C-Suite Talk Live 第63回 エステー株式会社 ホームケア事業本部 本部長 鹿毛 康司さん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第63回 エステー株式会社 ホームケア事業本部 本部長 鹿毛 康司さん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第63回(2/4)

第63回 エステー株式会社 ホームケア事業本部 本部長 兼 エグゼクティブ・クリエイティブディレクター 執行役 鹿毛 康司さん
Calendar2015/06/22

制度や規制を作りすぎると人間は考えなくなる

鴨居全ての広告会社、あるいは周りの方たちがシリーズCMに対して異議を唱えるというのは、そのときの常識というか、既成の枠組みに縛られた感性なのかも知れませんね。2月に、我々がお客様をお呼びしてセミナーを実施した際、LIXILの副社長の八木さんと、ウォルトディズニーの人事責任者の落合さんとのパネルディスカッションでも同じような意見をいただきました。

鹿毛興味深いですね。

鴨居 LIXILとディズニーはバックグラウンドはずいぶん違う会社ですけれども、グローバルに事業統合を図っていくということに取り組まれています。そうすると、ひとつの仕組みを考えるのにも統合した制度を作り、それを定着させていくってやり方が一般的に考えられるのですが、お二人の共通の意見は、制度とかを作りすぎてしまうから、皆考えなくなってしまう、と。

鹿毛 同じですね。

鴨居 我々は、人事制度を作ることもひとつの軸にしている会社ですので、非常に貴重な経営者の声だったわけです。がちがちに制度を作りすぎちゃだめなんだと。特に、ディズニーの落合さんからは、今ディズニーで注力しているクリエイティビティとかイノベーションを人事としても考えていくときに、仕組みや制度とかプロセスとかを作りすぎないことが大事なんだとのご意見を頂きました。鹿毛さんの本の中でも、制度や規制をあんまり作ってしまうと人間は考えなくなるということを言われていたので、通じるものがあるなとお聞きしていて思いました。

鹿毛もっと言えば、制度だけが悪いわけではなく、制度を運用するときに運用する側が何も疑わずにいるってことが問題だとも思います。たとえば、先日も新入社員研修があって、私の講義の時間で感じたのですが、新人の思考がストップしてしまったのではないかと思うことがありました。新人研修で叩き込まれた用語を使って新人を演じていたんです。売上に貢献します、若い感性でがんばります、なんてね。(笑) だから、何故そう思うのかをどんどん質問していきました。売上って君達にとって何?若い感性って何?どうして大切なの?と。彼らは結局、就職活動の面談や研修で何も考えなくなっている。そうした言動をすることが社会人だと結論づけている。そこには自分の根拠も論理もなくなっている。捨てないと合格できなかったのか、研修で自分の思考を消していったのかはわかりませんが。人としての喜びを捨てないといけないと思っているんです。学生は楽しい時代で、社会人は己を捨てて企業に魂を売らなければいけないとさえ本気で思っているふしがありました。

鴨居 皆、その質問には、はたと立ち止まったでしょうね。

鹿毛そこで僕が財布を見せて、この財布が100倍売れる為のアイデアを募りました。「よく出てきたね。これ実際にこの財布屋の社長だったらやる?」と聞くとみんな黙っているんですよ。(笑) やっとひとりの新人がやらない理由を述べました。「まだ案がちゃんとしてないから」って。「なるほどね。じゃあ僕が今から案を考えるから」と、即興で具体案を白板に書き続けました。プロですから。(笑)「どうこれ?」って言ったら、皆が頷いて「素晴らしいです」って。そのときに僕は「君達さ、若い感性って言っているけど、君達55歳のおっさんに負けているよ。ということは君達のアイデアが若いだけで素晴らしいってことではないんだよね。若い感性がただ良いだけじゃない。でも若いなりに真っ白な視点で思考するってことが大切なのかもね。」って。さらにその向こうにはお客様がいて、そのお客様が喜んでくれるかどうかが重要。喜びへの御礼が我々にとっての売上だということにディスカッションは発展していきました。彼らは、そのことに気がついて嬉しそうでしたよ。だって彼らが思い込んでいる社会人は、人としての喜びを捨てることにも通じてたんですから。それを捨てなくてすんだんです。自分の生きがいと企業が求めているものが交差する瞬間でした。研修が悪いわけではないですね。ただ、多くは思考の停止になっている。なぜ皆思考停止するんですかね。思考停止させる運営がそこにあるんですかね。もったいないですよね。誰も悪気はないんですが。

鴨居 同じ様に考えてしまうという風潮はあるかもしれませんね。私は日本人論、外国人論は、あまり好きではないですが、大学の比較にこういうものがあります。日本の大学は五本の指を出したときにそこそこ均等にひっぱる学生をとるけれど、アメリカではそういう優等生ももちろん取るけれど、一本の指だけ異常にひっぱる学生もとるんだと。このアメリカ式は考え方の違いを許容する土壌になっていて、一本の指を引っ張る人というのは、オールラウンドにはできないけれど、ある特定のところに強烈な興味を持っていて、結果的にそれが強烈な個性や能力につながっているんですね。日本ではそういう視点で人選をしないので、学生だけでなく、社会人にしても、オールラウンドに平均的に育ってきた若者が、新入社員として社会人の第一歩を踏み出していることが多いのかなと。

鹿毛 御社は外資系企業ですが、日本の企業もいっぱいやられていますよね。外資系のほうがやっぱり一本の指だけ引っ張る方をとる傾向はあるんですか。

鴨居 私は日本企業にもいましたし、マーサーに入る前はIBMにいました。私の経験では、外資系の企業はやはり突出した、ちょっと変わった人に対してきちんとそれに見合った評価をするようなところはありますね。研究職や技術者には、そんなにオールラウンドじゃない人もいます。場合によってはその人は組織人じゃない、みたいな人です。一方、そういう人が特殊な能力を持っている。そういう特定の能力がきちんと会社に貢献しているとかそれによって何らかの価値をちゃんと生んでいるってことを、きちんとリスペクトするところはありますね。

鹿毛 なるほど!僕の話をすると、42歳で前職の雪印を退職して、就職活動をしました。人材紹介会社に紹介されて行った多くの会社で、僕が普通に「この金額で」って言うと、ミドルマネージャーの課長さんに「鹿毛さん。あなたよほど自分に自信がおありですね。」と言われて断られました。42歳という年齢もあったのだと思いますが、とうとう3ヶ月たったら面接の機会さえなくなったんですよ。

鴨居 それでどうされたんですか。

鹿毛結局、人事の面接ってなんだろうって思ったときに、そうだ、僕の価値を分かってくれる人は多分ミドルマネージャーじゃ無理なんだと。平均値を求めているんだと思いました。それで、社長が直接、密かに考えているような領域で社長自身が欲しいと思わないと多分無理なんだと考えました。人材紹介会社は、「そんなのないですよ」って言いながら、その後7社見つけてきてくれましたね。で、7社全部受かったんです。今まで全然受からなかったのに。(笑)

鴨居 見ている視点が違ったということですね。

鹿毛 さっきの5本指のお話の通りで、社長が見ると、同じ自分なのに見る観点が違っているわけです。

鴨居 それまでは平均値を見られていたということですね。

鹿毛 はい。そしてそれは見る方が怖いんじゃないかと思うのです。

鴨居 そういうのはあるかもしれませんね。形を破るとか常識から外れるってことが、やっちゃいけないっていう風に比較的育ってきている傾向が我々の中にもあるかもしれません。

鹿毛 ですので、人事という要の部門は、本当にしっかりしていないとだめなんだと思います。偉そうですみません。(笑)

鴨居今、その人事部そのものの改革、つまり人事改革じゃなくて人事部の改革に取り組まれている企業さんが多くあります。人事部門の役員に人事とは関係のない業務をされてきた役員、たとえば営業や開発部門の責任者だった役員の方を指名するなど、見方を変えた改革を進めている企業もあります。そういう役員の方たちは日頃、人事の課題をビジネスの側面で感じておられたような方たちなんですね。「その経験をもとに、人事を変えてみてください」という命を受け、取り組まれている。時代の変化の必要に迫られてということだとは思うんですけど。人事における考え方を変えていくというのはすごく大事なことだと思いますね。

鹿毛 素晴らしい動きですね。