人で新興国の現場に飛び込んでいくと、いかに多くのことを独力でゼロからやらねばならないか・・・。「自分はいったい、素手で何の価値を提供できるのか」など、毎日根本から考えなければならない状況に追い込まれます。それは短期的には負荷なのですが、チャレンジに打ち勝って山を越えれば大きな自信になります。

古森 不確実性や不案内な環境下で、自分で動いて道を開いていく。リーダーシップの源泉ですね。派遣の期間というのは、プロジェクトによって色々なパターンがあるのでしょうか。

小沼 あります。1ヶ月ぐらいの比較的短期間のものから、2-3ヶ月から半年にかけてのもの、そして半年以上のものとで、大きくショート、ミッド、ロングという形で設定しています。やはり受け入れ先としては「長くいてほしい」というのはありますが、派遣元の企業としては、出来るだけ短い期間で効率的に実施したい面があります。そこの折り合いをつけながら決めていくことになります。

古森 杓子定規に期間を決めるのではなくて、最終的には個々の派遣元の都合と派遣先のニーズのすりあわせで決めていくイメージですね。

小沼 そうです。派遣先やそこでの業務内容についても、派遣元の目的意識に出来るだけ合わせるように調整をしていきます。青年海外協力隊などの他のプログラムと比べても、こうした個別具体的にカスタマイズする柔軟性はクロスフィールズの特徴の一つだと思っています。