C-Suite Talk Live第52回 日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口 宏さん

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第52回 日本CFO協会 専務理事 事務局長 谷口宏さん
Calendar2012/04/24

CEOの右腕としてのCFOを育成していくために

古森 「CEOの右腕になりうるCFO」を今後の理想像とした場合に、では、そういうCFOをいかにして育てていくか・・・というところが現実的課題ですね。ここは、財務・経理というよりも、人材マネジメントの分野の話です。

谷口 おっしゃるとおりです。経営人材育成の一環ですよね。

古森 谷口さんから見て、今現在数は多くないにしても、「CEOの右腕」として本当に機能発揮しておられるCFOの方々というのは、どのような経路で育ってこられたのでしょうか。なにか、思い当たるものがありますか。

谷口 そうですね・・・。人の成長というものは色々な形がありますから、一概には言えないでしょうが、「海外子会社での経営経験」というのは重要な要素になっているように思います。海外の子会社などで、財務・経理だけではなく、会社全体の経営で苦労された方々というのは、その後本社のCFOになられてからも、経営目線での活躍を続けておられるような印象です。

古森 やはり、経営目線を身に付けるためには、経営経験ですか・・・。

谷口 規模がある程度小さい会社だと、経営トップが何もかも自分でやらなければならない場面が多いですね。各機能分野に専門スタッフを雇うにしても、かなり直接的に中身を把握しておかないと、いざという時にカバーすることができません。そうなると、財務・経理分野はもちろんのこと、当局との各種折衝、本社との間の資金繰り、そして開発、製造、マーケティング、営業など、抱えている社内のバリューチェーン全体への理解と関与が自然に求められていきます。

古森 小さくても、「丸ごと経営」する経験が持てるわけですね。大きな会社になると、財務・経理の部門に長く勤務して部門トップになったとしても、その会社全体の各機能の動きに皮膚感覚を持てるようになるとは限りませんね。もちろん、誰でも海外の子会社の経営を任せられるわけではないでしょうが、将来のCFO人材として目星をつけた人たちには、実際に経営全体の感覚を持って頂けるようなキャリアパスを組む必要がありそうですね。

谷口 あくまでも財務・経理の専門機能としてのリーダーと、トップマネジメントの一部としてのCFOとでは、人材育成の方法に明確な差があるはずです。いずれかの仕事の優劣といった話ではなく、持つべき経験や目線が違うだろうと。かなり意図的に経営経験を積ませるような工夫をしていかないと、「CEOの右腕」になるようなCFO候補人材は育っていかないだろうと思います。

古森 ところで、CFOに限らずいわゆるCクラスのオフィサーに関しては、もう一つ別の視点も必要だと常々思っています。それは、「ガバナー」の視点です。

谷口 なるほど。

古森 機能としては「ガバナンス」と言ってもいいのですが、あえて人のイメージでいえば「ガバナー」です。要は、「統治する」という役割を担った人ですね。この役回りというのは、日本で育った方々の場合、比較的苦手な傾向が強いのですよ。

谷口 ありますね、そういう傾向は。

古森ガバナーは、やたらと現場の実務に手足を突っ込んではいけないのです。自分の統治範囲にあるものを正しく知るための情報源を持って、随時そこから情報を引き出して、何か問題が出てくれば対応について判断する。しかし、それを自分がやるかどうかは、常に判断。ちなみに多くの場合、ガバナーが直接問題解決に動くというのは望ましくないです。正しい情報とそこからの判断を握った上で、アクションは他人に任せるというスタンスがガバナーの基本です。これは、日本企業の経営層が一般的には不得手としている動き方です。

谷口 やはり、多くの日本企業では、現場に行くことを大事にしていますからね。

古森 現場に行くこと自体は、良いのだと思います。ただ、そこでガバナーとしては情報収集と判断をすべきであって、腕まくりして問題解決することが本旨ではないわけです。先ほど小さめの会社での経営経験が重要という話が出ましたが、最終的に本社のCFOを想定する場合、このガバナーとしての感覚もまた欠かせません。経営全体に皮膚感覚を持つ力と、自ら実務に切り込まずして適切に統治する力。この両方のバランスがCFO人材の育成過程では必要になるのではないでしょうか。

谷口 それがないと、経営感覚のない無駄な管理を強いたり、逆に、情報に過剰反応して現場をかき回したり、といったことが起きてしまいそうですね・・・。

古森 ガバナー感覚を体験的に持たせようとするのは、かなり難しい面があります。先ほどの話にありましたように、いわゆる経営の全体感覚をつかむには、小規模の会社の経営トップを経験するのが良さそうです。一方、ガバナー感覚というのは、直接手が出したくても出せない程度に大きな組織の経営トップをやるのが近道だと私は思います。だから、そんなに頻繁に経験させられないわけです。本当に有為な社外取締役人材が極めて希少であるのも、似たような事情によるものと思います。そうそう簡単には経験できないわけです、実際の仕事としてのガバナーというのは。

谷口 ここにも、日本CFO協会としての啓蒙・啓発の役割があるかもしれませんね。経営の全体感覚を持つためのキャリアパスの示唆などは、世の中に打ち出していく機会があると思います。また、実体験上はなかなか経験させられないガバナー感覚というものは、だからこそ座学や事例共有を通して伝えていくべき分野かもしれません。いずれにしても、日本の企業社会におけるCFOの役割をグレードアップしていくために、次の10年は大いに世の中に働きかけて行こうと思います。

古森心強いですね。

そろそろ時間になりました。谷口さん、今日は貴重なお話を聞かせて頂き、またざっくばらんに意見交換をして下さり、本当に有難うございました。日本CFO協会の次の10年のご発展を心より祈念いたしております。