C-Suite Talk Live第51回 ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長 出口 治明さん

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第51回 ライフネット生命保険 株式会社 代表取締役社長 出口治明さん
Calendar2012/04/16

読書は古典、視野は「タテヨコ思考」

古森 しかし、「どうしたいか」「こうすべきだ」という軸のようなものを自分の内面に形成していくためには、ある程度の勉強は必要ですよね。まったく土台のないところから、ひらめきだけで湧き上がってくるような人は少ないと思います。出口さんは、どのようにして土台のインプットをしておられますか。

出口 僕のインプットはまず読書ですね。徹底的に本を読みます。人間の学びは、大きくは「人、本、旅」の3つからだと思っていますが、その中でも一番効率がいいのは「本」からの学びです。

古森 無類の読書家だとは伺っておりましたが、やはりそこですか。

出口 例えばオバマ大統領に会いたいと思って明日ワシントンに行くとします。1カ月滞在してホワイトハウスに通っても、まず会えないですよね。会えたとしても、非常に限られた時間になるでしょう。ところが、700円出せばリンカーンとゆっくり話ができます。リンカーンの演説集を読めば良いわけですから。だから本というのは効率が非常に良い。かつ、古典のほうがなお良いですね。

古森 結局、古典にたどり着きますか。

出口 なぜかというと、古典として現代に受け継がれているものは、ほとんどが時間に磨かれた良いものだからです。良くないものは、長い時間の中で自然と淘汰されていきます。今日まで残っているものは、全て人間にとって価値あるものだと思います。

古森古典に傾倒していくというのは、世界の経営者の共通項のようにも思えます。

出口 日本生命でロンドンにいた頃、世界の経営トップと交流があり、食事などすることも多かったのです。欧米の経営トップ層が読む本は、圧倒的に古典が多いなと思いました。ホッブスのリバイアサンであったり、経済学でいえばアダム・スミスであったり、デカルト、あるいはアリストテレスであったり、エドモンド・バークなんですよね。

古森 そういうのが、会話の中でにじみ出てくるのですね。

出口 僕は、常々「タテヨコ思考」と言っているんです。

古森「タテヨコ思考」?

出口 人間は、自分の考えをなかなかチェックできないものですよね。一番良いのは、「昔の人がどうやってきたのか」というのをちゃんと知ること。だから、古典を読むのです。過去と未来は違うというかもしれないけれど、人間というものはそんなに変わっていないのですよ。脳はこの1万年ほど、全く進歩していないという研究があります。

古森 環境変化が早くなり、技術も大進歩したけれども、人間そのものは変わっていない・・・。

出口 だから、人間の社会や人間そのものについての洞察というのは、やはり過去に起きたことから十分に学べますし、それは今日的にも十分意味があるのです。これが、時間をさかのぼりますので「タテ」の思考。これに対して「ヨコ」というのは、世界の人がどうしているかを虚心坦懐に知ることです。そうすれば、タテヨコの座標軸が自分の中にできますから、自分の考えを冷静にチェックすることができるようになります。

古森 なるほど、それで「タテヨコ」ですか。

出口 企業の経営者がきちんと自分の座標軸を持っていたら、日本は今日のような経済状態には陥っていないと思います。第二次世界大戦、冷戦構造の中でのアメリカへのキャッチアップ、経済大国化、自由化・規制緩和、冷戦の終焉とバブル崩壊・・・など、タテヨコに物事を冷静に読み解いていけば、やるべきことはクリアになるはずです。そうしたら、いまだにダイバーシティ後進国ではいられないはずです。あるいは、高度成長期と人口の増加を前提とした「青田買い、終身雇用、年功色の強い賃金体系、定年」というガラパゴス的な労働慣行などを維持できるはずがありません。座標軸を持って冷静に考えたらわかることです。そうした構造改革をやらない経営者が多いから、日本の経済は停滞しているのです。

古森 「本当はこうすべきなのだが、実際はそのようにならない」という現象は、例えば東日本大震災の復興の現場でも見え隠れしています。リーダー層だけでなく、組織や集団、社会を構成する個々人が、きちんと歴史に学んで世界を知って、見識を持つべき時に来ているのだと感じます。

ああ、そろそろ時間が来てしまいました・・・。まだまだお伺いしたい話があるのですが、今日はこのあたりで終了ということにいたします。たくさんの刺激的なお話を伺うことができました。読者の皆さまにも、それぞれに何か感じる部分があるのではないかと思います。出口さん、本当にありがとうございました。