C-Suite Talk Live 第61回 ヤフー株式会社 執行役員 本間 浩輔さん (2/4) | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第61回 ヤフー株式会社 執行役員 本間 浩輔さん (2/4)

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第61回(2/4)

ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 本間 浩輔さん
Calendar2014/07/22

美瑛が舞台の人材開発

西田 今人事の世界で話題になっている「地域課題解決プロジェクト」*ですが、御社のバリューの中にもこの「課題解決」というのがありますね。その関係性も含め、そもそもこのプロジェクトが生まれた背景と、実際どのように運営されているのかというところをお聞かせいただけますか。

* 「地域課題解決プロジェクト」 国内の複数企業が参加してチームを組み地域に入り込んで、地域課題を発見し、解決策を提案する異業種コラボレーション研修。主催者はヤフーで北海道の美瑛町がその舞台となっている。
本間 ヤフーのミッションが「情報技術で人々や社会の課題を解決する課題解決エンジン」というのは、検索サイトからスタートしているので当たり前な話ですが、「課題解決」ってすべての仕事の基本かなと思ってもいるわけですね。ところが僕らはどうしても机上で語りたくなる。売る瞬間のお客様の笑顔を知らないでやっているので、どうしても全て数値とエクセルで仕事が終わってしまうところがあります。そういう会社で課題解決をする人をどうやって育てるのかというと、それをリアルにやるのが一番良いだろうという話になりました。

西田 人と人とを触れ合わせるということですね。

本間 色々な方法を考えたのですが、結局、日本って課題先進国だということです。高齢化にしても医療にしても原発にしてもいっぱい課題がありますね。

西田 山積みです。

本間 今年の春にハーバードから18人もの研究者が日本に押し寄せました。前回このハーバードの人間が来たのは、ほぼ20年前のJapan as No.1の時なのですが、どうして20年も経った今頃来たのかというと、どうも日本は世界一課題の多い国だから、住民がどう関わっていくのか知りたいということで来たそうです。

西田 要所を横思考で学びにきているのですね。

本間 更に、ラリー・サマーズなんかは2年前の3.11の震災をうけたスピーチで、「残念ながら日本は貧しい国になる」という名言を吐くのですけれども、それらが全て繋がっていますよね。課題先進国であるからには、そういう課題と教育ニーズみたいなものを上手くマッチングさせて、リアルに解かせるっていうのは、社員にとって良い学びの機会になるだろうと思いました。

西田 その舞台が美瑛町だったわけですね。でもなぜ美瑛町だったのでしょう?僕は同じ北海道の十勝出身なので、十勝でやってほしかったなぁ(笑)

本間 別件で僕が美瑛町に行った時にびっくりしたのは、町役場の職員が200人ぐらいしかいないことです。でも、広さは東京23区と同じくらい。そうすると、毎日色々な事件が起きて、どこそこの奥さんが行方不明になった、明日マラソン大会があるけれども平均気温が25度を超えそうなので暑さ対策はどうするのかなど、それを200人の職員が総出で一個一個解決していく。これは東京都のように分割化されてヒエラルキーがあったら有り得ないことですが、30歳そこそこの町の職員が国と交渉して住民と話をして、人が足りなければ道路拡幅工事まで行ってしまう。この課題解決度というか、企画度というのは、うちでエクセルをいじって企画をやっている社員よりも遥かに高いなと思いました。

西田 地方への関与というと、一般的には地方だけではどうしても客観的な視点や知見が足りないので、外部の視点、企業経営の観点から助けてあげようということだと思うのですが、逆なのですね。

本間 逆ですね。都会から行って人が解くのでもなく、現場から行って人が解くのでもなく、一緒になって創るというのは、極めて生産的だなと思ったわけです。どうダイバーシティを進めていくかというような議論をした時に、ヤフーの人だけが行ってもダメだし、美瑛の人だけが行ってもダメだし、ここはまさにダイバーシティの中で問題を解くという経験が極めて有効だろうと考えました。

西田 ゆえに、ヤフー単独ではなく、複数企業だったのですね。

本間 複数企業が集まって、住民も集まって、地域に行って問題解決をするのです。ゴールはシンプルで、町長が「うん」と言う企画を作ること。別にアカデミックに正しくなくても、良いアイデアでなくても、町長が「素晴らしい、明日からそれをやる」と言う、そういう課題を発見して解決してくださいと。

西田 本間さんが美瑛町に行ったことがきっかけで、このプログラムが生まれたのですか?

本間 簡単に言えばそうですね。ヤフーの研修拠点を美瑛に作るという話があって関係性があったので上手く運べたというのはありますね。美瑛町側も大変で、住民を10人アサインしろとか、インタビューさせろとか、僕らは滅茶苦茶な事をお願いするわけです。他の地域じゃ多分できないです。美瑛町だからできたのだと思います。

西田 参加企業はどのように集めたのですか?

本間 関係があるところに声を掛けたのですが、募集当初はこんな荒唐無稽な研修に乗り出してくれる企業はありませんでした。でも今言ったようなことを熱く語ってお声掛けしました。そんな時、プログラムの監修をお願いした中原淳(東京大学准教授)先生の存在や、ヤフーにいる池田という研修を創り上げることにおいては国内有数の社員の頑張りが大きかったですね。

西田 ベンダーに発注することなく自らの手で作り上げて行ったのですね。

本間 この手の研修をベンダーに発注すると、ろくなことが無いとみんなどこかで思っているのかもしれません…。

西田 ユニークな研修ベンダーもたくさんいますので、コンサルタントと同じで使い方次第のところはあると思いますけどね。

本間 良く言われるのは、優れた研修担当者は研修に参加者の一人として参加します。で、次に優秀な担当者はベンダーを決めて後ろでずっと見ています。三番目の人は最初と最後だけ出てきます、と。一番ダメな人は見にも行かないということが起こっているように思います。発注側のレベルが低いと、ベンダーは、最後のアンケートの時に「また受けたい」と記入させるために、その場限りの良いことばっかり言いますよね。星占いみたいなことをさせたり、あなたは何とか型です、とやったり、映画かなんかを見せて感想を述べ合ったり、そのようなものばかりじゃないですか。そんなことをやっていると日本の人材育成のレベルはいつまでたっても上がらない。だったら僕らが作ればいいのですよ。ベンダーを入れないで。

西田 自分たちで作ってみることでわかることもありますものね。

本間 僕らも研修が作れるというレベルまで昇華したところで、ベンダーとパートナーを組めば、もっと良い人材育成のプログラムが出来るのに、丸投げしているうちはダメですね。

ダイバーシティをリアルに体感する

西田 この「地域課題解決プロジェクト」には、アサヒビール、インテリジェンス、電通北海道、日本郵便の各社が参加されていますね。その具体的な中身ですが・・・。

本間 この研修は面白いですよ。セッション5まであり、毎回リードを取る企業が変わるわけです。セッション1は僕らがやって、セッション2はインテリジェンスですが、インテリジェンスはセッション1を完璧に見ておかないとできないし、セッション2はお任せしますといって、その中の細かいところをどうするかは自分達で判断しないといけないから、インテリジェンスは必死です。セッション3は日本郵便が担当しますけれども、日本郵便もどうぞって渡されるので、セッション1から何が起こるのか気を抜けないし、中原先生の監修の下でセッション1自体も本当に一夜にして翌日のプログラムをがらがら変えていきながら、作っていくわけですよね。僕らも真剣勝負だし。

西田 その繋いでいくというところが、一つのポイントなのかもしれないですね。

本間 それは当初僕らが意識したことではなくて、中原先生がそうした方がいいよと言ってくれてそうしたのです。プランド・ハップンスタンス(計画された偶然)が大前提なのですよね。50%ぐらいは決めておいて、残りの50%は受講者の顔を見ながら本当に研修を何のためにやっているんだというところに立ち返りながら臨機応変に変えていく。それって普段はできないわけじゃないですか。

西田 できないですね。実際セッション1は本間さんがリードされてどうでしたか?

本間 一番面白かったのは、初日にまずカレーを作らせることです。

西田 カレーを。地元の食材を使って?

本間 はい。君たちのミッションは、ここに材料を用意したので制限時間内に何か作ってくださいとやるわけです。一応はカレーを想定しているけれど。2時間経ったらもう次のセッションに移るので、1分たりとも時間を伸ばさないでくれよ、よーいどんとやるわけです。2時間経ったところで、チームプレイはどれぐらい上手く機能していましたか、とチームごとに振り返りをします。そうすると、私は上手くリーダーシップが取れたわという人や、もっとこうすれば良かったとか、他の5人が上手く働いていたのでなんか知らないけど自分で仕事を作っちゃったとか、そういう振り返りがガンガン挙がってくるわけですよね。振り返りをしたところで、僕らはこれから半年先に向けて、チームが良いパフォーマンスを出すためのチームってこれでいいのか、どうするのか、というのを問うていくわけです。こんなの一般的な企業ではやらないですよね。

西田 料理教室を企業研修に応用するというのはあって、料理を通じて仕事における我が身を振り返えらせるというのはやったことはありますが、美瑛町に入り込んで、ここまで徹底するというのは、初めてですね。

本間 これが複数チームで、美瑛の人も、男性も女性も入るようにするし、各チームにはフィールドワーカーという各社の人事が一人ずつ入ります。フィールドワーカーはこの中身をずっと観察して、何が起こるかというのを本部に返す。そうするとこのチームの彼は気を付けた方が良いねとか、こんな事件が起きたけどどうしようというのは、フィールドワーカーが挙げながら、よしじゃあ翌日はこうしようとか、彼にはこういう声掛けをしようとか、ここは待とう、とかやりながら、臨機応変に変えていくのです。

西田 フィールドワーカーはプログラムがより効果的、かつ、スムーズに運営される責務を負うのですね。

本間 そうです。ダメと思ったらプログラムを急遽変更したりします。チームの中に美瑛町の人も入っているからこそできる業なのですけど。

西田 そのリアル感がいいですね。

本間 ロジカルシンキングですと言って、フレームワークをやったところで、本当にそれが課題解決に繋がるかと言うと怪しい、それを知っているわけだから。その意味では、さっきのカレーじゃないけど、問題を解決する時にどういうチームが機能して、どんな気持ちで振り返りをして、住民も入れて最後GOに向かってどういうリサーチを組み立てていくのかというのは、まさに腕の見せ所じゃないですか。

西田 確かにそうですね。

本間 それに住民も入ってくる。確かに住民のレベルはある意味低いし、ある意味高い。それも一緒にじゃあそこからどういう風にやっていくかという活動自体が、企業にとっては物凄く良い研修だし、地域にとっても良いと思うのです。

西田 必ずしも同レベルの方々と一緒に仕事をするわけでもないですものね。色々な凸凹の中で、不確実な中で仕事をしているわけですからね。

本間 イノベーションってそうじゃないですか。そういう異なる個が交じった経験を積んだからこそ生み出せるみたいな。

西田 このプログラムを拝見して、正直に言って凄く羨ましいと思ったのは、実は僕がやりたかったプログラムそのものなのですよ。コンサルティング会社に属する立場でもあるので、ここまで一足飛びではいけなかったのですが、私塾を作って、過去4回くらい修学旅行と称して地方を訪問してきました。このような地元との中長期に亘る本格的な交流は理想ですよね。美瑛町にとっては課題が浮き彫りになり、その解決になるヒントを得られるし、本間さんのところはリアルな場での人材開発が出来、みんながハッピーになります。

本間 でもいろんな事件がありますよ。やっぱり初日は盛り上がるでしょ。じゃあ1か月後に集まるまでに毎晩スカイプで話し合おうとか言っているわけですよ。でも会社に帰ってくればみんな仕事がわんさか降ってくるし。

西田 いったん火が付いた状況をいかに持続させるかというのは研修の一つの難しさだと思いますが、まさにそこのところのコントロールのお話ですね。

本間 細かい仕掛けはたくさん作っています。例えば、毎回プレゼンテーションで始めるとか。前日に集まってもできないぞ、とするために。毎回各社の社長が来るので、お前は抜けても良いけど、いない時に社長が審査員で来るけどいい?ということもあります。そういうのがいっぱい入っています。

西田 それは恐いですね(笑)

本間 一方で、6チームのうちの2チームぐらいは空中分解して、最後の日に代表者が出てきて、ごめんなさい僕らできませんでした、でも良いかなと思っているのです。そういう経験がないから、今の若い人達は。それを2年、3年後に振り返って、あの時俺は逃げたけど、もっとこうすべきだったなとか、そういう経験をさせてあげないと。頭はいいのだけど、ダイバーシティのチームを上手く率いて、みんなを巻き込んで物事を上手く進めるということができないですから。

西田 参加者は各社の次世代幹部候補ということでしょうか?

本間 そうですね。幹部候補は案外弱い部分もあります。5人の中で1人だけアクの強い人がいたりすると、あの人変だよねと周囲には言っても、直接本人には言えないとかね。企業ではこのケースは無いじゃないですか。上長が出て来るし、同じ人事評価の中で動いているから。でもそれじゃ組織なんか束ねられないですよ。評価されているからとか、上長が見ているからとかでは。で、そういう極めてダイナミックな経験を若い時にさせて、己を獲得してくださいと。

西田 その対応の仕方を身に着けないと本当のダイバーシティって体現できないですよね。

本間 特定割合の女性を入れることだけがダイバーシティと思っている人がたくさんいるけど、そうじゃなく。お前が一番嫌いなあいつがチームに入ってくるとボロボロにされるから絶対入れるな、という奴と如何に上手くやっていくかというのがダイバーシティなのだと思います。

西田 そこですね。

本間 2泊3日の研修で、ダイバーシティコースで何かをやっても、それでダイバーシティを理解して実現できるわけがない。そういうところに問題意識を持ってやっています。

西田 僕も実は人事経験がなくてこんなことをやっているのですが、人事経験があるから人事本部長になると成功するというのではなくて、むしろ別の経験をされた新しい視点を持った方こそ、これまでの人事を変えていけるのではないかと思っています。そういった意味で本間さんがやっていらっしゃることは、人事の世界に一石を投じることなのではないかなと思います。

本間そうですね。まあ一石を投じたのかどうかは良く分からないですけれども。最近色々なところで話をすると、僕らが思っていることに対して、本間さんそれすごいねと言って下さる人は多いですよね。その分リスキーなのかもしれないけど。