C-Suite Talk Live第57回 明治ホールディングス株式会社 代表取締役社長 浅野 茂太郎さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live第57回 明治ホールディングス株式会社 代表取締役社長 浅野 茂太郎さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第57回(4/4)

第57回 明治ホールディングス株式会社 代表取締役社長 浅野茂太郎さん
Calendar2013/04/24

海外市場での今後の発展に向けて

古森 最後に少し目線を変えまして、海外市場に関する展望についてもお聞かせいただければと思います。経営統合の文脈を紐解きますと、マクロの経済環境としての「グローバル化の進展」がありましたね。時間軸は現実的に考えるにしても、方向性としては、海外でのさらなる発展は所与の命題だと思います。海外市場に関しては、どのような視点をお持ちでしょうか。

浅野海外市場への拡大は、おっしゃる通り、避けては通れない道です。現在、海外での売上高は全体の1割程度ですが、これは今後徐々に上げて行きます。実際、アジアでは、現状でもかなりのプレゼンスになっているのですよ。例えば、タイのチルド(冷蔵)牛乳市場では、既に5割は明治ブランドです。

古森 タイ全土の、ですか?

浅野そうです。タイ全土のチルド牛乳の約半分は明治ブランドです。タイにもコールドチェーン(低温物流)が整い始めましたので、今後さらにチルドの市場は伸びていきます。

古森 現状でも非常に大きなプレゼンスですし、市場全体が広がるとなれば、将来に期待が持てますね。

浅野シンガポールでも、チルド牛乳の4割弱は明治ブランドですよ。菓子も全東南アジアに出ていますし、世界で見れば50カ国の店頭に並んでいます。

古森 そんなに広がっているのですね。今後の海外展開を支えていく上での、大きな課題はどのあたりにありますか。

浅野一つは、お客さまとのコミュニケーションが、日本国内のようなかたちでは成り立ちにくいということです。

古森 コミュニケーションが、成り立ちにくい・・・。

浅野現時点では主に東南アジアでの経験に基づいてお話ししていますが、なかなか、お客さまから商品に関するフィードバックをいただけない国が多いと感じています。味がおいしくないとか、甘さが合っていないとか、そのほか土地柄に合わない部分があるとか。そうしたご不満があっても、多くのお客さまは黙っていらっしゃるのです。そして、二度とその商品はお買い上げにならない。むしろ、ご不満をお聞かせいただく方が、改善の余地がクリアになって前に進みやすいです。

古森 なるほど、それは確かに難しいですね。カルチャーによるところも多分にあるでしょうが、声をお聴きすることができないとなると、「勘の冴え」の境地にも到達しにくいでしょうね。かといって、いきなり「何でもお話しください」というようなアプローチをしてしまうと、それはそれで、日本とは違ったかたちのいろいろな難題が出てくる可能性もありますしね。難しいバランスですね。

浅野日本と同じやり方を、そのまま持って行くことはできないですね。「meiji way」に綴ったような基本の部分は維持しつつ、その国ごとの現実に向き合って仕事をする必要があります。ですから、海外展開を考える上では、「日本から赴任した人材がいかに現地化できるか」というのが、当面は大きなテーマになります。もちろん、現地人材の育成や活用も進めて行きます。

古森 日本で培ったものを体現しつつ、現地のさまざまな事情・特性にあわせて組織を育て、その市場のお客さまに向き合っていくことができる人材・・・ですね。

浅野一方で、間違ってはいけないのは、「日本で培ったものを体現しつつ」という部分は、依然として非常に大事だということです。そこをなくして現地の事情に合わせるだけだと、明治の仕事ではなくなってしまいます。英語などの言語の問題にも、それは言えます。外国語ができるから海外に行くのではなく、仕事ができる人が海外に行く。それが基本です。

古森 目指すべき姿は、「日本語でしっかりと仕事をできる人が、外国語でもしっかりと仕事ができるようになる」ということですね。

浅野それから、やはり人間というものが理解できる人でなければ駄目ですね。いろいろ事情は違っていても、根底では、人間は皆共通する部分がありますからね。お客さまに向き合うにせよ、社内の組織と向き合うにせよ、人間というものを理解できる人でなければ現地化を進めることは難しいと思います。

古森 おっしゃる通りだと思います。人類20万年、いろいろな違いを生みながら世界中に散らばっていますけれども、好き・嫌い、損・得、安心・不安などの根本的な感情はそんなに変わっていませんからね。そういう部分で人間を理解できる人は、世界中どこに行っても現地化が速いと思います。

浅野逆に、海外を語る以前に、日本における仕事の中でも変えなければならない部分もありますよ。

古森 要は、仕事の本質の部分でまだ足りない部分もあると・・・。何でしょうか。

浅野日本的なカルチャーの悪いところは、物事を曖昧にしてしまうところですね。難しい課題に向き合ったときに、結論を出さないで置いておく傾向がありますね。特に、人に対する場面でそういう傾向が出がちです。これは、変えないとだめです。日本国内の仕事においても、そう思います。

古森 「配慮」と「遠慮」の違い・・・でしょうかね。「配慮」というのは、難しいことを認識して、気を遣いながら、しかしやるべきことはやるということです。一方、「遠慮」というのは、難しいことに気後れして、結局やるべきことをやらないことです。この両者は、気を遣う部分の感覚は同じでも、結果の行動は180度違いますからね。

浅野 まさにそれです。厳しいことでも、言うべき場面では、にこにこ笑って「だめ」と言えばいいのですよ。日本人が得意とする気遣いはしつつも、結論はきちんと出す。そして、言うべきことはきちんと言う。これは、国内外を問わず、これから訓練をしていかなければならない部分だと思っています。

古森 でも、これからの海外展開にはロマンがありますね。しっかりとした企業のDNAをお持ちなのですから、チャレンジして乗り越えていけば、世界中のお客さまに愛される企業になれるはずです。「日本で培った良さを活かしつつ、いかにして海外で受け入れられていくか」というのは、多くの日本企業が直面している課題でもあります。御社の取り組みが、その成功例の一つとなることを心から祈念しております。

浅野ありがとうございます。当社が得意なチョコレートやヨーグルトなどはもともと海外の文化です。私たちが日本で育ててきたものを、今後は海外の皆さまに喜んでもらいたいと願っています。

古森 そろそろ、お時間になりました。本日は、本当に貴重なお話を聞かせて下さり、有難うございました。