C-Suite Talk Live 第48回 三菱ふそうトラック・バス株式会社 人事担当常務 江上 茂樹さん

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第48回 三菱ふそうトラック・バス株式会社 人事担当常務 人事・総務本部長 江上 茂樹さん
Calendar2012/02/08

オトナになっても、変われるんだ!

古森 江上さんのお話を伺っていると、「オトナになってからでも変われるんだ」というメッセージがわいてくるように思います。

江上 まさにそう思います。あんなに海外や「外国人」を避けていた私が、数年でこんなに変わってしまっています。自分自身が一番驚いています。次に驚いているのが私の母親ですね。「今日ドイツ人にプレゼンテーションしたよ」なんて言うと、「あら、あんたそんな人だったっけ?」と(笑)。

古森 いくつかそのきっかけを伺いましたが、あらためて振り返って、何が純日本風の江上青年を変えたのでしょうかね。

江上 う~ん。一言でいうと、「実体験が心の壁を破った」ということになるでしょうか。

古森 実体験。

江上 最初に「外国人」と仕事をすることになったエグゼクティブ・アシスタントの仕事。あれは、英語という面では不完全燃焼でしたが、ドイツ人社長の仕事の仕方を知るという意味では学びになっていたのだと思います。今思えば、ですが。

古森 飛び込んでみることで、苦しい中にも見えてきた新しい世界があったわけですね。

江上 アラインメントの仕事は、希望したわけではなく、声がかかったのが「渡りに船」でした。でも、そこで否応なしにドイツ人たちと仕事をしていたら、「外国人も人間なのだ」という気づきがありました。英語の向こうにある、ドイツ本社の人事体系の考え方や仕組みの合理性も見えてきました。

古森 つべこべ言わずに実際に協働してみたら、結果として分かったことがあった・・・。

江上 開発本部でも、ドイツ人たちと仕事をする中で、衝撃的な気づきや学びがありました。これらはすべて、実体験の中で否応なしに生まれてきたものです。それが、心の中にあった壁を崩していったように思います。

古森 心の壁は、なぜ出来たのでしょうね。

江上 確たることは分かりませんが・・・。思い当たるのは、中高生の時代に大嫌いな「外国人」の先生がいまして(笑)。今思えばその一人のことなのですけど、どうやら、その先生のイメージが「外国人」全体のイメージになっていたような気もします。

古森 その少年期に見た一人の「外国人」に対するステレオタイプの呪縛が、その後の職業選択やキャリア観、ひいては人生観にまで影を落としていたのでしょうか。でも、心の中にある壁というのは、案外そんなものなのかもしれませんね。

江上 ところで、こんな風に言うといかにも格好良く変化したように聞こえるかもしれませんが、私はあまり誇れたものではないと思っています。なぜかというと、ほとんどの変化は私が自分から求めたものではなくて、たまたま降ってきたものだからです。私はずっと日本的な仕事、日本的なキャリアが良いと思っていましたので、降って来ない限り、自分から進んであのようなチャレンジはしなかったと思います。あくまでも受身で起きた変化なのです。

古森 でも、江上さんは降ってきたチャレンジからは一度も逃げなかったですよね。エグゼクティブ・アシスタントのときに、ちょっと折れそうになったというお話はありましたが、やっぱり逃げはしなかったでしょう。そこまでの大きな変化を迫られたら、逃げていく人もいると思いますよ。

江上 たしかに、逃げはしなかったですね。

古森そういうところが、多くの日本の人々にとって現実的なヒントだと思いますよ。グローバル化が進んでいく中で、これからも日本の職場シーンには色々な変化が起こることでしょう。その中で、チャレンジを受けたら逃げずにくぐり抜けてみること。まずは、その覚悟が大事なのではないでしょうか。「まず、やってみる」というのが、変化対応局面における非常に重要な能力だと私は思うのです。

江上 なるほど。そういう見方もありますか。

古森チャレンジをいくつか乗り切る中で、英語だけではなく、江上さんの心持ち自体も変化しておられますよね。

江上 英語というよりも、本質的にはその変化のほうが大きいですね。キャリア観もまったく変わってしまいました。以前は、日本の大企業に入って、定年まで道筋が見えて、安定的に過ごすことが大事だと思っていました。そういう人生が良いと思っていたのです。しかし今は、次のことなど考えていません。日本の企業に比べたら、実績次第で上にも行けるし、足元が寒い場合もあります。でも、「そんなことを考えても仕方がない。今はやるだけやろう」と思っています。随分と考え方が変わったものだと思います。

古森 良い意味で、先が見えにくくなった分、今に対して真剣になっているのではないですか。

江上 ああ、そうですね。まさにそうです。

古森 私、不確実性というものは、あながち悪いことばかりでもないと思うのです。不確実性に接していると、なにかこう、人間が本来持っている感覚とか野生、ひらめき、そういうものが開いていくような気がするのです。そんな中で信じられるものは、今日という日に自分が繰り出す現実の一手であり、一歩ですね。そういう日々のほうが、実は充実しているんじゃないかと個人的には思います。

江上 まずは、「来るものは拒まず」で、今自分の目の前にあるチャレンジから逃げないこと・・・でしょうかね。

古森 本当にそう思います。まずは、今日のチャレンジを受けて立つことですね!
そろそろ、時間になりました・・・。江上さん、本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。純日本風青年からグローバル企業で通用する人材に変化をとげられたロールモデルのお一人として、今後のご活躍を心より応援しております。