ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第50回 (3/4)
第50回 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO 松本 晃さん

本当の意味でのCSRを考えるべき時
古森 ダイバーシティの話が出ましたので、ふと思ったのですが・・・。企業の社会的責任、つまりCSRについては、松本さんはどんなお考えをお持ちでしょうか。グローバル企業といわれる会社は、多くの場合、CSR関係の活動に熱心に取り組んでいますね。
松本 企業が社会的な責任を果たしていくことは、非常に重要です。CSRという考え方自体は、グローバル企業ならずとも、今日の経営者にとって必須の視点だろうと思います。ただ、何をもってCSRを果たすかといえば、そこには議論の余地がたくさんあると思いますね。
古森 松本さんは、CSRをどのような形で表現すべきだと思われますか。
松本 色々な形があると思いますが、経営トップとしてのCSRというのは、何よりもまず「納税すること」です。
古森 納税!
松本 CSRというのは、文字通りソサエティに対して貢献することですが、一番必要なのは、稼いで税金を払うことですね。ちゃんと人を雇って、税金を納めること。それをやらない企業が増えてくると、国全体が大変なことになっていきます。今の日本の国債頼みの構造なども、突き詰めれば、企業がもっとしっかりと税金を払えるようになれば改善することです。
古森 そのCSRにおける第一の使命を十分に果たさずして、他の活動をしても本末転倒だと。
松本 そうです。日本の企業は利益率が非常に低いことが多いですが、私は本来、利益率は二桁を確保するのが当然だと思っています。カルビーは相対的には利益率が高い企業ですが、それでもまだ一桁です。まだまだですね。
古森 利益をしっかりと生み出して、そして税金をしっかり払う。そのほかに、何か思われることはありますか。
松本 あとは、人材の育成でしょうね。冒頭に申し上げましたように、「学ぶ」ことの欠乏が今の日本社会全体の課題です。それを理解したうえで、経営者としては自分の会社にいる人々に対して、「学ぶ」行動を浸透させていかなければなりません。それがすなわち、CSRです。
古森 私も常々「本当のCSRは人材マネジメントだ」と思っております。松本さんは、そのCSRを果たすために、社内でどのようなことをしておられますか。お話しいただける範囲で結構ですので、お聞かせいただければと。
松本 「松塾」というのを定期開催しています。これは私と、前々社長である松尾雅彦さんの二人の頭文字をとって名づけたものですが、毎月一回、土曜日の朝10時から夜7時まで開催しています。
古森それは、みっちりですね・・・。
松本 まあ、みっちりではありますが、細かいことを教えているわけではないのです。マネジメント層であろうと事務をやっている人であろうと、社内の人なら誰でも参加できます。「学ぶ」ということを文化にしないといけないですから、門戸は広くしなければなりません。
古森 体験談などをお話になったりするのですか。
松本 体験談というより、要するに「学ばないと人生は何もないよ」ということを理解してもらうために続けています。運営自体は人事部がサポートしてくれていますので、松尾さんと私が最初に何かお話して、あとは参加者でグループディスカッションするようなワールドカフェスタイルです。その議論の中に、私たち二人も入っていきます。
古森 組織内の階層とは関係なく、「学ぶ」つもりのある人々に集まっていただいて、そこにご自身も入っていかれるわけですね。
松本 草の根運動ですよ。そろそろ3年目に入りますが。もともと私の経営哲学は、「Our Business is People Business」というものです。松塾でも、根底にあるメッセージはこれです。僕たちのやっているビジネスは、”People”のビジネスなんだと。人間の仕事なんだと。だったら、人間が磨かれていないと、一人ひとりが良くならないと、会社なんて良くなりっこない。学歴とかではなく、人間のことなんです。
古森 きっと、そのメッセージを受け止めた人が育ってきているのだと思います。他には、何かお話しいただける取り組みはございますか。
松本 もう一つ意図的にやっているのは、危機感を伝えて歩くということですね。年に2回、全国23箇所ほどの拠点をまわって、それぞれでタウンホール・ミーティング(執筆者注:全社員集会のこと)を実施しています。
古森 かなりの数ですね。それを年に2回。
松本2回です。冬の陣と夏の陣があって、冬の陣は12月に始まって2月に終わります。
古森 ほぼすべての社員の方々が、年に2回、直接経営トップからメッセージを受け取るということになりますね。直近の冬の陣のテーマというのは、どのようなものだったのでしょうか。
松本 「築城三年、落城三日」です。最近、日本電産の永守さんが「落城三時間」と言われましたが、まさにそういう時代です。カルビーはしっかりした会社ですし、頑張っていますが、この程度の会社はきっかけがあれば一夜にして壊れます。今の時代は。本当に全員がその危機感を持って事にあたらなければ。一人ひとりが強くなっていかないと、組織は強くなりません。
古森 そのようにして、自社の人材をまず育てていくことが、結果的にはCSRだということですね。
松本その通りです。
古森 私、よく思うのですが、子供世代の教育の問題の大きな部分は親(もしくはそれに相当する保護者)による家庭教育の問題ではないかと・・・。企業で働いている人材というのは、視点を変えると、まさにこの親世代なのですね。そうすると、企業でしっかりと人材育成をすることは、結果的には、家庭における子供世代の育成にも好影響を与えていくように思います。逆に、企業で人材をスポイルすると、負の影響が子供世代にも及んで行く。
松本おっしゃるとおりです。ですから、これこそまさにCSRなのですよ。人を雇い、厳しいことも含めてきちんと育成をして、そして税金をちゃんと払う。奇をてらわなくても、まずはこれをしっかりやることが経営者として意識すべきCSRだと思います。
松本 企業が社会的な責任を果たしていくことは、非常に重要です。CSRという考え方自体は、グローバル企業ならずとも、今日の経営者にとって必須の視点だろうと思います。ただ、何をもってCSRを果たすかといえば、そこには議論の余地がたくさんあると思いますね。
古森 松本さんは、CSRをどのような形で表現すべきだと思われますか。
松本 色々な形があると思いますが、経営トップとしてのCSRというのは、何よりもまず「納税すること」です。
古森 納税!
松本 CSRというのは、文字通りソサエティに対して貢献することですが、一番必要なのは、稼いで税金を払うことですね。ちゃんと人を雇って、税金を納めること。それをやらない企業が増えてくると、国全体が大変なことになっていきます。今の日本の国債頼みの構造なども、突き詰めれば、企業がもっとしっかりと税金を払えるようになれば改善することです。
古森 そのCSRにおける第一の使命を十分に果たさずして、他の活動をしても本末転倒だと。
松本 そうです。日本の企業は利益率が非常に低いことが多いですが、私は本来、利益率は二桁を確保するのが当然だと思っています。カルビーは相対的には利益率が高い企業ですが、それでもまだ一桁です。まだまだですね。
古森 利益をしっかりと生み出して、そして税金をしっかり払う。そのほかに、何か思われることはありますか。
松本 あとは、人材の育成でしょうね。冒頭に申し上げましたように、「学ぶ」ことの欠乏が今の日本社会全体の課題です。それを理解したうえで、経営者としては自分の会社にいる人々に対して、「学ぶ」行動を浸透させていかなければなりません。それがすなわち、CSRです。
古森 私も常々「本当のCSRは人材マネジメントだ」と思っております。松本さんは、そのCSRを果たすために、社内でどのようなことをしておられますか。お話しいただける範囲で結構ですので、お聞かせいただければと。
松本 「松塾」というのを定期開催しています。これは私と、前々社長である松尾雅彦さんの二人の頭文字をとって名づけたものですが、毎月一回、土曜日の朝10時から夜7時まで開催しています。
古森それは、みっちりですね・・・。
松本 まあ、みっちりではありますが、細かいことを教えているわけではないのです。マネジメント層であろうと事務をやっている人であろうと、社内の人なら誰でも参加できます。「学ぶ」ということを文化にしないといけないですから、門戸は広くしなければなりません。
古森 体験談などをお話になったりするのですか。
松本 体験談というより、要するに「学ばないと人生は何もないよ」ということを理解してもらうために続けています。運営自体は人事部がサポートしてくれていますので、松尾さんと私が最初に何かお話して、あとは参加者でグループディスカッションするようなワールドカフェスタイルです。その議論の中に、私たち二人も入っていきます。
古森 組織内の階層とは関係なく、「学ぶ」つもりのある人々に集まっていただいて、そこにご自身も入っていかれるわけですね。

古森 きっと、そのメッセージを受け止めた人が育ってきているのだと思います。他には、何かお話しいただける取り組みはございますか。
松本 もう一つ意図的にやっているのは、危機感を伝えて歩くということですね。年に2回、全国23箇所ほどの拠点をまわって、それぞれでタウンホール・ミーティング(執筆者注:全社員集会のこと)を実施しています。
古森 かなりの数ですね。それを年に2回。
松本2回です。冬の陣と夏の陣があって、冬の陣は12月に始まって2月に終わります。
古森 ほぼすべての社員の方々が、年に2回、直接経営トップからメッセージを受け取るということになりますね。直近の冬の陣のテーマというのは、どのようなものだったのでしょうか。
松本 「築城三年、落城三日」です。最近、日本電産の永守さんが「落城三時間」と言われましたが、まさにそういう時代です。カルビーはしっかりした会社ですし、頑張っていますが、この程度の会社はきっかけがあれば一夜にして壊れます。今の時代は。本当に全員がその危機感を持って事にあたらなければ。一人ひとりが強くなっていかないと、組織は強くなりません。
古森 そのようにして、自社の人材をまず育てていくことが、結果的にはCSRだということですね。
松本その通りです。
古森 私、よく思うのですが、子供世代の教育の問題の大きな部分は親(もしくはそれに相当する保護者)による家庭教育の問題ではないかと・・・。企業で働いている人材というのは、視点を変えると、まさにこの親世代なのですね。そうすると、企業でしっかりと人材育成をすることは、結果的には、家庭における子供世代の育成にも好影響を与えていくように思います。逆に、企業で人材をスポイルすると、負の影響が子供世代にも及んで行く。
松本おっしゃるとおりです。ですから、これこそまさにCSRなのですよ。人を雇い、厳しいことも含めてきちんと育成をして、そして税金をちゃんと払う。奇をてらわなくても、まずはこれをしっかりやることが経営者として意識すべきCSRだと思います。