C-Suite Talk Live第51回 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口 治明さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第51回 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口 治明さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第51回 (1/4)

第51回 ライフネット生命保険 株式会社 代表取締役社長 出口治明さん
Calendar2012/04/16
C-Suite Talk Live 第51回 ~対談エッセンス~
  • 朝起きて「今日も楽しい」と思える会社に
  • リーダーシップの源泉は「思い」
  • 思いを「仕組み化」することの意義
  • 読書は古典、視野は「タテヨコ思考」

朝起きて「今日も楽しい」と思える会社に

古森 こんにちは。上場を控えたお忙しい時期に、お時間をいただきましてありがとうございます。日本生命の大先輩である出口さんのご活躍は、いろいろな場面で拝見して大変刺激を受けておりました。
※対談は東証マザーズ上場前に実施されました。

出口 ああ、日本生命のご出身ですか。ご入社は何年ですか。

古森 日本生命には91年に入りまして、99年の秋に卒業しました。よろしくお願いいたします。この対談シリーズは、各界のリーダーの方々に主として「人・組織」にまつわるお話をうかがって、読み手に何かヒントになるものを提供したいという思いで続けております。ぜひ、いろいろとお聞かせください。

出口 どうぞ、何でも聞いてください。

古森 ありがとうございます。さっそくですが、「人・組織」の観点からは、ライフネット生命さんに元気で面白い人、クリエイティブな人が多いのはなぜなのだろうと以前から思っておりました。「Great Place to Work ®」でも、早くも好順位を獲得されていますね。組織の元気を保つ上で、出口さんが意識しておられることは何でしょうか。

出口 僕は精神論が大嫌いで、常に数字、ファクト、ロジックで考えるのがビジネスだと思っています。プライベートの生活には感情の要素があっても良いのですが、仕事では精神論が大嫌いなのです。そのスタンスで考えたときに、これはもうグローバルな共通事項だと思いますが、すべての企業にとって生産性を上げることが一番有効なのですね。GDPは「人口 × 生産性」ですから、会社を継続的に伸ばしていくには、まずスタッフの生産性を上げるしかない。

古森 突き詰めるとそれだと。

出口 では生産性を上げていくためにはどうしたら良いかというと、製造業は機械設備や技術がかなりパワーを持ちますが、非製造業は基本的には人間しかいないわけです。人間が生産性を上げていくにはどういうことが必要かというと、それはもう、「脳が活発に働く」ということに尽きます。

古森 「脳が活発に働く」、たしかにそうですね。

出口 では、脳はどういう条件のときに活発に働くか。本質的には二つしかないのです。一つは、楽しいこと。もう一つは、ビックリしたとき。この二つですね。例えば、魅力的な異性に出会って恋をすれば、誰しも「がんばろう」と思いますね。姿勢を良くしようとしたり、髪型や装いに気を遣ったり・・・。

古森 ときめくわけですね。

出口 そういうときに、脳は活性化します。もう一つの、「ビックリ」の典型はM&Aですね。まったく違った会社同士が合わさったときに、「こんな仕事のやり方があるのか」「こういう風に仕事をしているのか」など、ビックリするとともにいろいろな発想が生まれてきます。これはもう論証され尽くしていることです。

古森 異質との接点、多様性の中で脳が活性化されるということですね。

出口 だとしたら、会社としてやるべきことはシンプルで、「ダイバーシティ」の実現ですよ。異質な人をたくさん集めて、お互いにビックリする機会を生むことです。さらに、スタッフの側から見た場合には、朝起きた時に「今日も会社に行こう」「楽しいから行こう」と思ってくれるかどうかです。「楽しさ」や「ビックリ」を提供した結果として、スタッフがこのように思ってくれるかどうかが会社活性化の鍵だと思います。

古森 本当に重要なものは、えてしてシンプルですね。

出口 ですから、ロジカルに考えたら、会社の経営者のもっとも重要な仕事は、スタッフにとって「元気で明るく楽しい会社」を作ることだと思います。社長個人ではなく組織として生産性を上げていこうと思ったら、それが論理的な帰結です。

古森 そのために、例えばどんなことをしておられますか。

出口 それは結局、恋愛と同じですよ(笑)。毎日メールを送るとか、手紙を書くとか、花を贈るとか。いろいろと方法論はあります。ただ、その際に相手に好意的に受け止められるかどうかがポイントです。そのためには、結局、こちらが真剣に思う気持ちがなければだめです。真剣に、本当に思っていないと何をやっても通じません。

古森 実際に思っているかどうか。

出口 本当に思っていても通じない場合はあります。しかし、少なくとも強く思っていなければ絶対に通じません。

古森 手練手管だけではだめだと。

出口 ということは、「スタッフが朝起きたときに、今日も楽しく会社に行こうと思うことが、この会社を強くするのだ」と僕を含めた経営陣が本気で思い続けることがすべてだと思います。その気持ちがスタッフに届くかどうかはわかりません。でも、それがないと何をやっても駄目なのです。

古森 何か、スタッフの方々に「通じた」という手ごたえを感じることはありますか。

出口 そうですね・・・。例えば、80名弱のスタッフのこの会社に、現在運動部が11もあります。しかも、ランニング部とか水泳部とかトライアスロン部とか、それなりにハードなものも含まれています。会社が楽しくない場所だったとしたら、スタッフが週末にまで一緒に時間を過ごそうと思うでしょうか。

古森 なるほど、それは一つのサインでしょうね。

出口 あるいは、こんなこともありました。あるとき僕が帰ってきたら、机の上に社内報が置いてありました。「これは何や」と聞きましたら、「スタッフの総人数が50人くらいになってきたので、社内報があったほうが良いと思って作りました」ということでした。特に僕が頼んでいるわけでもないのに勝手に社内報ができていました。これもやはり、会社に対するスタッフの皆の姿勢のあらわれではないかと思っています。

古森 自分が所属するコミュニティに対して、前向きな印象を持っておられるのでしょう。そのコミュニティが嫌だったら、社内報を自発的に作ったりはしないでしょうね。

出口 だから経営にとって大事なことは、ある意味では方法論ではなくて、何を本当にバリューだと考えて、トップがそのことを強く思い続けることができるかどうか。それがすべてだと言ってもいいのではないでしょうか。

出口 治明(でぐち はるあき)さん プロフィール

1972年
日本生命保険相互会社 入社
 
1981年
日本興業銀行出向
 
1988年
生命保険協会財務企画専門委員会を設立、初代委員長に就任。金融制度改革、保険業法の改定に取り組む
 
1992年
ロンドン事務所長、ロンドン現地法人社長、北欧政府やバルセロナ、コペンハーゲンといった欧州の大都市に融資を行う
 
1995年
国際業務部長 就任、中国における生命保険事業の認可申請などを手掛ける
 
2005年
東京大学総長室アドバイザー(非常勤)
 
2006年
あすかアセットマネジメントリミテッド顧問 就任
 
2006年
生命保険準備会社ネットライフ企画株式会社を設立、代表取締役社長に就任
 
2007年
早稲田大学大学院講師(非常勤)
 
2008年
ライフネット生命保険株式会社(旧商号ネットライフ企画)が生命保険業免許を取得
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長に就任
 
2010年
慶應義塾大学講師(非常勤)
 
2012年
ライフネット生命保険株式会社が東証マザーズに上場