C-Suite Talk Live第54回 トレンダーズ株式会社 代表取締役 経沢 香保子さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第54回 トレンダーズ株式会社 代表取締役 経沢 香保子さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第54回(3/4)

第54回 トレンダーズ株式会社 代表取締役 経沢香保子さん
Calendar2012/07/23

まずは社員が社長のことを信じられるか

古森 これだけ先端の、かつ感覚を研ぎ澄ました仕事が求められる組織で、その感覚を維持するとか、元気に仕事をして頂くとか、会社の中の雰囲気作りをするという点で何か心がけていらっしゃることはありますか。先ほどの「透明性」はその最たるものとして、他には何かありますか。

経沢 まず当たり前のことですが、何を目指すのか、会社として進んでいく方向性、理念やビジョンを社長自らが語るなどして、明確にすることを大事にしています。その上で、今はこれだけ情報が共有されやすい社会ですから、常に「良い条件・良い会社、良い環境」を維持することが重要です。人間だって、一回付き合ったからといって結婚するとは限らないですし、結婚したからといって添い遂げるとは限らないわけですよね(苦笑)。

古森 たしかに・・・。

経沢 環境を良くしたり、待遇を良くしたり、居心地を良くしたり、そして彼らが他のどの会社にいるより気持ちよく成長できるようにしたりという、いわゆる福利厚生にとどまらない本当の意味での「社員満足度」の向上が鍵だと思います。たとえ仕事が大変だとしても、「得るものが大きい会社」というのが絶対大事だと思っています。

古森 積むことが出来る経験の中身というのは、社員満足度の核心に来る部分かもしれませんね。

経沢 弊社の人事制度は、シンプルで明確です。昇格、昇進なども厳格に検討していますし、何よりも上司と部下の信頼関係の醸成を大事にしています。評価で何点つこうと、信頼関係がなければ皆、その点数が腑に落ちないはず。常に人間関係における信頼があって、そこに仕組みとしての機能があり、ヒューマンな部分とロジカルな部分が両立するように気を配っています。

古森 人間は感情を持って動く生き物なので、どんなに論理的に正しくても、「嫌なものはだめ」という面がありますね。逆に、多少苦しくても「好きなものは乗り越えられる」ということが往々にしてあります。信頼関係は、そうした感情面の作用に大きな意味を持ちますが、信頼感醸成のために何か経営者としてやっていらっしゃることは?

経沢それは意外に単純です。まずは、「社員が社長のことを信じられるか」ということですね。ひとつには、人間的に「この人いいな」というのはあると思います。ただ、それだけでは経営者としてはダメでしょう。経営者だったら、立てた目標とか、「こういうことをする」と言ったコミットメントを外さないという点が重要だと思います。

古森それを外さないことが、「社長に対する社員の信頼」の源泉ということですね。

経沢 例えば、皆が砂漠の中でさまよっていて、その状況でどこに行ったら水が飲めるよとか、どこに行ったら快適なところに行けるよ、という情報を出すのが経営者です。あっちだこっちだとか、こっちかも知れないというので、じゃあそっちへ行ってみようとして行ってみたら、嵐だった・・・とか。力がある、言った事がやれる、指し示した方向が当たっている。そういう単純なことが大事なのです。私がそれを一番感じたのは、会社の業績が悪かったとき。どんなに私が優しくしても、余計に距離が生まれました。だから、どんなに人柄が良くても、力のない社長とか、こういうことをやるんだと言って、やり遂げられない社長に人がついてくるということは、やはりないのだと実感しました。すごく少ない人数でやっていて、皆が血判を押すようなメンバーだったら事情は違うかもしれませんが、大きな組織にしようと思ったら、経営者はパワーを持っていないと信頼されません。

古森 それはシンプルにして、覚悟のある宣言ですね。

経沢 やはり、結果が大事です。社長が社員を評価する以上に、社長は社員から厳しい眼で見られています。言っていることに結果がついてきたときに初めて、社員は社長のことを信じてくれます。ただ何となく「オーラがあるから」みたいな理由でついて行く場合もあるでしょうけど、人の魅力だけでもつのは、せいぜい1-2年の話だと思います。

古森100点ではないかもしれないが、経営者として過去にやってきたことが「当たっている」度合いが、結局社員からの信用になる・・・。愚問かもしれませんが、何事も不確実な中で、方向を示すという「賭け」に躊躇はありませんか。方向性を示す、何かを決断する、という瞬間のボタンを押せるか押せないかというのが、今の日本社会におけるリーダーシップの課題になっています。

経沢私の場合は、そういう「ボタン」を押す瞬間には、正しいか正しくないかということさえ固まっていないと思っています。だから、ボタンを押すことには躊躇はないですね。ボタンを押した後、どうやって軌道修正しながら、徐々に正しくするかということです。あまり決断そのものにはこだわらないというか・・・。むしろ、決断のスピードの方が大事ですね。その後にいくらでも、やりながらコマをひっくり返せると思っていますので。

古森ああ、その「決断」の裏にある考え方というのが素晴らしいですね。決断の瞬間だけで物事が決まるのではなくて、迅速に方向性を示して動き始め、走りながら変化し続けて成功に至る。その考え方、動き方自体が鍵なのだと思います。

経沢 私は決めるほうが楽なタイプというか・・・。決まったことをやらされるよりも、決めるほうが楽だと感じる性質なので、今の役割は向いているのかも知れません(笑)。

任せるためには利益が必要

古森 人材育成という点では、どうですか。社長が方向性を決断するとして、その実行を組織のメンバーに任せるからこそ人が育つというのが一般論だと思いますが、この点については何か?

経沢 そうですね・・・。確かに、任せることで人が育っています。しかし、「どんどん任せていいな」と思えるようになったのは、実際のところは会社が軌道に乗ってからでしたね・・・。つまり、失敗してもリカバリーできるかどうかというのが、経営者としては、現実的に「任せる」ことが出来るかどうかの制約条件だと思うのです。

古森 なるほど、実感のこもった話ですね。

経沢 会社に資金が沢山ある状態、収益率が保たれている状態になると、どんどん組織の下のほうのメンバーに対して、限られた範囲の権限を少しずつ、そして任せられると判断すれば急激に広げていくことが出来る。個々人の能力に応じて・・・というのももちろん必要です。その基盤を作るために、それ以前に、経営者から社員に任せられる範囲が広がるということは、とりもなおさず会社に余裕ができること、たとえば、キャッシュリッチということとセットだと思います。結局、経営ってそこではないかと・・・。

古森 会社に許容度がないと、任せて試す余地が生まれてこない・・・ということですね。

経沢 そうです。あまりにも余裕がないと、皆が「絶対ミスしてはいけない」という状態になってしまって、普通は起きないようなミスさえ起きてしまうように思うのです。

古森 緊張しすぎて。

経沢 そう、緊張しすぎて。だから、私が一番大事にしていることは、やはり会社が売上と利益、とくに利益がしっかり出せるということです。そして高収益体質を早期に作り上げること。利益があれば、多少失敗してもどうにかなることがほとんどです。仕事を任せて人を育てようと思ったら、会社には収益の強い柱が必要と考えています。

古森 結局、仕事を任せて人を育てる財務的な土台を作るのも、経営者の仕事ということですね。

経沢 もちろんこれは、社長のタイプによると思います。私はけっこうコンサバなので、任せられる状態になったと思ったから、徐々に任せるようにしてきたわけです。任せたら危険な時は、自分で決めていました。ですから、堅実ともいえますし、だからこんなに時間がかかっているという見方も出来るでしょうね。

古森 それはもう、本当にスタイルですよね。経営者ごとにリスク感性やリスク許容度に個性があるのは当然だと思います。自分のスタイルで一貫していれば良いのではないですか。

経沢 そうですね。ですので、私の場合は、会社の財務的安定性を確保しながら、人を見て徐々に任せる。任せられるとふんだら、どんどん権限を広げていく。そうやって、良い人材を採用し教育し続けていけば、どんどん組織のスピードもあがっていくだろうと思います。私は、ちょっとずつ工夫してやるタイプかな・・・。

古森任せるなりに社員の方々も育ってきておられる感じですか。

経沢 そうですね。まだ若いですけど。平均年齢27くらいですから、人間としてはまだまだ幼少期的な面もあると思います。経験も少ないですからね。ただ、情熱があり、やる気があり、成長意欲がある人たちが集まっているのが弊社の強みです、任せられてチャンスを得ると、本当に伸びてくれます。