パフォーマンス・マネジメント - アジアでは何が変わりつつあるのか、そして何が変わらずにあるべきか?

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パフォーマンス・マネジメントの進化と、この伝統的な管理手法の効果に関する議論は世界的に続いている。近年、ゼネラル・エレクトリック、アクセンチュア、デロイトといった牽引役が年度毎の人事評価を廃止すると宣言して以来、多くの会社が現在のパフォーマンス・マネジメントの原理がどれほどの効果を持つかを再検討してきた。毎年の人事評価とパフォーマンス・マネジメントは同義語であるという神話は、これまでになく崩壊に近づいている。

ここで、アジアにおいてこれらの進展がどのように辿られているかを見てみよう。経済活動の停滞や特定の政治的出来事により経済的な不安定感 が増幅する中、この地域や世界の他の地域の企業は新たな成長基盤を探すのに必死だ。この成長を促進するためには潜在能力の高いハイ・パフォーマーを採用し、彼らのモチベーションを高め、長期的に雇用することが非常に大切である。これに伴い人事リーダーが問うべき質問は『評価すべきか、せざるべきか?』から『報酬と評価を結び付けるべきか?』そして『我々がパフォーマンス・マネジメント制度により達成しようとしていることは何か?』へと変遷する必要があった。

マーサーが最近53カ国の1000社以上の企業に対して行った調査1は、多くの企業が未だ『年度始めの目標設定』と『年度末の人事評価』を行っており、つまりは評価に基づいたボーナスの決定に繋がっているということを明らかにした。これはパフォーマンス・マネジメント・プロセスにおいて近年よく見られるようになってきた変化に一見矛盾するように思われる。またこの調査は、95%の経営陣と従業員が現在の評価制度に対して不満を抱いているということも明らかにした。この課題を取り巻く議論が収束を見せていないことを語っている。

我々のアジアにおけるクライアントとの活動を通して、実際にはこれらの企業が世界的なトレンドをよく観察していること、また評価制度をどのようにしてより有意義なものにできるか模索しているということが見えてきた。更に、幾つかの先進的なアジアの企業は年間を通じた継続的なフィードバックを行うことに、そしてまた他方ではこの成績評価に加えてポテンシャル(将来における可能性)の評価に重点を置くようになっている。

パフォーマンス・マネジメント・アプローチを構築するためのステップ
パフォーマンス・マネジメントは5つの主要な要素を取り込んだものでなければならない

アジアの人事リーダーが認識しておかなければならないその他の興味深い文化的なニュアンスとして、この地域の被雇用者の多くは西欧の被雇用者とは異なり実は成績評価を期待し、そしてそれを好ましく思っているということが挙げられる。
アジアの被雇用者の多くは学生時代を強い競争に晒されて育っており、仕事場においても成績評価を受けることを当たり前で必要なこととして考えている。アジアの人事リーダー達は革新的な変革を起こさない傾向にある反面、評価制度によってもたらされた成功例を数多く持つ地域と言える。

パフォーマンス・マネジメントの目的、またこれが何をもたらすべきかを明確にすることはよい出発点となるであろう。そしてこれは事業戦略の向かう方向と、現在のマクロ経済という枠組みの中で事業がどのような進化を遂げているかを反映するものでなければならない。例えば、もし組織が事業規模の成長から事業の収益性へとその焦点を移行させているのだとしたら、原価を無視した個別のセールス目標は、事業に対する価値の貢献を測るのには適していないかもしれない。

これらの要素はしばしばお互いに相対するものであるかもしれない。ハイ・パフォーマーのモチベーションを高め、限られた額の報酬を公平に分配し、なおかつアンダー・パフォーマーもチェックするといったことだ。アジアにおいてその目的は組織のオーナーシップの本質によって左右される。これは組織が国営か、公営か、それとも四半期の売り上げ成長よりも長期的な価値観を重視する特定の一家が所有するアジアの巨大コングロマリットの一部であるかによって大きく変わってくるためである。

人事リーダーはまず、役員レベルで株主とパフォーマンス・マネジメントが持つ本来の目的がどうあるべきかについて同意を得る必要がある。ひとたび長期的な理念が合意を得れば、人事リーダーは成果、特に組織全体の業績と全階層、全ファンクションの個人の行動がどのようにリンクさせるか検討することができるようになる。

その目的に沿った、業績管理制度のデザインあるいは再定義の次のステップは従業員を核とした多くの労力を必要とする長い道のりである。これはアジアにおいて最も困難な過程かもしれない。パフォーマンス向上に向けて、従業員のフォーカス・グループ・セッションを行う場合でも、良くて、バラツキのある意見が得られる、という結果であろう。というのも西欧の従業員と異なり、アジアの多くの従業員は意見を率直にもしくは声高に語らないからである。よって重要なガイダンスとして、コラボレーションを促進し、また(特に同僚と部下からの)フィードバックを助長する設計が求められるということが挙げられる。制度の透明性と信用性は、複数のコミュニケーション・チャンネルを構築することにより時間の経過とともに達成することができる。このプロセスを支えるテクノロジーは直感的に使え、機動性が高く、経営陣と従業員の双方に質の高いユーザー・エクスペリエンスを届けることができるものでなければならない。

この地域以外の世界各地同様、我々は未だパフォーマンス・マネジメントを迅速にかつ容易に『解決』できる理想策を見出してはいない。アジアやその他の経済発展を見せる地域の企業はパフォーマンス・マネージメントに対して抜本的で広範な改革を行うことに躊躇してきたように思われる。しかし、これはむしろポジティブな側面として捉えることができるかもしれない。アジアの人事リーダー達が、社会的また文化的な背景を考慮しながら、従業員の変革のために、最新のベストプラクティスを活用できることを意味するからだ。一度、事業目的と個人のモチベーションが連結され根本的な理念が確立されれば、パワフルなパフォーマンス・マネジメントは戦略的人事管理を望まれるべき方向へと導いて行くはずである。


1) Mercer's 2016 Global Performance Management Survey

Jackson Kam
by Jackson Kam

Career Practice Leader, Talent Strategy Jackson has more than 20 years of experience in strategy and HR consulting. He acts as senior advisor to more than 50 leading companies in more than 10 countries, covering both strategy development and hands-on implementation.

Regional Practice Leader at Mercer