C-Suite Talk Live 第66回 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 ロバーツ グレンダさん | マーサージャパン

C-Suite Talk Live 第66回 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 ロバーツ グレンダさん

ライブラリ / 「経営×人・組織」視点の対談 C-Suite Talk Live / 第66回(2/4)

第66回 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科 教授 ロバーツ グレンダさん
Calendar2015/12/21

日本が目指すべきダイバーシティのあり方

ロバーツ 今は男性というジェンダーに都合がよく設計された労働環境の中での仕事に、女性がフィットイン(適応)しようとしているわけです。それは女性にかなり無理なことを強いているわけです。 男性も180度意識転換して、女性と同じように家庭の仕事もきちんとこなすようになれば別ですけれど。女性にとってもやりがいがあってちゃんとした報酬のある仕事に育児休暇後でもつけるようにしていくために、鴨居さんだったら何かアイデアありますか?(笑)

鴨居 難しい質問ですね(笑)。ダイバーシティというと指導的な立場にある女性の割合をいくつにするという議論が中心になってしまっていますが、本当に必要なのは働き方そのものを多様化し、その方の生活のパターンやモデルに応じ選択が出来るようにすることが重要と思います。
現在、経済同友会の中で人材の採用・育成・登用委員会の副委員長をやっているのですが、多くの企業において、この課題に制度面の充実や管理職および女性自身の意識改革の面で取り組みがなされています。
例えば、先ほどのお話のように一旦正社員を辞めて子育てをし、職場に戻ってきた人の意見は、ずっと仕事一本でやってきた男性と比べて、商品をデザインする、あるいは新しいサービスを設計してお客様に提供しようとした時などに異なる見方が出てくるなど、ビジネスの成長のためにも多様な背景を持つ人材を活用することが有効であることが再認識されてきていると思います。

ロバーツ 私もそうした議論をもっと各企業や政府などで深めて、具体的な仕組みを作っていく必要があると強く思っています。

鴨居先ほどお話を伺っていて印象的だったのは、男性を中心に成り立っている会社の仕組みの中に無理やり女性がフィット・インするのではなくて、男性も女性も、あるいは正社員も非正規雇用の方も、色々な働き方の選択肢がある中でやりがいのある仕事を作っていくべきという点です。

ロバーツ はい、私は日本ではぜひそういうダイバーシティを目指して欲しいと思います。また、能力のある人なら能力を認めて何歳でも昇進させてもらいたいですね。
例えば、ある会社では昇進はテストによって決まるのですが、そのテストは上司から肩をたたかれないと受けられないんですね。だいたい40歳まで待たないとその機会は来ないのです。その話を聞いたとき、そんな馬鹿なことがあるのかと思いました。もっと若い段階で、例えば会社に入ってから少なくとも5年間働いたら自分で手を挙げてやりたいと言えるほうがいいじゃないですか。年齢のヒエラルキーを崩すことになるとは思うのですが、それでも日本の社会はそういうことを認めることで活力ある環境を作れると思います。だから、「はじめの5年間は皆さん平社員として働こう」と伝え、「でもその後は自分で手を上げてチャンスをどんどん掴んでいってください」、と新入社員の方にメッセージを出したら、みなさん本当にがんばってその5年で成長すると思います。

鴨居 一定の基盤ができたら、あとはオープンで均等な機会、言い換えれば自身で切り開くキャリア開発の機会があるということですね。一方、それは先ほどおっしゃられたように年齢とか、あるいはジェンダーや国籍に関係なく能力やポテンシャルが適正に評価される環境が必要ということと連動するわけですね。そうした環境や仕組みが本来オープンになっている組織とか社会になっていくことが必要だというご指摘ですね。

ロバーツ はい、その通りです。あと資格に縛られすぎるのも問題かと思います。あなたの仕事はこの資格がないと絶対にダメという制度もあまりよくないと思います。実際にビジネスを推進する能力があればいいのではないかと思います。もちろん法律で決められているような業務に必要な資格は別ですが。

鴨居 企業の経営者も、若手への機会提供と同時に中高年の皆さんの活用の場を広げる取り組み、また国籍を問わない人材育成、ジェンダーの多様化など、現在の日本の労働人口の推移も踏まえ大胆な取り組みを進め始めています。そうした環境の中で、活躍の機会を期待されている女性の方の意識についてどう見られていますか。

ロバーツ 働くことに対する女性達の意識は彼女達が置かれている環境によって違うと思います。
たとえば子供のいる人の中でも、お母様が子育てを手伝っている、孫を見ているとか、そういうサポートされる環境が整っている人たちの意識は仕事にしっかり向いていて、男性を中心に成り立っている現在の仕組みの中でもキャリアアップへの意識を高く持っていると思います。一方、そういうご家族のサポートの手がない、あるいはお子さんをきちんと預けられる環境が充実していないという方たちは、なかなかそういう意識になれません。旦那さんが毎晩、夜遅くまで働いて、なかなかお子さんの面倒を見るサポートが出来ないような環境では、仕事と両立させるには女性、つまり母親の生活が非常にハードにならざるを得ませんし長続きしません。また、男性と同じように働くのではなく、家族を犠牲にせずに働きたい女性もいます。そうした女性も働く意欲が薄いというわけではなく、優先順位として今は子育てが大事だけれど子供が中学校とか高校に入ったら改めて仕事に取り組んでみたい、その時には仕事でステップアップを考えたいという方は多くいます。
働く女性をサポートする仕組みが充実し、さらに先ほど申し上げた再雇用の仕組みや働き方の多様化が定着すればそれに連動して女性の意識もより一層高まっていくと思っています。

鴨居 男性が育児や家庭内の仕事をサポートする、あるいは子育ての仕事の責任を男性・女性問わず分担するというような自立的な取り組みも必要になるのでしょうね。

ロバーツ それが理想ですが、どうもその様子は一般的になっていないですね。育児休暇の法律は1991年に作られましたが、当時男性がそれを取得する率は非常に低かったです。そして実は今でも引き続き、非常に低いままです。2%くらいです。私は男性がそうした休暇を取りたくないのではないと思っています。むしろ、取りたいと思う男性も増えてきているのですが、会社の中の雰囲気がどうも男性の育児休暇を特別視する傾向がまだあるのではないかと思います。

鴨居 暗黙のプレッシャーのようなものでしょうか。環境として。イクメンという男性が育児をするのが少しブームになりかけましたが、もうバズワードになりかけている感もあります。

ロバーツそうですね。実際にはあまり定着はしていません。一方日本の良いところは、政府が既に1947年から保育園の制度を制定し公立の保育所をつくっていることです。これはとても立派なことです。アメリカにはありません。アメリカは私立のところがほとんどで、質も本当にまちまちです。

鴨居なるほど、そうですか。そうした環境が整った日本だとしても先ほど先生がおっしゃっていたように、小学校卒業くらいまでは子どもを育てることに集中し、子供が中学生くらいになったらパートタイムでもフルタイムでもいいのでそれなりに責任ある仕事に戻りたいと女性が考えた時に、職場に戻れる環境が少ない点は最後に残る課題ということですね。

ロバーツ もちろん受身でもだめで、そのブランクの間に何をやったかも大事になります。自分のスキルを常に磨いているのなら、どうにかなる可能性が高くなると思いますが、10年間とかギャップがあり、子育てだけをしていた人ならスキルがさび付いているはずです。だから女性もそれを考えて、たとえば通信講座を取って継続的にスキルを維持する、新しいことを吸収するなど育児中でもできる努力は必要になります。

鴨居 PCのソフトも10年経てば、大きく変ってしまいますからね(笑)。何年か継続して女性の方たちが復職をするための支援する環境も必要ということになりますね。