C-Suite Talk Live第52回 日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口 宏さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第52回 日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口 宏さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第52回(2/4)

第52回 日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口宏さん
Calendar2012/04/24

日本CFO協会 過去10年余りの歩み

古森 それから10年余り、ですね。

谷口 あっという間の10年でした。最初は、「企業の財務は何をすべきか」ということで、コーポレートファイナンス寄りの話を軸にしていました。これは、時代背景がそうだったのです。2000年の段階では、市場からの直接調達をする企業がかなり増えていましたが、資本構成や市場の反応、あるいは調達の選択肢と経営へのインパクトなど、そういうことを十分目利きすることができない企業が少なからずありました。また、90年代前半までの間に「財テク」的なことをして失敗した企業も多かったですね。その負の遺産はまだ至る所に見え隠れしていた時代でした。

古森 私はウォートンのMBAでファイナンスを専攻して98年に卒業しましたが、まさにそうしたコーポレートファイナンスの課題が、当時の日本におけるホットトピックだった・・・という記憶があります。

谷口 まさにそういう時代でした。それまでのいわゆる「財務部」の範疇ではなく、もう一段高い視点が必要だったのです。それで、日本CFO協会設立直後にはまず、アメリカにあるトレジャリーや財務の教育体系をアメリカのAFPと提携して日本に導入するということをやりました。

古森社会的にも、そこにニーズが高かっただろうと思います。

谷口 そうですね。おりしも色々な企業におけるCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)導入の話題などが頻繁に日経の紙面に載るような時代でした。そういう最先端の財務に関する教育体系をアメリカから持ち込むということで、日立さんや新日鉄さんなどの錚々たる企業から賛同を得まして、教科書の翻訳や日本におけるプログラムづくりなどを協働で開発していきました。

古森 それで組織としても時代の波に乗っていったわけですね。

谷口 ところが、時代のテーマというのは刻々と変わって行きます。この変化の激しい時代ですからなおさらです。2004年の「エンロン」の事件以降、地合いが大きく変わりました。金融危機もほぼ収まってきて、企業にとっての経営面のリスクと言えば、少し前までの「流動性リスク」ではなくなり、「内部統制」や「コンプライアンス」の話に急速にシフトしていきました。

古森 SOX法に象徴される、今につながるトレンドですね。

谷口 世の中の関心事としては、ファイナンスの重要性やファイナンスの市場論理といった視点は急速に失われていきました。端的に言えば、「不正をしなければ」「不正を防ぐには」という方向での議論が増えてきて、本来のファイナンス理論という点では止まってしまった感があります。今もその状況は変わりません。

古森 そうした潮目の変化をよしとするかどうかは別の話として、日本CFO協会としても新たなニーズには応えてきたのですよね。

谷口 それは当然のミッションだと思っています。理想はありますが、ニーズにない事をやっても仕方がないという面もあるわけです。ちょうどその頃、経済産業省が「経理財務サービススキルスタンダード」という、いわゆる経理の業務フローを作りました。我々がそれに基づいてスキル・アセスメントをする基盤を提供してはどうかと考えまして、経産省に相談したところ、縁あって受託することができました。それで、「FASS」という検定試験を作って、運営を開始したのです。

古森 財務・経理分野の方々なら、今では誰でも知っている検定試験ですね。実際、それが日本における財務・経理人材の育成面で果たしてきた役割は大きいと思います。

谷口 ありがとうございます。内部統制系のニーズもあり、業務標準化や実務知識重視の流れが追い風になりました。ということで、設立当初の軸足からFASSを重要な基盤とした形にシフトしつつ、協会としては10年余りを経て今日に至るわけです。ただ、やはり本質的にはコーポレートファイナンスの視点と財務経理実務やプロセスの視点、そしてそれらを土台にした経営視点が必要ですから、次の10年はまた違った展開が必要だと感じているところです。