C-Suite Talk Live第47回 株式会社富士通エフサス 代表取締役会長 広西 光一さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第47回 株式会社富士通エフサス 代表取締役会長 広西 光一さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第47回(3/4)

第47回 株式会社富士通エフサス 代表取締役会長 広西 光一さん
Calendar2012/02/01

独立心を持った「個」でなければならない

古森 そうした「突っ込んでいく」という行動を実際に可能たらしめるものは、何なのでしょうか・・・。「突っ込んでいく」必要性には多くの人が頷くでしょうが、実際にやれるかどうかは別問題ですよね。

広西 私は、突き詰めればそれは「独立心」だと思います。これは国全体としての課題でもあるのですが、日本の人材はもっと独立心を持つべきです。そうしないと、世界とは伍していけません。

古森 「独立心」ですか・・・。「我々は固有の存在である」と、そういう感覚でしょうか。

広西 国レベルの視点でお話ししますと、まず「自分のことは自分で守る」という気概が必要です。そうしないと、そもそも世界を相手に「独立国」としては生きていけないのです。食料の問題もしかり。自給率をあれこれ言っていますが、リスクだと思ったら自分達で何とかして作ればいいわけです。本気で取り組めば、TPP如何に関わらず状況は改善できるはずです。独立って、そういう意味でしょう。自分で守り、自分で食っていくということ。その基盤の上に、科学とか、技術とか、芸術とか、文化とかがあるわけです。

古森そういう感覚を、個人として持てと。

広西 個々人が、自信を持って世界と向き合わないと。もちろんそれは、いつも喧嘩するという意味ではなくて、対等に向き合うということです。それが今こそ必要だと思います。

古森 対等に向き合う。

広西例えば、TPPの場で激しい交渉をするとしましょう。それは大変な議論になるでしょう。でも、そうした議論を通じて、自国のアイデンティティというものがあらためて認識されるわけですよ。企業のグローバル化も同じです。逃げるのではなくて、難しいことに自分の軸と自信を持って向き合っていかなければ。

古森 「独立心」、というのは、「個」という言葉の持つ意味にも近いように感じます。

広西 「個」!まさにそうです。「個」です。

古森さきほど「対等に向き合う」とおっしゃいましたが、「個」が確立されていない人は、それが苦手なのではないかと思います。日頃から色々な日系企業でグローバル人材マネジメントの課題解決をお手伝いしていますが、突き詰めていくと、人材の「個」が希薄であることが最大の課題の一つとして浮かび上がってきます。

広西 それはありますね・・・。先ほど「お客さんに突っ込んでいくべし」と言いましたが、突っ込んでいくには「対等だ」という心の持ち方が必要になります。立場上は、お金を払う側と受け取る側の関係ですから、こちらのほうが下になります。しかし、付加価値を出すためにお客さんの常識を大きく上回るようなコミットメントや専門性を身に付けて向き合えば、精神的には対等という感覚を持つことが出来ます。そういう状態でないと、お客さんのおっしゃることに「おかしい」などと物申すことは出来ないでしょう。

古森 なるほど。お客さんに対して本当に付加価値を出そうと思ったら、結局は「個」に裏打ちされた「対等の精神」がなければならない・・・というわけですね。これはこの業界のみならず、多くのサービス業に言えることかもしれませんね。お客さんのおっしゃることに「おかしい」要素がある場合に、それを無批判に受けてしまう人は、異なる見解を述べるだけの芯のようなものが足りないのでしょうね。しかし、どうすれば強い「個」を持った人材を育成できるでしょうか。

広西 冷めた話をすれば、採用の問題という面もあります。会社に入ってからでは、変わりにくい面もあります。本当は、小さい時から「個」の形成をやらないと・・・。

古森時間のかかる取り組みですね。即効薬はなくて、本質的には家庭や教育の場での地道な蓄積が必要でしょう。日本における子供の育て方というのは、一般的には「個」を強めていく要素よりも「集団」への調和力を高める要素のほうが大きいと思います。それがずっと再生産されていきますからね・・・。また、愚直なことやちょっとした間違いを許容する素地が社会的に減っているのも逆風ですね。

広西大人になる前の段階で、何か一つでもいいから「深さ」を出すような教育も必要だと思っています。ほどほどに全体を浅くやるのではなく、深さ。企業だって同じですから。徹底的に研究する、徹底的に開発する。そういうのを挫折しながらやるから新しいのが出来るのであって、途中までちょっとやって、止めて、ちょっとやって、止めて、ということでは全然駄目です。何かを突き詰めていく深さを持った人材を国全体で増やしていかなければなりません。

古森 そういう「深さ」も、その人の「個」の重要な構成要素の一部になるのでしょうね。あと私は、変化の「作用点」はたしかに子供世代にあると思うのですが、「力点」は企業にもある・・・と思います。企業にいる従業員のかなりの部分が、家庭に帰れば「親」なんですね。だとすると、企業の経営が内向きで保守的で「突っ込んでいかない」風土だったりすると、それが親たちのデフォルトになってしまうわけです。その親たちが子供を育てていくわけですから、企業の経営、組織運営というのは、実は20年くらいのサイクルで日本の子供づくりに影響を与えてしまうはずなのです。

広西 たしかに。このグローバル化に向き合う難しいフェーズでの企業経営のあり方が、結局は日本の子供達の「個」の形成にも影を落とす。社会的責任を認識して経営にあたらねばなりませんね。