C-Suite Talk Live 第65 株式会社堀場製作所 理事 野崎 治子さん 松尾 孝治さん

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第65回 株式会社堀場製作所 理事 野崎 治子さん グローバル人事部長 松尾 孝治さん
Calendar2015/09/08

お互いのリスペクトから始まるグローバル経営

鴨居次にグローバル経営についても少しお話をお聞かせいただきたいのですが、御社では製品群も非常に多岐に渡り、マーケットも全世界が対象になっていらっしゃることもあって地域軸と事業軸とのマトリックス経営をされていらっしゃいますよね。最適なところに最適な人を派遣する人財登用や、その基盤となる人財育成も国籍にこだわらないモデルを志向されているのだろうと思いますが、地域軸と事業軸の中での最適な人財配置というところで、工夫されている点や仕組みとして取り組まれていることはありますか。

野崎 当社くらいの人数でこれだけ製品やマーケットが多岐に渡っていますと、マトリックスでしかやっていけないだろうというのが今の考え方です。自分のリージョンだけ見ている人であれば製品群で芽が出てこない。製品だけ見ていても他のリージョンへの展開の策は出てこない。マトリックスの構造の中では、思いもつかないところで色々なアイデアや質問が出てくるという効果が期待できます。

 
鴨居そうした連携の中、そこで働く人達の視野が広がることにつながるのですね。

野崎 はい。また、人財をどう育てるか登用するかという点についても、グローバル会議であったり、それぞれの機能軸やセグメントごとの会議であったりというところで議論が深まり、具体的な指針につながっているように思います。

松尾 例えば、あるセグメントで成果をあげた人を違うセグメントに異動させて成功体験を応用させるようなこともしておりますし、横の地域を見るという経験をさせるということもしています。セグメントだけを見て縦だけを見ていると、どうしてもそこに偏ってしまいますので。リージョンとセグメントという両方の軸を睨みながらマネジメントできる人財をいかに育成していくかというところを常に考えています。

野崎 とは言え、経験を活かすという観点でセグメントを広げるか、リージョンを広げるか。全く180度違うところにぽんっと投げ出すことはありません。

鴨居 自分の得意なところを上手くテコにしながら他のところに広げていくことがサイクルになっているわけですね。

松尾 はい、それによって違うセグメントの人や違うリージョンの人に影響を与えて、また良いシナジーが出る環境を目指しています。

鴨居 御社の中にいらっしゃる人財の多様性を生かしながら、上手くアサイメントを回していくということにもつながるのでしょうね。

松尾 ひとつのリージョン、ひとつのセグメントに多くの人を投入してオペレーションするということがかなり難しい状況ですので、一人何役もこなしながらやってもらおうという背景もあります。

野崎 事業環境も、今は自動車がいいとか、今は半導体がいいとかいうこともありますので、そのときの経営状況と合わせながらシフトしていき、その中で視野を広げる機会を得るということもあります。

鴨居 一方、海外でのM&Aも推進されながら成長をされていますし、従業員の60%近くが外国人でいらっしゃいますが、ホリバイズムと言いますか、御社のDNAの中に文化的な背景が違う人達をどうやって一つにまとめていらっしゃるのでしょうか。先ほどのお話でも色々な取り組みを紹介してくださいましたが、ホリバリアンに育てていく取り組みについて、少しお話をお聞かせいただけますか。
(注:堀場製作所では社員を「ホリバリアン」と呼んでいる)


野崎 基本は仕事の成果に対するリスペクトが大前提です。「あの人はいい人やけどなあ・・・」と言われたら終わりかもしれないですよね(笑)。「あの人はすごい技術を持っている」とか、仕事の上での良いところを見てそれに対してリスペクトがある前提での、一人ひとりとの緊密なコミュニケーションがDNAの共有の基本だろうと思います。経営トップも海外に行けば現地で必ず社員と直接対話をしていますし。顔が見えることは重要ですし、経営者の人となりに加えて、何をしているのか、どうしていきたいのかを直接訴えかけることができます。そのあたりが当社ではすごく強いのではないかと思っています。

松尾そうですね。外国人も含めて色々なグループで集まることも多くあります。トップの経営会議というのは100名くらいの規模で研修センターに集まって、終日議論をし、また毎晩宴会をすると(笑)。人と人とのコミュニケーションの量をいかに確保していくのかというところが重要だと思っていますので、M&Aで一緒になった企業の相手に対しても、「本社の指示なので」というような強権的なアプローチはせず、我々が相手をリスペクトして相手も我々をリスペクトするという状態に持っていって、きちんと交流していくというようなやり方をとっております。

鴨居一連の取り組みを伺いますと、非常にヒューマンタッチですよね。人間と人間との関係を重んじ、経営トップもなるべく多くの方と直接コミュニケーションをとられる場があるなど。それを国籍や場所を問わずにやられているわけですよね。日本的かもしれませんが、宴会を奨励したりと人と人との触れ合いの場所をなるべく作っていらっしゃるという感じがしますね。

野崎 新入社員がビアガーデンを企画することも恒例になっているのですが、イベントを企画すること自体がそうしたDNA伝播の力になると思っています。

鴨居そういうところから既にホリバリアンへの一歩が始まっているんですね。

野崎 職務経験のまったくない新入社員が全社のイベントを企画するわけで、同じ仲間であっても「え、まだやってなかったの!」とか「これ嫌がってる人がいるけれど、どうしたらいいの?」とか、それこそ彼らにとってはこれが一番最初の修羅場になるわけです(笑)。創業者が『おもしろおかしく』を社是に掲げましたのは、医学の勉強をしたことがきっかけです。人間がこの世の中に生を受ける確率というのはそもそも天文学的に低い数字で、そうやって生を受けた素晴らしい人間が、人生の一番楽しい時代、時間を過ごす会社がお金のためだけというのでは申し訳ない。当社にかかわる人全員に生まれてきてよかったと思ってもらいたいというのが原点です。新入社員の時からさまざまな場面を経験しながら、一人ひとりが達成感や自分の幸せを見つけていってほしいという、そんな考え方を持っています。

鴨居 それがヒューマンタッチな交流の場や個々のリスペクトにつながっていくということなんですね。

野崎 創業者は「天は二物を与えずというのは、みんなひとつは必ずいいところがあるということや」と常々申しておりましたから、部下それぞれのそのひとつを見出すのが管理職の仕事であり、指導者の仕事だということですね。